72 / 213

72

次の日、静月は何事も無かったように隣に座っていて、まあ昨日は何も無かったわけだけど……何も……。 普通に授業を受けていた……。 あれからの事は何も聞かれなかったし、俺も問いもしなかった。 どこに行ったのかは気にならなくも無いが、触らぬ神に祟りなしってことで特に会話も無く、休み時間になれば将生やあずみと話をしたりして、いつものようにうだうだ過ごした。 まあ、見事な無関心ぷりは返って清々しいほどで、俺を寄せ付けまいとしてるかのようだった。 いいさ、そっちがその気なら俺は別にお前なんかに関心はねーんだし、と思ったけど、補習が終わるまでは嫌でも付き合わないといけないかと思うと、やっぱ気分が沈んだ。 さっさと終わらせたいものだ……。 午後になって、昼食を済ませば眠気を催すのは常で、俺は保健室へと向かった。 「たのも~」 と、勢いよく保健室のドアを開けたら……。 ベッドに座っていた瑛斗と立ったままの長瀬がキスをしていた。 うぉい!!! 二人はゆっくり唇を離すと、同時に俺の方を見た。 ちっとも悪びれた風もない二人は、寧ろあたふた驚いている俺を見て可笑しそうに笑ってる。 「あ~あ、見られちゃったよ」 瑛斗が笑いながら肩を竦めた。 「こら、ノックをして入って来るだろ普通、良かったよキスだけで」 この教師も、全くもってふざけている。 しかし……、なんで瑛斗と長瀬が……? そういう関係だったの? どーゆー事だよ……。 「お、お前らなぁ……ここで盛ってんじゃねーよ」 幾ばくかの、動揺を押し殺しつつ俺は抗議した。 「勉強だし、性教育の」 瑛斗がツンと澄まして言い放つ。 ぶっはーーーっ、さっき飲んだコーヒーが胃から逆流しそうだわ。 「ふざけんな、ここは寝る所だっつの!」 俺は怒りながら、何時ものように二つあるベッドの、空いてる方へ直行するとそのままダイブした。 あー、これこれ、怠い午後は寝るに限る。 「だよね?だから僕たちイチャイチャしてるんだけど?」 そう言いながら、瑛斗は甘えるように長瀬の首に腕を回した。 お前ら……。 ……て、こいつ等どういう関係だ? 瑛斗、お前には静月がいるだろ! このビッチめ! 「他所でしろや!」 「えー、保健室でヤルから余計に燃えるじゃん」 「あほか……」 瑛斗って意外とアホだなと思いつつ、俺はこいつ等に背中を向けて布団を掛け、寝る振りをした。 ここは休む所だろが、どっか行けよ。 「こらー!勝手に寝るんじゃない!」 「いいじゃん、観客増えて燃えるよ、続きやろうよ先生」 ……え? 「それもそうだな」 おい? そう言うと、再びキスが始まったのかチュ……、クチュ……と、怪しげな水音がしてきた。 ……。 そして瑛斗のものと思われる、甘い息が漏れ始める。 「ん……あ……ふっ……ぁん……」 なので俺の目がギンギンに冴える。 背後でそういう声出すのはやめろよ……。 「…はぁ……、せ……んせ……」 ベッドのきしむ音は、二人が横になったのだろう。 服を脱がすような布が擦れる音がする。 まじか!

ともだちにシェアしよう!