97 / 213
97
「一日振りの葵の匂い……、恋しかったよ」
静月は俺の首筋辺りで、すんすんと匂いを嗅いでいる。
くすぐったくて肩が跳ね上がる、だが俺も同じように静月の匂いに欲情しそうになり、抵抗する気力が早々に薄れてゆく、あっさり降伏しそうな自分が情けないとは思うが、どうしようもない……。
降りてきた唇から、俺の口を抉じ開ける静月の舌が強引に挿入される。
ちゅ……、くちゅ……。
そして差し込まれた舌が口内を犯し続ける。
それは俺の奥深いところの蜜を探し当てるように、触覚の如く抜き差しを繰り返しながら弄っていた。
どうしてだろう……、いつもどうしてこんな風に急速に慣らされてゆくのだろう……。
そして、静月はシャツの中に手を忍ばせてくる……。
「葵の唇……甘いな」
「だ……ダメだって、あいつらに聞こえるから」
俺は静月の胸に手を当て、距離を取ろうとした。
「教育上良くないよね、空君てまだ小学生だろ?」
「おま……、もしかして空に目つけたんじゃねーだろな?」
あり得るな、こんちくしょー。
「何バカな事考えてるの?ほんとおバカだよね?」
「バカバカ言うな!」
「俺が葵の弟をどうにかしようと思ってるとか、本気で考えてるの?」
「うん」
パチーーーン!
デコピンが飛んできた。
「痛ってーーーー!」
思いっきり打ちやがった……、痛さに思わず額を押さえてベッドでのた打ち回る俺……。
「おま……、今度殺す!」
「いいよ、腹上死とかいいね」
見かけによらず、本当にアホだよねこいつ、しかも俺と居る時は何時もエロ全開。
静月はニコリと笑って俺の額にキスをする。
鼻先を掠める静月の香水の匂いが俺の心を惑わす。
この匂い……好きなんだよな……。
キスは耳から首筋へ落ち、巧み指先が俺の服を手際よく剥ぎ取った。
「葵がいいに決まってる」
鎖骨から胸まで、ゆっくりと唇が下りてゆく……、その触れた場所が熱く火照る……。
このままだとヤバイ……、身体に火が点く。
「静月……マジでやめろって……」
「うん……?俺もドルチェ食べたいんだけど?」
「苺食っとけよ!」
「葵の方がいい、葵も俺の方がいいでしょ?」
「俺は苺の方がいい……」
そう言って、思わずイチゴの皿が乗ったテーブルに手を伸ばそうとしたら遮られ、次の瞬間乳首を舐められると、それに反応した俺の身体が震えた。
「嘘ばっかり……」
静月がおかしそうにクスクス笑う。
くそぉぉぉ、悔しいが静月の舌が俺の肌に触れる度に、堪らなくなるほど身体がぞくぞくする。
その長くしなやかな指が、俺の中に入ってきた時には思わず静月に抱きついた。
「ほら、俺の方がいいでしょ?」
「あ……ぁぁ……ん……ぐ……しね……静……月……」
蠢く指は身体の中も、頭の中もエッチのことしか考えられなくさせる。
もう俺の良いところは先刻承知で、ピンポイントで突いてくる。
うぁ……やめろ……っ……。
頬が上気し、全身が熱く燃える……。
俺は声が漏れるのを抑えるために、自分の腕で口元を押さえた。
「悶えるのを我慢する葵はめちゃ可愛いよ」
「ば……か……」
声を漏らさないよう我慢するのは、苦しくて涙が出そうだってのに……。
静月は俺の乳首をいやらしく音をたてて嘗め回し、片方の手で腰骨辺りを撫で回すものだから、腰がヒクついて身体が撓る。
まただ……あっさり攻略される自分が歯痒い……。
それに実際のところ指はもういいから、静月自身を挿れて満たして欲しかった。
でもそんな俺の気持ちを知っているくせに、静月は意地悪く指の動きを止めようとしない。
「静月……は……やく……」
「そうやってせがむ葵、可愛いい」
「ころ……す……ぞ……」
「そしてそんな強気な葵を無茶苦茶にしたい……」
低い声で囁かれるとゾクゾクする。
「は……やく……」
静月はキスをしながら俺の足を持ち上げて、その言葉通り一気に挿入してきた。
う……ぐっ……ぐっ……。
