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「俺は葵が恋しかったよ」
嘘つきめ……、よくそんな薄っぺらい言葉が出て来るよな。
「こんな風に葵を虐めたかった」
そして俺の首筋の敏感な所にかぶりつき、次いでそこを舌先で舐めたかと思ったらチュっと再びキスマークを付けてきた。
「ん……あ……、……や……めろ……」
だが腰を振るのは止めないので、前立腺を押されっ放しで次から次へと湧いてくる絶頂に、記憶が飛びそうになる。
繋がりから、快楽が波のように昇ってきては俺の全身を駆け巡る。
あっという間にこの行為の前で俺は静月の奴隷に成り下がり、……でもこの瞬間だけはそれでもいいとビッチな俺は自分を甘やかす。
それから静月の指が俺の乳首に伸びてきて、クリッと揉まれて体がガクガク震えた。
「あ……ぅ……っ……」
身体がぴくんと跳ねてエビぞりになる。
「葵は俺の物だ」
そう言って、俺の耳たぶを噛んだ。
「つ……」
何勝手なことを言ってるんだよ……、何様だよ……と思いつつも、痛みと快楽の狭間で声も出ない俺は、それでも全てを受け入れる最低野郎だ。
静月をどうこう言う資格などない。
こんな状況でも欲に打ち震えている。
突きが激しくなって静月の息遣いが荒くなる……、再び俺も一緒にイキそうだと思うと何だかゾクゾクする。
「イク……い……くぅ……、はっ……ぁ……し……静月……イク……っ」
「一緒に行こう……」
そして高みに昇りつめた静月の腰がピクンとなったと同時に、俺の精液も腹の上に飛び散った。
ガクガクと身体を震わせ、ぐったりと腕を降ろした、力ない俺の手を取り静月が指を絡めて来る。
そして呼吸の整わない俺の唇にそっとキスを落とした。
ん……ふっ……。
「好きだよ葵……」
お前の『好き』は不特定多数へ発せられ……、心にも無いセリフは俺の心に響かない。
不信感いっぱいの俺の思考を置き去りにして、静月は俺の唇を抉じ開け舌を入れて来る。
そして俺の舌を探り当てると、絡めては吸い取ってくる。
果てた時、静月は必ず俺の頬に手をやりキスをする。
その仕草が優しくて愛に満ちてるものだから、ついつい勘違いしそうになっていたものだ。
舌が絡まり唾液が後を引く……。
「葵、他の奴とヤッたら殺すから」
「知るかよ……、俺の勝手だ……」
「強がりめ、俺の時ほど感じないだろ?」
それはそうだけど……いや、男はお前しか知らないけど……、まあ俺だって人並みに……いや人より性欲はある。
静月を思って誰ともエッチしないとか無いナイ……、そこは自由だろうよ。
でもこれからは……どうなるのだろう、俺は男女どっちとエッチをしたくなるのだろうかと、疑問を持ちながら静月を横に押し退け起き上がる。
「俺はヤリたいときはヤるし」
「俺以外はダメだよ、連絡して」
あくまでも受け身かよ……、残念ながら俺もそうだ、今まで自分から誰かを誘ったこととか無かったよな……。
「アホか、連絡とかしねーし、それにおまえにはじ……」
潤が……って言いかけたら、キスで塞がれた。
キスだけでも昇天しそうになる、蕩けそうな俺の大好きな静月との極上のキス……。
誤魔化すなよ……、お前には潤がいるじゃないか……、俺は毎夜自分のベッドで泣いたんだぞ?
そう思うと、急に現実味を帯びて悲しくなってきた。
「ほんとに殺すよ?他の奴とエッチしたら」
優しいキスとは裏腹な、鋭い視線で俺を睨みつけてくる。
しつこい……、俺の勝手だっつの。
静月が俺の後頭部に手を置き、顔をくっつけてくる。
なんでそんなに俺の事縛るんだよ……、一人の相手じゃ満足できないのかよお前は……最低じゃないかそんなの……、そう思ってふと思い出した。
今までの俺もそうだった、こんな風に本気になるまで分からなかった女の子の気持ち……、みんなごめんな、思いやれずに酷いことをしてきた俺への仕打ちだこれはきっと……。
自分と同じくらい最低な男に引っ掛かってしまった俺……。
「もういいだろ?どけよ」
静月の身体を押すと、今度は素直にどいてくれた。
ヤルだけやったら気がすんだのだろう、静月は満足気に自分の身なりを直すと、今度は俺の服のボタンを嵌めてくれる。
どうして何時もこうなるのだろう……、俺の身体は嫌になる程静月に従順だ。
顎を取って顔を上向きにさせられると、唇に触れるだけの羽根のようなキスをしてきた。
「良い子だから、大人しくしてるんだよ」
そして静月はさっきまでとは打って変わり、未だ俺の心を揺らす美麗な笑顔を零しながら、静かに部屋を出て行った。
勝手過ぎるだろお前、俺はお前の玩具じゃないぞ。
フラリと近寄って来ては、俺を振り回し遊んでどこか行ってしまう……、マジむかつく。
俺はお前なんか待たないからな!
クソビッチ!
俺は静月が出て行ったドアに向かって悪態を吐いた。
でもその後、俺は後悔いっぱいで頭を抱えるのだった……。
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