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次の日、体育をサボって木陰で寝ていたら頬に何かが触れて目が覚めた。
ん?何だ?
「コーヒー飲む?」
あ……、高梨瑛斗!
瑛斗がコーヒーカップを手に、微笑みながら横に立っていた。
「ありがとう……」
「暑いね今日」
いきなりの登場に、俺は困惑しながらも起き上がると、カップを受け取った。
こいつとは話などしたこと無かったと言うのに、何この気安さ……。
高梨瑛斗は俺の隣に腰かけて、自分のカップにストローを挿した。
「怠いよね~、体育なんかやってらんないよー」
「うん……」
「見てよ凌駕、変に真面目だからあんなに汗かいてまで走っちゃってさー」
この炎天下、静月は体育の授業も休まない、しかも以外にも真剣に短距離を走っている。
汗で濡れた前髪が額に張り付いてる様子が、この木陰からも見えた。
それは俺にとって珍しいことではない、えっちの時に汗を掻いて頬を紅潮させた顔を、何度か見たことがある……。
……とか、やべ……、何考えてるんだ俺は……。
「昨日はあんなとこ見られちゃって~」
瑛斗がちっとも懲りて無さそうにフフフと笑った。
近くで見ると思った以上に美人な顔してる。
「保健室とか萌えるよね、で、僕らのオカズに帰ってヤッたんでしょ?なんせナマ本番見ちゃったもんねー」
ズル……、カップを落としそうになる……。
「あの凌駕が授業サボるなんて無いことだよ、二人して帰っちゃうんだもん、ミエミエじゃん」
う……。
今更否定とか……無駄だな……、こいつがこれ以上噂を広めなければいいが……。
瑛斗は呑気にケラケラと笑ってる。
「凌駕にかかったらノンケだって落ちるんだから、ほんと尊敬するーっ」
うむぅ……、それは嫌みか?
「静月に付き合うの大変でしょ?」
「え?」
何のことを言ってるんだ?
「静月、絶倫だから離してくれないでしょ?」
ぶっーーーっ!!!
思わずコーヒーに咽せて吹き出しそうになった。
なんで知ってんの?
なんで?なんで?なんで?
「え……と……」
「大丈夫、大丈夫、僕誰にも言わないからこう見えて口固いんだよ」
そう言って前を向きながら高梨瑛斗は楽しそうに笑ってる。
確か高梨瑛斗と静月は付き合ってるとか噂があったよな?
でもどうなんだろう……。
「お前らって……付き合ってる……んじゃ?」
「僕と凌駕?付き合ってたら今頃修羅場でしょ?でも、どっちみち君だって、このままだと修羅場のフラグ立ってるけどね」
「え、どういう意味?」
「あまりにも君が浮かれてるから忠告しとこうと思ってね」
「浮かれてるとか、ねーわ!」
てか、そんな風に見えるのか俺?
俺は頬が紅潮するのが分かった。
「だからどういう意味だよ」
「聞かない方がいいと思うけどな」
「いやいや、そこまで言ったら聞きたいだろ普通?」
高梨瑛斗は勿体ぶるように、口角を上げて微笑んだ。
噂ではかなりの男子生徒に手を出してると言うだけあって、確かに可愛い顔している。
「君、凌駕のこと好きなの?」
ぎょっ。
「好きとか嫌いとか……考えたことねーわ」
「あー、いきなりやっちゃった系?」
「……いきなりと言うより……無理矢理?……やられた系?」
「うわぁ、そういうの凌駕燃えそう!教室では澄ました顔してるけどエロ大好きだしね、ギャップあり過ぎだよね」
可笑しそうに笑っている。
「確かに……、普段の顔とは想像つかなかったわ……」
「でしょ?とんだエロ大王だよね」
「あいつ、しかも超絶倫」
「あはははは、身体も鍛えてるしね、絶倫!ウケる~」
高梨瑛斗が凄く嬉しそうに反応した。
そうだよ、朝までやヤラれまくったさ。
まぁ、気持ち良かったのは否定しませんが……。
でもいったいこいつどういうスタンスよ?
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