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「ドキドキする……」
「え?」
「葵の隣で寝てるとドキドキする……」
何言ってんだこいつ?
「葵の前だと抑制効かなくてごめん……、つい無茶したくなるんだ……」
どんな顔して言ってるのかと、少し距離を取るように横を向くと、意外にも真面目な顔した静月の瞳と目が合った。
整った容姿は、黙ったまま何もしなければ間違いなく崇高な王子なのに……と、ぼんやり思う。
「何がいいんだか……」
「それは、葵の匂い……、葵の滑らかな肌の感触、エロい身体の動き……、喘ぎ声……」
耳元で息を吹きかけながら囁くな!
「もう、やめい!聞きたくねーわ!」
「葵のすべてが俺を惹きつける」
「戯言は寝て言え」
「しー、黙らないと完全攻略しちゃうよ?俺たちの身体の相性が良いのは承知してるくせに、だいたい葵は女の子と朝まで数えきれないほどやんないでしょ?俺との時みたいにさ……」
ぐぐぐ……、まあその……、欲を解放したらスッキリして帰りたくなるので……、うわ……嫌な奴だな俺……。
確かに朝までとか無いよなぁ……。
「だから俺好みの身体に染まってくれて嬉しいよ、今じゃイキっぱ覚えて俺が制御しないと止まらないくせに」
顔に火がついて、『それは、お前がキメセクするからだろ!』って言いかけたら、唇を奪われた。
それは強引に口を割って中へ舌を侵入させてくる。
歯を食いしばってそれを阻止しようとしたら、腰に手が回わり身体ごと引き寄せられて思わず声が出た途端、舌が絡みついて来た。
んぐぅ……、いきなりキスが深い……。
こうなると俺の負けで、静月の舌は口内を縦横無尽に弄り尽くし、俺の理性を削り取り始める……。
貪るようなキスに唇から涎が零れたが、それを静月が舌先で舐め取った。
酷くエロティックだ……。
「葵、俺とえち友になろうよ」
「……ざけんな」
エッチ友……、確かに誰よりも感じる……、静月とのえっちを経験したら他の人と満足できるのだろうかと不安があるのは否めないし、過ごした夜の事を考えただけで身体の芯が熱くなる……。
そして、これ以上身体を重ねると快楽に溺れそうで怖かった……。
他にも不安要素はあって……。
「静月、どうせお前あの動画まだ持ってるだろう……」
この策略家がアッサリあの動画を消したのにはわけがありそうだった。
だとしたら拒否すれば強請られそうだったし。
「分かってた?」
「おま……!」
悪びれず静月はニコリと笑った。
ほらね……?
欲しいものは何が何でも手に入れる、この階級の男たちはそういう育ち方をした奴が多い。
「あの動画をネタに強請るつもりはないよ、それはね葵が断らないだろうという確信があるからね」
俺らは寝転がりながら、お互いを探るように見つめ合っていた。
静月の手が伸びてきて、俺の頬を撫でた。
男だとしてもこんな綺麗な顔で見つめられたら、胸がざわつくのは俺だけじゃ無い筈だ……。
まるで俺が特別だとでも言うような仕草は、嘘だと分かっていても惹きつけるのには十分だろう……。
「どっちにしろ捌け口は必要でしょ?だったら最高の相手が目の前にいるんだから拒否する理由はないでしょ?」
そうなのだ……、モラルとかプライドとか捨ててしまいたい程に静月とのエッチは天国に行ける……。
揺れる心を見透かしたように、静月は俺の唇を優しく食んで舌先で舐める。
「考えといて……」
真っすぐな瞳で見るものだから、居心地が悪くなった俺は顔を背けて目を閉じた。
男と……まして静月とえち友とか……、今までの俺だったら即答で断っていたが、快楽の深さを知ってしまった今では好奇心が勝り始めていた。
あんなエッチが他の女子とできるかと言うと……、できないだろうな……。
その時、静月が指を絡めてきた。
目を開けるのが癪で、閉じたままその温もりを感じた。
不特定多数の相手をしてたら病気が怖いし、静月の言うように俺らのエッチは最高で、このまま欲に溺れたくなる……、そんな事を考えていたら何時しか眠りに落ちていた。
そして、次に目が覚めた時には静月の姿は無く、メモがベッド脇に置かれていた。
そこには『急用ができたので出掛けるけど、葵が起きたら家へ送らせるように運転手に伝えてある』と、書かれていた。
何だよ、起こしてくれたらいいのにと思ったが、時計を見て時刻が9時を回りそうだったので、とりま慌てて帰ることにした。
勿論、静月家の運転手さんには丁寧に断り、最寄りの駅に足早に向かう。
はぁ……。
星が瞬く遠い空を見上げながらため息が出た……。
それにしてもあいつどこへ行ったんだ?
もしかして俺がエッチを拒んだから誰か他の奴と?
そうなのかな……?
相手はやっぱ瑛斗なのかな?
いやいや、他にもいっぱいいそうだし……、まあ、いいけど……、静月が何をしようが俺には関係ない話だ……。
だけど、群青色の空の下、ため息が再び零れた……。
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