ああ……俺の身体を貫く静月のモノが、慣らされた身体の中で馴染むように存在を増し、心地良い圧迫感と同時に心まで満たした。
静月に揺さぶられ始めると、俺はしがみついてそこから発する熱を、もっと……もっとと、貪欲に腰を振って快楽を求めた。
「あ……ぐ……」
喘ぎ声を出さないよう手で口を塞ごうとしても、静月にすぐに外される。
まずい……、声を聞かれるわけにはいかない……。
兄の沽券にもかかわるじゃないか……、でも湧き上がる欲に頭が働かなくなりつつある……。
「だめ……だっ……て……あぁ……ん……ぐ……こえが……」
それでも静月は容赦なくピストンを繰り返していた。
俺は枕を引っ張り顔に充てがおうとしたが、それも取り上げられて泣きたくなる。
「顔隠さないで……、見ていたいから」
こいつは何時も俺のどんな表情も見逃さない。
と言うか、俺が快楽にのた打ち回る姿を見るのが好きだな、征服欲だろうか俺の羞恥心を後でからかうのが好きなのかはわからないが、まあ両方だうう……。
俺もこいつの前では散々、恥ずかしい姿を見せている、今更怖いものなどないくらいに。
イキ顔も何度見せたことか……、今もすでにカウパーが滴り落ちて腹を濡らしている。
静月の息子ちゃんは前立腺を的確に攻め続けていて、俺は震える指をその滑らかな背中に這わした。
振動の度に動く筋肉が掌に伝わり、その野獣のようにしなやかな身体で俺を制圧している。
「ん……ぅ……ん……あっ……あん……あぁ」
叫びそうになるところで、静月に唇で口を塞がれた……うっふっ……。
くちゅり……ちゅ……くちゅ……、唇から二人の混ざり合った蜜が溢れて首筋を伝う。
ピストンは更に激しくなり、俺の身体が欲に浮かされ、解放を求めて弓なりになる……。
「んぁ……い……イク……」
湧き上がる欲望が全身を駆け巡る。
「だめ……イク……静月……い……く!」
「いいよ、一緒に行こう……」
「う……」
声が出る瞬間、静月が俺の口に当てた腕を、思わず噛んでしまった。
血が出たのか鉄の味がする……、だがそれが余計俺を興奮させた。
静月を求めて腰を振る、すると同じくらい俺を求めて静月の突きが激しくなり、次の瞬間、絶頂を迎えた二人の身体が、同時にピクピクと震えて崩れ落ちた。
はぁ……はぁ……はぁ……、激しいエッチに呼吸がなかなか整わない……。
「おま……え……激し……過ぎ……る……」
静月も俺も息がまだ荒かった。
「噛まれて興奮したよ……葵を壊したくなるほどに……」
ある意味俺を壊した静月は、最初の日以来俺の中に居座り続けて虜にしていた。
身体の繋がりは脳天まで痺れる程に俺を麻痺させる。
こんなセックス知らない……、今までは……。
「腕ごめん……」
俺はそう言うと、静月の腕を取り、くっきり歯形がついて血が滲む肌に舌を這わせた。
それは静月自身を舐める時のように、そっと優しく……。
それを静かに見ていた静月だったが、その腕を引っ込めながら同じ場所を自分で一度舐めてから、上半身を起こすと俺を見た。
「葵の唇は蜜をたっぷり含んだ花のようだな……」
静月の指が俺の唇を優しく撫で、視線はそこに集中している。
「じゃあ、おまえは花から花へと飛び回る蝶だな……」
こいつにぴったりじゃないか……笑える。
「ここに綺麗な花があるのに他に行くわけがない」
「花と蝶……」
「そ、俺らは互いを必要としている」
「……」
静月の唇が降りてきた時、俺は自ら口を開いてその舌を受け入れた。
それは血の味がした……。
欲望の開放は男という枠をあっさり超え、静月とのセックスに酔い過ぎて、自制が利かなくなるのが怖く、身体が静月を欲する事実さえ、今の俺にはまだ受け入れがたいと思っていた。
なのに今、気が付くと俺は静月の身体に腕を回して、夢中でキスに答えている……、だって気持ちいいんだもん……これを拒否とか無理だろ……。
それにもう……明日になっても後悔しない……何故だかそう思えた……。
ともだちにシェアしよう!