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第4話
朝のHR(ホームルーム)と国語の授業.帰りのSHR(ショートホームルーム)で、芳村と会えるのが楽しみで仕方無かった。
芳村の姿を見て心地良い声を聞き話す内容に耳を傾け俺の1日が始まる。
今も、朝の連絡事項を話し教壇に居る。
芳村の姿を見ながら、ここ1週間芳村の動向を探ってたが、職員室にも殆ど居ない事が解っただけで、後はさっぱり解らない。
俺のダチは伊織と祐一ぐらいで他に聞ける者は居ない
やっぱ、俺だけじゃ情報収集は無理か。
割と誰とでも話す要領の良い伊織と自分が気になる相手にしか興味無い特殊な性格の祐一だが……ここは祐一に頼むか?
あいつの情報収集能力は凄いからな。
たまに、寮に忍び込んでる事を俺は知ってる。
ここは東京でも街から離れてる。
家から通える者は通学してるが、最寄り駅から普通のバスだと1時間に1~2本の為、学校専用バスが朝と帰りにも決まった時間に数本出てるが不便だ。
伊織と祐一は通学組だった。
半数以上は地方からだったり、俺みたいに何らかの事情で親元を離れて寮に入ってる。
寮も6畳でシャワーとトイレ付きの1人部屋で、寮では飯は出るし大浴場と娯楽スペースもあるし、スマホやパソコンが有れば何も不自由は無い。
祐一が寮の部屋から出て来る所を何度か見た事もある
毎回違う部屋だが……何人か.そう言う関係の奴が居る事は薄々知ってた。
そこで情報収集してる事も何となく解ってた。
祐一は聞かれ無ければ余計な事は話さないし、どっちかと言うと秘密主義って言うか.寡黙って感じだが、そう言う裏事情とか情報収集は好きらしい。
言いふらしたりしないが、聞くと良く色々と知ってる
やっぱ、祐一だな。
伊織には無理だろうな。
あいつは恋愛には淡白って言うか.付き合っても半年も保たない。
その癖、あいつはモテるから次々と相手を変え、決して本気になる事はない。
不特性多数で本気にならない伊織とセックスフレド数人の祐一と、どっちがマシなのか?
どっちも最悪かもな。
俺も人の事は言えねぇ~か⁉︎
そんな2人に、この俺が芳村に興味があると知ったら……いや、惚れたと知ったらどう思うんだろうな。
驚いて、冗談だろ?と笑い飛ばすかも知れない。
その姿も面白いかもな。
俺は数日中に、祐一と伊織に話し協力を求める事に決めた。
その週の金曜日に、寮の俺の部屋に内緒で泊まる約束を取り付けた。
学校から一旦家に帰り、酒やつまみを持ち込み寮に忍び込みんで来た伊織と祐一を部屋に入れる。
まあ、男子寮だし誰が入っても年老いた管理人夫婦には誰が誰か解りゃしないが、一応忍び込む形で寮に入るのが暗黙の了解だった。
歳を取った管理人夫婦は寝るのも早く、大きな騒ぎが無い限り起きる事は無い。
「久し振りに、龍臣の部屋で飲むな~」
ビ-ル缶を開けグビグビ…飲み「ぷは~」と美味そうな顔で話す。
グビグビグビ……
「お前らって、寮に忍び込んでも俺の部屋には挨拶も無いもんな」
チクリと嫌味を言うと、伊織は頭を掻き祐一は知らん顔だ。
「お前の部屋に顔出して、セックスの最中だと悪いと思って気を使ってるんだよ」
「…………」
適当な言い訳をする伊織と無言を貫く祐一とで、性格が出てる。
グビグビグビ……始めはたわいも無い話しを肴に酒を飲み話す。
其々が2本めに手をつけた頃に、祐一が口火を切った
「それで?今日は何で俺達を呼んだんだ?何か話しが合ったんだろ?」
「何?話せよ。ここ最近変だぞ」
2人共、気が付いてたのか。
祐一は人間観察が好きなだけあって鋭いが、伊織はそうでも無いと思ってたが……。
伊織は広く浅くの付き合いをするが、誰とでも話すが深入りはしない。
祐一は人間観察は好きだが基本的には人に興味が無い逆に言うと興味惹かれた人には深く付き合う。
俺は家族以外の他人は信用して無いが、この2人だけは、信用出来ると思ってる。
そう思うきっかけがあった。
編入して来てから少しずつ話し一緒に居る時間が多くなり、俺もこいつらと一緒に居るのが楽しいと思い始めてたが……それと同じ位に怖かった。
噂では知ってるかも知れないが、俺の家がヤクザだと本当の事を知ったら、今までの奴らと同じ様に離れて行くかも知れないと思った……だったら、傷が浅い内に、こっちから言おうと打ち明ける事にした。
離れたら離れたで仕方ない!
