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「あんた達喧嘩でもしたの?」
休憩中、将生と雑談してた時に、あずみが俺にヒソヒソ声で聞いて来た。
静月が隣にいたからだ。
でも、回りには何時もの如く取り巻き連中が居て、何やら賑やかに話をしていた。
まああずみの疑問も分からないでもない、この頃、食後に屋上へ行くことも無ければ、隣同士だと言うのに話もしない俺ら……。
あれから8日間が過ぎていた。
長い長い8日の中で、静月と過ごした誰にも言えない放課後の日々は何だったんだろうと、毎日思わずにいられなかった……。
傍にいる日数は少なくても、精液は枯れ果て、体力の限界まで続けられた濃厚なセックス……。
最初は戸惑い、悩んでいたが、いつの間にか全てを受け入れ、静月が傍に居ることにさえ慣れて、それが自然になりつつあったが、こんな形で急に接触が途絶えてしまい、俺は大いに戸惑っている。
「いや、補習が終わったし、晴れて自由の身なんだけど?」
「んー、なんか静月と距離なくない?」
あずみ……、それ突っ込む無し……。
そうだよ……あの日以来、静月は俺に話しかけることも、ましてちょっかいすら無く、勿論放課後のお呼ばれなど全くないのだ、だから屋上など行くワケもなく、教室であずみや将生と一緒に居ることが多い。
まあ、何時もの日々に戻ったわけだが……。
どうしてだか、心がしっくりこない。
「あずみー、それって禁句じゃね?葵が可哀そうじゃん」
将生がにこやかにそう言う。
なんで笑ってるのだ将生よ……。
そうなのだ、俺のテンション下降と反比例するかのように、将生のテンションがアップしてるわけで……。
「なんでだよ?」
俺は不機嫌に尋ねた。
「だって静月と葵付き合ってたんだし」
ぶーーーっ、教室で言うな!
ジュースを吹き出しそうになる。
「なんだってーーー?」
「ちげーし!!!声がでかいわ!」
あずみと俺が同時に叫んだ。
「あくまでも補習だわ!何言いやがる!」
「補習と言う名目の……」
今日の将生は何が嬉しいんだか、ニヤけた顔して食い下がる。
「なにそれーーーっ、女好きで有名な葵がとうとう男と?!」
「うおぃ、あずみ!!」
慌ててあずみの口を塞ぎながら将生を睨みつけた。
余計なこと言いやがって。
「おま……、将生!いい加減にしろよ?」
「許せ友よ、単なる嫉妬だから、お前ら二人を見るのが辛くてな」
!!!
言うなってば!!
「はぁ?????」
今度はあずみが将生をガン見した。
「な、な、なに言ってんの将生は?嫉妬って何?誰によ?」
「静月に……」
ガタガタ!!バターン!
あずみが椅子ごと後ろにひっくり返った。
「おい、大丈夫か?パンツ見えたぞ」
俺はあずみの手を引いて起こしてやったが、次の瞬間あずみの平手が俺の頬を打った。
「何見てんのよ!」
「痛ってぇ~、見たくて見たんじゃねーし!寧ろ見たくね~し!」
と、言ったら再びグーで殴られた。
暴力反対……。
「将生、あんた熱があるね?」
そして体制を立て直したあずみが、真剣な顔して将生にそう言った。
「ないわ、ハートブレイクな胸以外、至って健康」
「待ちなさい、待ちなさーーい!あんた自分が何言ってるかわかってんの?」
「うん、俺が葵を好きだってこ……んぐぐ……」
今度はあずみが将生の口を塞いだ。
「あ……あんたらホモか……、うちの友達はみんなホモなんか!」
「ちげーし!」
俺は反論した。
だが将生は殊勝にコクリと頷く。
おい!
認めるなよ。
「でも葵、あんた静月とできてるんでしょ?」
「できてねーわ!」
と、一応保身しとく……言い触らされたらろくなことない。
「葵、正直に言いなさい」
あずみの目力に、思わず何もかも言いたくなるが俺も考えた。
もう8日も何も言って来ない、もしかしたらあの再会が引き金で潤と復活して、俺は用なしになったんではないだろうか?
まあ、俺たちは身体の関係だったし、このまま自然消滅って所かも知れないと思うと、……いやそうなんだろうけど、どっちにしろこれ以上話を大きくしたくなかった。
「何もねーってば」
そして丁度、授業開始のチャイムが鳴り、みんなが椅子に座り始めたので話はそれで運良く途切れた。
そっと見やった隣の静月は、前を向いて先生が入って来たのを見ていた。
ヤルだけやって完全無視かよ……。
まあ、『静月に二度目はない』って、みんな噂してるのを知ってたけど、それでもこんなにも突然関わりが途切れるなんて、何だか悲しくなってきた……、今まで俺が天使ちゃん達にやってきたことと変わりはないけど、自分の身に降りかかってやっと分かることもある。
そこに恋愛は無いけど、だからこそ追わない。
このまま自然消滅でいいんだ、俺は元来女の子好きだろ?
元のチャラ男に戻るだけなのさ、そして街に出て可愛い子でもナンパしよう……うん。
でも、この八日間……ナンパするどころか家に直行とか……、身体も心も萎えてる自分が悔しかった……。
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