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あの冷静な静月も頬を少し染めて、俺を見下していた。
やがて、頭の横に方手をついて、もう片方の手で俺の顔に飛んだ精液を拭い取った。
「ねぇ、舐めて……」
そう言って、精液のついた指を俺の口元に持ってくる。
なぜか俺は素直に口を開いてそれを口に含み、静月の精液がついた指をしゃぶった……、それは少し苦いがとても甘美で……、熱に浮かされているように舌で転がし舐め尽くした……。
あんなに嫌いだった静月の精液を舐めるだなんてどうかしてる……、でも……、俺の中の何かがそうさせた……。
この男の前では欲も恥も、全てをかなぐり捨てさせられる。
俺はその指を、まるで静月自身のモノのように、愛おしく感じながら優しく舐めた。
その様子を見ていた静月が指を引っ込めたと同時に、今度はゆっくり舌を挿入してきた。
「……ん……あ……んっ……、静……月……」
口内を蠢く塊が、心を……身体を、熱く震えさせる……。
やはりこっちがいい……、疼きを運ぶ巧みな舌に、深く咽び息ができない……、絡まり合い吸い上げられるうちに、唇に掛かった静月の精液が苦く舌を痺れさせたが、それは唾液と混ざり合い口から零れ顎を伝った。
「ん……、ハァ……ぁ……うっ……」
身体が再び高まりそうな欲にヒクヒクする。
ダメだ……このままじゃ帰れなくなる……。
俺は誘惑を振り払うように、気怠い身体を横にして起き上がろうとしたが、肩を捕まれ再びベッドへ張り付けられる。
「もう帰らないと……」
「ダメ……」
静月は俺の乳首を舐めあげた。
ピクンと肩が跳ね上げる。
「んぁ……」
「色っぽいな葵は……」
「バ……カ……」
クスクス笑いながら静月はわざと音を立てて、俺の唇にキスを落とした。
「今晩泊まってけば?」
「無理……」
言葉にしたものの、本当はこのまま眠りたかった。
静月の唇が俺の首筋辺りを彷徨っている……、このまま抱かれて眠る誘惑に負けそうになるが、ただ鬼のような形相の母親の顔が脳裏にチラついて離れない。
なので渋々帰ることを決断する。
「今何時?」
「7時前かな」
「えーーーっ」
ガバッと、跳ね起きてみるが、全身の精液塗れで……。
「シャワー貸して」
そう言うと、あたふたバスルームへ向かう俺を見送ってたはずの静月だったが、後に続いてバスルームへ入って来た。
「なんだよ、流すだけだから直ぐ出るのに」
「洗ってあげようと思って」
「やめろ、石鹸の匂いさせて帰ったらアホでも気づくわ」
「誰が?」
「母親とか妹弟?とか?」
「へぇ……意外と真面目」
「俺んちの母親、鬼のように怖いからな」
「そうなんだ」
「この前お前んちに無断で外泊して、玄関に座らされて小一時間説教されたんだからな」
静月は面白そうな顔して俺を見ていた。
「あれから外泊禁止、門限7時……、そして今日、早くも破ってしまったのは誰のせいだ?」
「俺のせいなの?葵を一生懸命喜ばせてあげてるのに、今日何度イッた?数えきれないでしょ?」
殴りてぇ……。
そして、笑っている静月が憎たらしい。
「じゃあ、俺が挨拶に行くよ、俺んちで補習受けてるって」
「冗談じゃねーわ!それに補習なんかしてねーじゃないか!」
「こっちの補習……」
ぐいっと抱き寄せられて唇を重ねてきた。
そして手で腰を撫でながら、身体を押し付けてくるので息子ちゃん同士が密着して擦れる。
んぐぅ……。
「やめい!」
俺は静月を突き飛ばしてたが、直ぐに後ろから捕らえられて抱え込まれる。
「じゃあ、明日続きをしよう」
「ダメ、明日は俺が食事当番だから早く帰らないと」
「チャラ男が食事当番?」
「うっせーな」
どっちにしろ現実世界が待ってるのだが、さっきから静月は後ろから首筋を舐めたり甘噛みしたり、手はおれの乳首を弄んでいる。
「てかやめろ……、その手をどけろよ」
揉み合ってるうちに正面を向かされて、後ろのタイルに張り付かされた。
あ……これやばいパターンだ。
静月が俺の唇を見ている。
「ねぇ……もう一度だけ……、最後だから」
少し伏せた眼差しが熱を持って誘っている。
濡れた唇が艶々と光っていた。
「ダメだって……」
と言っても、こいつ全然聞いてねぇーーっ!
左足を抱えられたと思ったら、反対の手で腰を持ち上げられ静月の息子ちゃんが一気に挿入された。
「う……あ……」
静月の精液でたっぷり潤っている俺の後蕾は、あっさり静月の息子を受け入れた。
すっかり熱が冷めた今では早く帰りたいのに、これは鬱陶しいとしか思えなかった。
「殺すぞ静月!」
と、イキってみたものの、挿入された下半身の圧迫感やこの体制のせいなのか、ジワリと徐々に疼いてくる半身を持て余しそうになる。
そんな意志薄弱な自分自身も殺したい……。
「葵、俺の首に手を回して」
俺が不安定だったのに気が付いて、静月が優しくそう言った。
言われるがままに抱き着くと、静月の腰が勢いよくパンパン俺の腰に打ち付けて来た。
そのリズムは急速に俺の欲を煽って、すぐに夢中にさせた。
「あ……んっ、く……はぁ……っ……」
声が漏れると、俺を抱きしめる手に力が入った。
「可愛い葵」
もう俺は静月の事しか頭に無かった……。
最中だけは従順に、静月の言うがままに跪いて要望のまま何でもしそうだった。
ただ僅かに残るプライドが時折顔を覗かせては俺を混乱させた。
「し……ずき……、イ……く……」
「イッて……いいよ……」
「あぁ……ん……う……ん」
俺が激しい律動の中イッてしまうと同時に、静月も俺の中で身体を震わせた。
静月のイッた瞬間を見るのは何だか気分がいい、普段のクールで秀才面した静月が俺の身体でイクと思うと、悪い気がしないからだ。
同じ時間と快楽を共有して、密かな秘め事の共犯のような……、とにかく静月の前では取り繕うことさえ出来ず、快楽に身を任せてしまう明け透けな俺がいた……。
でもダメだ……、そろそろマジで現実に戻らなければ。
母親は今日は家に居る。
きっと夕食を食ってる最中かも……、なんて言い訳をしようか俺の頭は稼働し始めた。
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