こいつらが悪い訳じゃない!
そう言い聞かせ、思いきって真実を話した。
「俺の実家は……ヤクザ家業をしてる」
「……噂には聞いてた」
「俺も」
「そうか。怖く無いのか?」
「ん~、龍臣の事は俺は面白そうだと思ったし、何かありそうな奴だとは思ってた」
「俺は祐一が珍しく興味持った奴だったし、最初は胡散臭い奴だなって目つきも悪いしな。ちょっと警戒してた。でも、話してたら案外良い奴じゃんって思った」
「ありがと。でも……俺に関わると色々言われるかも知れない」
「俺は別にそんなのは誰に何て言われてもどうって事ない。俺は俺が興味ある人としか付き合わないからな」
祐一らしいと思った。
「今は家とか関係ねえ~じゃん。俺達は学生だぜ。俺は龍臣をダチだと思ってるし。ま、社会人になって、お前が家業を継いでヤクザになってたら付き合いはどうなるか解んね~けどな。そんな先の事より今を楽しもうぜ」
正直な気持ちを話すのが伊織だなと思った。
そうだな、今は学生だ。
先の事を考えるより、今はこいつらと楽しい学校生活を楽しもうと思えた。
俺の実家の事を話しても、そう言ってくれるこいつらに出会えた今を大事にしよう。
「ありがと~な」
照れ臭く、つい愛想無く言っても ‘解ってる’ って顔で居てくれた。
「お前が正直に家の事を話してくれたから、俺達も秘密って程じゃないが話すよ」
良いだろって、祐一の顔を見て伊織が言った。
「?」
「俺達はゲイだ。まあ、ここは男子校だし、中にはそう言う奴は居るし女に興味があっても女は居ないからな、女の代わりに男同士で擬似恋愛してる奴も居る。だが……俺達は正真正銘のゲイだ。龍臣が気持ち悪いとか思うなら……俺達にはどうにも出来ない」
「そう言う事。俺は別にゲイだと言う事は言いふらしたりして無いが…伊織も自分からは言って無いけど。こいつは結構オ-プンにしてるから言わなくても解るみたいだ。そう言う奴らが伊織には寄って来て食べまくってるからなぁ~」
「仕方ねえ~だろ。俺からは誘ったりちょっかいも掛けてねぇ~。あっちからモ-ション掛けて来るんだからなま、据え膳は頂くって主義だ」
「雑食‼︎」
「はあ?これでも見た目は重視してる!」
何だか重大な秘密を打ち明けられたが……バカな言い合いをしてる2人を見てどうでも良くなった。
はははは……はは…
「何だかゲイとかどうでも良いって感じだ。お前達の人間性が1番だ。ただし、俺はゲイじゃないから俺には期待するな」
俺がそう言うと2人は目を点にし、そして笑い出した
くっくっくっくっ…
はははは…はは…
「幾ら俺でも、お前じゃ無理‼︎ 勃たねぇ~って」
「俺も、こんな大男に挿れる気しねぇ~」
今度は……俺が目が点になった。
「おい‼︎ 俺に挿れるつもりか~」
「「俺達、タチだからな‼︎」」
「俺も無理だ~」
そう言って3人で大笑いした。
その時、こいつらだったら何でも話せる信用出来ると思った。
こいつらに出会えて良かったと思った。
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