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放課後になってあずみはバイトへ、大河はデート、そして俺と将生はブラブラ買い物でもしようかということで、街へ出かけた。 将生がサッカーの靴が見たいということで、近道をしようと裏路地を抜ける為に入り込んだ店の脇道で、隣町の制服を着たガラの悪そうな高校生数人がたむろしている所に出くわした。 面倒なことに巻き込まれたく無かった俺らは、普通にその横を通り過ぎようとしていたのだが、その男子生徒の中心に俺らと同じ制服を着た女子がいて、どうやらその子はコイツらに絡まれているらしかった。 「やめて下さい!」 触ろうとしたのか、女の子が手を振り払った。 周りからは嘲りのような笑いが漏れている。 俺らはその横を通りながら、小声で話し合った。 『面倒だな……』と俺。 『でも、放っておけないよな?』と、将生。 『しょーがないな……』 俺はため息と共に、そう呟いて後ろを振り返った。 将生も頷いている。 「ごめんねー、この娘俺らと待ち合わせしてたんだー」 俺はそう言って、取り囲む連中を掻き分け、その娘の肩に手を乗せた。 女の子は敵か味方か伺うような不安な顔をしていたが、戸惑いながらも俺の演技を受け入れたようだった。 だが、当然ながら気にくわないのは絡んでいた高校生の方で……。 「俺らが先に話しかけてんだよー、出て来るんじゃねーよバカが!」 見た目そのままのガラの悪い口調で、俺を睨んで言葉を吐き捨てる。 「まーまー、落ち着いてよ」 将生も口を挟むが、まあ落ち着くわけはないわなぁ……、ドヤ顔で俺らを睨んでくる。 しょうがない……。 「悪いけど、鞄持っててくれる?」 俺は戸惑ってる女子に、俺と将生の鞄を無理矢理預けて、振り返ると連中に向き合った。 「おや?どうやらやる気らしいなイケメン君よ、泣いて詫びるなら今のうちだぞ?」 「こっちのセリフ~、靴舐めさせるぞコラァ!」 俺がそう言うと、一瞬驚いたような顔をしたが、その後爆笑した。 「綺麗な顔して言うじゃねーか、俺らが勝ったらチンコ舐めさせるぞ!」 リーダー格の奴がそう言うと、みんなで大笑いしやがった。 相手はボス的存在一人と、へらへら薬でもやってそうなチンピラ風な奴が三人。 楽勝じゃねーか、だろ将生? チラリと将生を見ると、以心伝心不敵に笑って頷いた。 こんな時、ほんと将生は頼もしい。 特待生だから事件起こしちゃダメなんだよとか、ちっちゃなことを言う男ではない。 裏表の無い素直な性格で、目の前に困っている人がいれば、率先して救う男だ。 まあ、悪く言えば単純バカなんだけども……。 あんま考えて無いよなぁ将生よ。 「カモン!」 俺は指を突き立て奴らを挑発した。 さっさと終わらせて帰りたいからだ。 「ざけんなてめぇ!」 俺の挑発に怒りを爆発させて男が飛び掛かってきた。 咄嗟に避けて、後ろに回るとその背中を殴打する。 続けて三人が襲って来たが、将生がその一人を捕り押さえて足蹴りをした。 ナイスタイミング! すると、男がナイフを取り出し振りかざした。 「おっと、フェアじゃねーなぁ、腕に自信がないのかよ」 「うっせぇ!」 そう言い、ナイフを突き立てながら迫ってくる。 俺は殴りかかってきたそいつの仲間を盾にして身を隠し、振り回すナイフをタイミングを見計らい足で蹴り、そいつの手からナイフが空を舞った時、腕を捻じ曲げて背後に立った。 口ほどにもない弱さで拍子抜けする。 「ねぇ、腕折られたい?それともチンコ切られたい?」 「や……やめろ……」 「二択しかないわけよ?どっちがいい?」 「お前ら……、そんなことしたら退学だろうが……」 「あんねー、そんなの金で揉み消すに決まってんじゃん、うちの学校金持ちの生徒多いの、おまえの腕が折れようがチンコ切られようが、これっぽっちも痛くないわけよ?」 将生が拾ったナイフを、リーダーの目の前でヒラヒラさせながら笑っている。 連中はリーダーが捉えられたせいか、大人しくなりアタフタと俺らを見ていた。 まあ、金持ちでもない俺らには当てはまらないが、ハッタリは喧嘩の常套手段だし。 「あの……もう……いいです。やめてください……」 その時、助けた女子が勇気を振り絞ったように、意を決して会話に入ってきた。 「いいの?」 「はい!もう充分です、放してあげてください……、退学になって欲しくないんです……」 ああね……、そうだった……俺たちは庶民の子で退学になりかねない……。 「じゃあ、この女子に免じて許してやらぁ、二度とこんなことするんじゃねーぞ」 俺は捕らえていた男を前に突き飛ばした。 その男を仲間が支える。 「クソ……、覚えてろよ……」 捨て台詞と、お決まりのセリフを残しながら連中は去って行った。 「ありがとうございました」 女の子はホッとしたように、ようやく笑顔を作ると頭を下げた。 よく見ると、栗色のボブが似合ってるなかなかの美人だった。 一年生だと分かったのは、胸元のリボンがピンク色だったからで、二年は水色、三年は薄い緑色だ。 「どういたしまして」 俺と将生は鞄を受け取りながら頷いた。 「じゃあ、俺ら行くから気を付けてね」 「はい、本当にありがとうございました!」 そう言って、彼女は再び頭をペコリと下げた。 俺と将生は手を振って別れると、路地を抜けてお目当ての店へと歩き始めた。 「可愛い子だったなぁ」 俺がポツリとそう言うと。 「もう、目付けたのか?」 呆れたように将生がそう言った。 「あのね……、単純に世間一般の意見として言ったまでだ」 「俺には、おまえの方が美人に見えるけどな」 「おい……」 「単純に俺の意見を言ったまでだ」 「聞きたくねーし!」 ほんと、こいつ困るわ……、心の声が漏れ過ぎる。 しかも横目で見ると笑ってやがった……。 うーむ……、こいつも一度シメなければ……。

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