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気が付くと、あっという間に土曜日だった。
思えば静月に振り回され放しの一週間で、他にも将生の告りとか、まさかの保健室で長瀬と瑛斗のナマ本番を見ちゃうとか、色々あったわけだが、濃かったよなぁ……。
そして今日、朝から静月がどう出てくるかと思いきや、授業が終わっても何も言って来なかったので、この前、母親に外泊許可を貰ってたのは何だったのかと心で愚痴りながらも、いや別に期待してたとか……は無いんだが、うん……ないよ?
いや、正直に言おう……ちょっと……あったかな……?
あいつとのエッチは……そう、何だか病みつきになるくらい俺を虜にする。
人間て恐ろしい……、どんな環境にも慣れてくると、それらが全て普通に思えてくるからだ。
少し前まで可愛い天使ちゃん達のことで脳内お花畑だった俺が、男とヤルとか……、そんな発想は頭の片隅にも無かったわけで、今や静月とのエッチしか考えておらず、頭の中から天使ちゃん達を追い出す始末だし、しかも楽しいとか堂々と思える自分が怖い。
誰と寝てもあんなにベッドで乱れたことや、あれ程の強い快楽は無かったのに、しかも立場が逆転した俺が我を忘れて喘ぐ声が耳を劈き、それは恥ずかしさとか常識とかいうものを完全にぶっ飛ばした。
まるで調教されたかのように、俺の身体は静月を拒めない……。
だからって、声が掛かるのを待っていたわけでは無い、少し距離を置く時間も欲しいのが事実だったが、だけど、授業が終わっても静月が何も言ってこないから、拍子抜けしたと言うか……身構えていた自分がちょっと気恥しいとか思いながら、将生や大河、それにあずみの三人でハンバーガーを食べに行こうと約束をし、みんなと校門を出た所で後ろから静月に呼び止められた。
「どこ行く気?忘れたわけじゃないよね?」
「え」
「何?葵、静月君と約束してたの?」
あずみが驚いたような顔をして言った。
そりゃそうだろ、俺も驚いたわ、そのつもりだったんかい!
それなら早よ言えや!
「えーと……」
「えーとじゃないだろう?補習の続きするって言ったよね?」
静月は微笑んでいたが、目が怒っているのはきっと俺しか気付かないだろう。
デビルスマイルと命名しようか?
怖いんだけど……。
まあ……きっと将生は気づいてそうだ、こういうのは変に気が付く。
案の定、意味ありげな目線を俺に寄越していた。
「葵ったらだめじゃん!まだ補習終わって無かったんだー、いいよいいよそっちが先でしょ行っといでー、私たちは三人で行くわ」
「ごめんね、そういう事だからこいつ借ります」
静月はまるで猫を捕まえた時のように、後ろから俺の襟を掴んでそう言った。
「いいのいいの、よろしくお願いします」
あずみ、お前は俺の母親か!
俺バーガー食いたいのに……腹減った……。
大河は何だかさっきからにニヤニヤ笑っているが、特に何も言わずに手を振って別れを告げてきた。
「んじゃ、またな葵」
「おう……すまねー」
将生は少し寂しそうな顔をしていたが、しょうがないと言うように肩を落とすと、がっかりしたように手を振って、あずみや大河と一緒にその場を後にした。
すまん将生……、そんな顔するなよ、俺だって胸が痛いじゃんか……。
今までこんな風に天使ちゃん達と遊びに行く時、手を振って別れたけど、そんな表情見たこと無かったぞ?
と言うか、始めて将生の気持ちを知って、改めてそういう目で見てるからか?
俺が鈍感だっただけなのだろうか……。
「葵、着替え持ってる?」
通りを歩く途中で静月に尋ねられた。
「見たらわかるだろ?どこにそんな荷物あるんだよ」
なんか複雑な胸中に苛立ち、静月にキツく当たってしまうが、こいつはそんなこと気にもしてない。
寧ろ、自分の思うがままに事が運んで、顔がニヤついてやがる。
「じゃあ、ちょっと来て」
そんな静月に連れられて、やってきた所は某有名ショップで、馴染みらしいスタイリッシュな店員に、にこやかな笑顔で迎え入れられ、簡単に挨拶をすませると早速服を物色し始めた。
試着もせずにいくつかピックアップすると、袋に詰めさせている。
なんつー買い方……。
俺は少ない小遣いの中、一万円の物を買うのに散々悩むんだが、きっとこいつにはそんな貧乏くせぇことなど無縁なんだなぁ……。
「なんで今買い物なんだよ」
見るとボクサーパンツを選んでいる途中らしかった。
腹減った俺は、ショッピングなんぞに付き合わされてだんだん不機嫌になる。
「葵着替え持ってないでしょ」
「え、俺の?」
「そうだよ」
「ええ、いらねーっつの!」
静月は耳に顔を近づけて来て、コソリと言った。
「まあ、葵は何も着なくても魅力的だけどね」
ゴフッ……何を言うんだ!
「……ぁ、アホか!」
「それに下着とか着る暇ないだろうけど」
「……黙れ!」
俺の頬がカーッと熱くなった。
幸い店員は商品を持ってレジに行っていたので気付いてないが、俺は思わず後ろに退いた。
それを見ていた静月はケラケラと笑って、先ほど見ていた品物を全部買い占めた。
なんなん?その量は?
何泊しろっつの?
ほんとヤル事しか考えてないよなおまえ!
まあそんなお前に乗せられて、その気になる俺も俺だけどな……。
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