3 / 141
第3話
ガラガラガラ……
3年5組の教室に入ると、直ぐに声を掛けてきた。
「おう! 龍臣~」
「また、龍臣と伊織と一緒だ~! 最悪!」
俺はクラス替えの掲示板を見て2人と一緒な事を確認してたが、そんな事をしてたのがバレるのが嫌で知らない振りをして側に行った。
「こっちこそ最悪~だぜ‼︎ 最後の高校生活がまたお前達と一緒だと思うとな」
「そう言う割には嫌な顔してないけど?」
「お前達に気を使ってんだよ~」
いつもの俺達の会話だ。
楽しそうに話す俺達をクラスの奴らは好奇の目で見てた。
俺が親しげに話してるのが珍しいんだろうな。
祐一と伊織と一緒のクラスで良かった。
こいつらとは編入した時に同じクラスになり、祐一がたまたま近くの席で何かと俺に話し掛け、始めは素っ気ない態度をとってた俺も毎日.毎日凝りもせずに話す祐一と、徐々に話すようになると、俺の事を胡散臭く見てた伊織も話すようになった。
去年の文化祭で、クラスの出し物のお化け屋敷をする時にも「お前、図体デカいし人相悪いからフランケンやれよ‼︎」「似合い過ぎ~!」「誰がやるか~‼︎ お前がやれよ!」と、冗談言ってクラスの輪に入れようとしてくれ、少しずつ他の奴らとも話すようになり学校が初めて楽しいと思った。
こいつらのお陰だ‼︎
また、楽しくなりそうだと心の中で思ってた。
ガラガラガラ……
「はい‼︎ 席に着いて」
ガタガタ……担任が入って来たのが解り、顔も見ずに席に着いて教壇を見た。
俺は驚いた‼︎
やはり、ここの教師だったのか?
あの時の……。
俺が睨みを効かせても、怯む事なくジッと見返した目が忘れられなかった。
印象的な目で……俺の心の中までも見ようとするかのような目だった。
あの後、どうしても忘れられずに教師だろうと思い探したが、どこにも居なかった。
事務局の奴か?と思い、事務局にも用も無かったが見に行ったがやはり居なかった。
どこを探しても見当たらず名前すら解らず誰にも聞けなかった。
その内に春休みになり今日まできた。
なぜ気になるのか?もう1度会いたいと思った人物が目の前に居る。
あの時は、良く見なかった顔も明るい教室で良く見えた。
あの時に、ジッと見つめられた目は今は涼しげな目元が印象的で、笑うと少し垂れ気味になり優しい雰囲気が滲み出てた。
スッと鼻筋は通り薄い唇。
日本的な美人系だな。
「皆んな、席に着いたね。今日から、このクラスの担任になった芳村優希です。去年は1年生を受け持ってたから、余り皆んなとは関わりが無かったが、これから1年間宜しく‼︎ 出席取るから、返事するように。顔と名前を確認したいから」
そう言って教壇から下りて出席をとって歩く。
1年生を担任してたのか~。
だから、会わなかったのか。
校舎が違うからな、盲点だった。
旧校舎で会ったから、てっきり2.3年の教師か?と思い込んでた。
姿勢良く歩き、男にしては低くない心地良い声を発する。
俺はいつも通りダラシなく机から片足を通路に出して居た。
「海堂龍臣」
「あっ、はい」
俺の横を通り過ぎる時に、投げ出した足を踏んで通り過ぎようとした。
「いってぇ~!」
「あれ?何か踏んだかな?」
白々しい言い方で話す芳村にムカつく。
「俺の足を踏みましたけど?」
「あっ、ごめん.ごめん。足だったの?気が付かなかった~」
「嘘つけ‼︎」
「長い足を自慢したいのかも知れないけどね。お行儀良く机の中に足は入れようね?」
子供に対する口調であからさまに子供扱いされ、ムッとした。
そうなると伊織がニタニタ…笑い「たっちゃん、良い子だから、ちゃんとお座りしましょうね」と揶揄ってきた。
このヤロ-。
その光景を見て祐一も声には出さず口パクで「たっちゃ~ん」とニタニタ…笑う。
祐一までムカつく!
「誰がたっちゃんだ! 誰の事を言ったんだ⁉︎」
「やだぁ~、たっちゃんに決まってるでしょ~」
伊織は俺が睨んでもどこ吹く風で平気で揶揄う。
「はい.はい‼︎ 止め~! 成宮も海堂もお終い!」
そう言って俺の頭を撫でようとした。
「痛った~。海堂の頭は凶器か?」
「はん‼︎ ワックスで立たせてんの! 」
「ふ~ん、お洒落なのか。ま、いいや」
そう言って次の奴の点呼を取り歩く。
伊織がニタニタ…「凶器.凶器‼︎ 立たせてるのは、頭だけじゃないだろ?獣‼︎」と、俺に聞こえるように揶揄う。
それを聞いてた祐一はニタニタ…またもや笑う。
くっそぉ~伊織の奴~。
そう思ってるとパコッ! 伊織が芳村に頭を出席簿で叩かれてた。
ざま~みろ‼︎
俺はニヤッと笑った。
芳村の俺に対して、他の奴らと分け隔てなく接した態度に心惹かれた。
そして…あの目にも‼︎
俺の者にしたい‼︎
絶対、俺の者にする‼︎
俺の動物的直感がそう言ってた。
ともだちにシェアしよう!