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「静月、どいて、帰るから」
そう言って、俺は額をくっつけたまま、この気怠さを楽しんでるかのような静月の胸を離した。
「泊まってけば?」
「ダメだって言ったじゃん、今日は母親居るし、すでに門限破っててこのままじゃ外出禁止だわ」
「門限とか、外出禁止とか葵の口から出るとは」
「なんだよ」
「ただのヤリちんのチャラ男かと思ったら、意外と真面目で驚いた」
静月は意外そうな顔をして、微笑みながら俺を見ていた。
「母子家庭舐めんなよ、俺んちはそこらの家より母ちゃんが厳しいんだからな」
「じゃあ、今度挨拶に行くね」
「なんでだよ!」
「なんでって、遅くなるのは俺のせいだって言って、手を打っとけばいいんでしょ?」
いやいやいや、母親と静月の並んだ姿とか、想像しただけで恐ろし過ぎるわ。
「余計な事すんじゃねーよ、だいたいお前に関係ないし」
「あるでしょ?俺が本気出したら葵家に帰れないよ?」
ううむ……否定できない……。
静月は俺の身体に回した腕に力を込めたと同時に首筋を舐めた。
「だけど、葵がお母さんに叱られるのは本望じゃないから、抑制してるんだよ」
「だったらさっさと抜けよ」
さっきから繋がったまま、放そうとしてくれないのだ……、それに、その腰をもみもみするのは止めろって!
「寂しくない?」
「ねーわ!」
「残念……」
そう言いながら、静月は名残惜しそうに息子を抜いたが、確かに解放されてフラついてしまい、脚の力が抜けて思わず静月にしがみついた。
実際へとへとなんだと思い知る。
そうだよなぁ……、午後の授業をフケてここに来てから、ずっとヤッてるもんなぁ……。
「凭れてていいよ、俺が洗ってあげるから」
実際、静月は事後も優しい。
疲れて自分の身体も洗うのがしんどかった俺は、静月に身を任せて全部綺麗に洗ってもらった。
触れ合う胸と擦れ合う脚が安心感を与えてくれ、身体を撫でる静月の手が包み込むように暖かく、羽のように軽く触れるのですっかり夢見心地だった。
「葵?寝てるんじゃないだろうね?」
「え……あ、……」
あまりの気持ち良さに目を閉じてウトウトしてたとは言えなかった……。
「いいよ、俺に任せて」
静月はそう言うと、俺を抱え上げて浴室を後にした。
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