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ソファに座りながら会計をする静月を見ていた俺は、つま先から頭の髪の毛一本まで、育ちの良さが滲む静月の容姿に目を奪われていた。 そして、カードを渡すしなやかな手に見惚れるていると、その指で俺の身体を押さえつけたり、顔に掛かる髪の毛を優しく払ったりする動作とか、いろいろ思い出して頬が火照るのを感じつつ、他にもベッドの上では我が物顔に振る舞う横暴さとか、時に俺の中でピクンと果てる姿とか、沢山の出来事が溢れ出してきた……。 うわっ、何考えてるんだ俺……。 やめい! 正気に戻れ! そんなエロい妄想を追い払うように、静月に文句を言った。 「静月-、俺腹減って動けない」 「ガキか」 「何時だと思ってんだよ、もう1ミリも動けません」 静月は少し呆れたような顔したが、微笑みながらカードを財布に入れる。 多分、すべて俺の買い物だろうに、礼のひとつも言わない俺もどうかとは思うが、勝手に物事を進めるお前が悪い……だろ? 「ほら、立ちなよ。近くにパスタの美味しい店があるから行くよ」 払い終わった静月が側に来た。 手には幾つものショッピングバッグを握りしめ、もう片方の手を差し出して来ると、俺に立ち上がるよう促した。 「パスタ?食いたいーっ」 「目輝かすんじゃないよ、ホントにもう……欲望に忠実だな葵は」 「食欲、睡眠、性欲……基本だろこれ!」 「葵は性欲だけかと思ったけどね」 「ちげーわ、それお前だし」 店から通りへ出た時、俺の耳元で静月が囁いた。 「認めるよ。葵が側に居るとヤル事しか考えてないし」 「お……、おま、うるさい!」 俺は恥ずかしくなって静月から離れようとしたが、それを察した静月が素早く俺の肩に腕を回して来る。 「葵に言われたくないね、俺の腕の中でトロトロに溶けちゃう癖にさ」 「な……っ、黙れ静月!」 俺は顔が赤くなってるのが分かった。 「もう、帰る!」 そう言って、肩に回された腕を外して回れ右したが、直ぐに腕を掴まれた。 「ダダこねるんじゃないよ、パスタ食べたいんでしょ?ほら行くよ」 そう言って、ズルズル引きずられて行ったお店は、木々が沢山植えられていて都会のオアシス風で、そんな洒落た中庭のテラス席に俺たちは案内された。 ランチ時を少し過ぎていたけど人は多く、静月が店内を歩くとみんながうっとりとしたような顔で見るのがおかしかった。 澄ました顔して歩いているけど、こいつとんだゲス野郎ですよ~って言ってやりたかった。 ウケる……、テーブルに着いてひとり笑っていたら、前の席から怪訝そうな瞳で睨まれた。 まあ面倒だからそれを無視して、オーダーを取りに来たギャルソンにさっさと注文をする。 中庭は程よく風が通り初夏が近いせいか、テラス席は心地良かった。 思えば静月とこんな風に昼食とかしたこと無かったので、しかも外での食事とかなんかすごく新鮮に思えた。 「なに?」 「え?」 「じっと俺の顔見てるから」 「いや……まあ……何て言うか、お前とこうやって食事するの初めてだなと思って……」 「部屋で食べたの忘れた?執事に持って来させた時に……葵まっ裸だったけど」 「うるさいーっ、余計なことは言わんでいいわ!」 真面目に答えたらこれだよ……。 そう……ヤリ過ぎて腰痛くて起き上がれなかったんだ、なのに腹は減るし、それを訴えたら豪華な食事を部屋に運んでくれたんだっけ……、ホテル並みのサービスに驚いたものだった。 「赤くなってるよ葵」 「おまえが余計なこと言うからだ!」 「葵って見かけと中身違うから面白いね」 「どう違うんだよ、お前こそその言葉そっくり返してやるわ」 「葵の見た目はクールで外見はチャラいけど、ああ、中身チャラいのは同じだけどさ、いちいち赤くなったり怒ったり、子供みたいにクルクル表情が変わるんだよな、からかうと面白い」 「おまえに天罰下れ!」 こんな笑顔見たことないほど、静月は軽やかに笑った。 昼下がり……、心地よい風……、静月との食事……、俺も酷く寛いでることに自分自身驚いていた。 他愛無い会話が密を強めて行く……、そんなことをぼんやり考えていて、静月の表情が強張ってどこかを見つめていたのに気づくのが遅れた。 「あれ、凌駕!久しぶり」 すると、後ろからいきなり声を掛けられた。 静月の視線の先と、声の主が一致した。

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