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だけど……。 これで何かが変わるのだろうか。 今、将生を受け入れて本当に忘れられるのか……? 後悔しないだろうか……、でも今の俺は将生が必要だ。 欲が煽られ、感じれば感じるほどリアルな心の痛みが頭を掠める。 将生がキスをしてきた……、俺はその温もりを必死で求めた。 強引で欲を煽るような横暴なキスの主はもういない……、きっと今頃誰かとこんな風に抱き合っているのかと思うと悲しくなってきた。 俺ではない誰かを……。 ふと、閉じていた目じりに将生がキスをしてきた、そして困惑顔で俺を見つめている。 「泣くな……」 「え……」 「ほら、また泣いてる……」 そう言いながら、将生は親指で俺の涙を拭った。 泣いていたのか俺……、どうして勝手に涙が出るんだろう……。 「気にしないで……」 俺は将生の首に腕を回して引き寄せ、再び自ら激しいキスをした。 だけど妄想が止まることは無かった。 静月は潤とヤッてるんだろうか……、潤を抱きしめ熱いキスを交わして、泣きたくなるような快楽の渦の中で、ファックしながら潤の名前を呼ぶのだろうか……。 胸がキリキリ痛んだ。 その時、ふっと身体が軽くなった。 見ると、横で仰向けになって将生が溜息を吐いていた。 「将生……?」 「やめよう……、誰かを思って泣いてる葵を無理矢理抱く気は無いよ……」 「将生……」 「いいんだ……、俺もちょっとテンパってて性急だったし……ごめんな葵……」 将生は俺の顔を見て、悲し気に微笑んだ。 「将生は謝ることない……、俺が悪いんだ……俺の方こそごめん……」 「そんなこと絶対ないからな!どう考えても、葵の弱味につけこんだ俺が悪いに決まってるじゃないか!」 そして苦悶の表情をしている将生が、俺は愛おしく感じた。 決して将生が悪いわけじゃない、おまえを利用しようとしていた俺が悪いんだ、親友として恥ずかしい。 そして、ごめん……。 「ありがとう将生……」 俺は将生の顔の横に頭を埋めながら抱きついた。 程なく将生も、俺の身体に腕を回してがっちりと抱きしめてくれた。 その存在感と暖かな体温が何だか心地良い。 「俺は葵が一番だから、無理強いはしたくないんだ……」 「無理強いとかじゃない……、ただ勝手に涙が出てくるんだよ……」 「そりゃ……苦しいよな……」 将生は俺の頭を、子供をなだめる時のようにポンポンと軽く叩いた。 俺のペースで事を運ぼうとしてくれ、俺を気遣い尊重してくれる。 本当にいい奴だ。 今はまだ全身でその胸に飛び込むのは無理そうだけど、きっと何時かそれに答える日が来るような、優しい予感に包まれながら、将生の腕の中で眠りについた……。

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