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……で、今は静月家の車の中であるが、送りを拒否できるほどに体力が無く、膝の上に置いた手を握られても既に解く気力も失せていた。 静月も気怠いのか頬杖をつきながら窓の外を見ている。 車から見上げる空は群青色して夜を増していて、身体は疲労が濃く、これから母親と対決しなければならない事に、俺は気分が沈んでいた。 折角、綺麗に洗ってくれていたシャツも制服も皺になったが、まあそれはそれで、わざとらしく真新しいアイロンを掛けられた物を着るよりは、いいんじゃないかと思うことにした。 きっと、途中で喉が渇いたと訴えた時に、キッチンに向かった静月が手配してくれたのだろう、あのずぶ濡れの服を着る気には到底なれなかったからありがたかった。 頭はエロで汚染されてるかと思いきや、そういう細かなところにも気が付く冷静さを持っている。 だけど、門限があるから帰りたいと、あんなに言ったのに静月は俺を解放してくれなかった。 てか、俺も静月とのえっちは自分からどうにも止められない……。 強引に攻められると理性より本能が勝ってしまうのだ。 分かっているけど、静月に八つ当たりしてしまう俺……。 自分にも腹が立つけど、横で笑っているこの男にマジでムカつく。 「葵~、機嫌直して」 静月は俺の肩に腕を回してくると、図々しくも首筋にキスをしてきた。 「やめろよおまえ……こんなとこで!」 俺は睨みつけながら小声で注意した。 チラリと運転手さんの顔を見たがそこはプロ、気が付かぬ振りをしている。 まだちょっかいを出してくる静月を突き離そうとしたが、そんなこと百も承知だったのだろう、俺の手が出る前にさっと身を避けた。 横を向いて密かに笑っているのが癪に障る。 「だいたいお前が、なんで家まで着いて来るんだよ!」 「お母さんに挨拶?」 疑問系かよ……マジでムカツク。 「ふざけんな!」 「だって成績学年5番以内の俺が一緒に勉強してますって挨拶しといたら、お母さんも安心でしょ?」 こいつ、マジ嫌い。 「してねーだろうよ!」 「門限に遅れる理由が他にあるのなら黙ってるけど?」 くっ……、他に最善の理由が無いことを知っていて、嫌味たらしくそう言う優等生面した静月が腹立たしい、そしてこいつに助けられるのはもっと悔しい……。 俺が隣の男に怒りをぶつけようと口を開こうとしたら、あっと言う間に家に到着した。 もちろん、来るなと拒否っても強引についてくる静月を無視して、ガチャリと玄関の扉を開けた先には、腕組みをして仁王立ちした母親が居た。 う……、怖いんだけど……。 「言い訳は聞かないわよ。今何時だと思ってんのよ門限は7時でしょ?そこに正座して私がいいと言うまで上がらないこと!」 「えーーーっ」 またかよ……、俺は犬じゃねーんだぞ。 「ほら、早くしなさい、いつまでも上がれないわよ」 ふぇ……、俺がしょぼしょぼとその場に座ろうとしたその時、後ろのドアが更に開いて静月がひょっこり顔を覗かせた。 母親は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに持ち直したようだった。 「あら、お友達?」 母親が驚くのも無理ない、俺は滅多に男友達を連れて来ないからだ。 女子は別だが……。 「初めまして静月凌駕です。今年から同じクラスで仲良くして貰ってます」 「静月……?」 「はい」 「もしかして静月総合病院の?」 「ご存知ですか?」 「もちろんよ!昔、静月院長に研修医の時お世話になったのよ、もしかしてお孫さん?」 「はい」 「あらー、奇遇だわ!ここで話も何だから中へお入りなさい、葵の学校での様子も聞きたいし」 「失礼します」 続いて俺も入ろうとしたら、母親が壁に手を着いて通せんぼした。 「あんたは正座でしょ?」 「え!?」 そこへすずいが部屋から出てきて、玄関先に立っている静月を見るなり、ぎょっと驚いたような顔をした。 「え!!!何……このイケメン!」 賞賛は心に留めろ妹よ……静月がつけあがるじゃないか。

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