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第5話
「お~い! 何、考え込んでるんだ?言い難い事か?」
物想いに耽ってた俺は伊織の声でハッとした。
「悪い.悪い。実は、お前達に協力して貰いたい事があってな」
「何?お前が俺達に頼み事なんて」
「気になるなぁ~」
興味深々の2人を前にグビグビ…ビ-ルを流し込んで一息ついた。
「俺……どうも、芳村に惚れたらしい」
「「…………」」
少しの沈黙の後に
「「はあ~~‼︎ 芳村って、俺達の担任の?芳村?」」
「デカイ声出すな!って。そう、俺達の担任の芳村だ‼︎」
「な、何で~~また芳村何だよ~」
「そんな事言ったって、惚れたもんは仕方ねぇ~だろ。強いて言うなら、あいつの目だな。それに容姿も男にしては良いし……あいつの誰にも分け隔て無く接する所が良い。大概の先公は俺にビビって辺り触り無く接するか.関わらない様にする。けど、芳村は初めっから俺に対しても普通だった」
「まあ、芳村ってそんな感じだけど……担任だからじゃねぇ~」
「いや、今までの担任は全員そうじゃ無かった」
「伊織、惚れた龍臣にしか解んねぇ~事だ」
「まあ、そうだけど……先生って、ヤバく無いか?まだ、学生同士なら学校も見て見ぬ振りしてるが」
「そこだよ‼︎ それで、お前達に協力して欲しいって訳」
「そうか」
「解った‼︎ けど、お前も変わったよな~。編入して来た頃には、寮抜け出して女の所にヤリに行ってたのになぁ~」
「そうそう。それが今じゃ男もありなんてな~」
「まあな。それまでは女しか抱いてこなかったしな。男なんて考えても居なかったが……お前達に感化されたか?この学校の風習に染まったのか?解んねぇ~けど。まあ、1番は寮を抜け出すのが面倒臭くなった事だな」
確かに、伊織が話す様に編入して3ヶ月程は親父の店のキャバ嬢をタクシーで呼び出し(親父には内緒で)ヤリに行ったり、舎弟を車で待たせ夜の街に行き女を抱いたりとしてたが、段々と寮を抜けるのが面倒になり寒くなってきたのも要因だった。
それから伊織達がゲイと解り、ここの風習も解り男でも代用出来るなら、そっちの方がいつでもデキルし楽じゃねぇ~か?と思い始めた。
「そんなに男って良いのか?」
何となく伊織に聞いたら「女より嘘が無いし割り切った付き合いが出来るしな」「女とはシタ事ねぇ~けど、時間掛けたりとかの面倒臭ささが無いし楽だ」と話した。
俺もヤリ方だけは知ってたが、そんなものなのか~と実体験に基づいた話しを黙って聞いてた。
「何~、さては興味出てきたのか?」
伊織には揶揄われたが、正直に寮を抜け出すのが面倒だと話すと「1度シテ見ろよ。何事も経験だ」と、数日後には、伊織がお膳立てしてくれ、初めて誘われた時には躊躇してたが、男の性なのか?刺激されれば勃ちヤレバデキル事が解り、女の柔らかさも胸も無いが挿れれば男も女も関係無い。
胸への楽しみが無いが、締め付けは女より良い。
俺が男ともデキルとそっち方面の奴らに水面下で知れ渡ると、相手には不自由しなかった。
それからは寮でも学校でも誘われればスルようになった。
男子校ならではの性欲処理だ。
どうせここに居る時だけだし、もし社会に出ても2倍楽しめるから良いか?位にしか考えて無かった。
確かに、変わったな。
「んで?何を協力すれば良いんだ?」
「あっ、ああ。芳村の動向を知りたい。空き時間や昼休み.放課後とかな。どうも職員室には殆ど居ないようなんだ。あとは……そうだな~、付き合ってる相手が居るか?とか、芳村の周りの人間関係とかな」
「放課後は週に何回か、図書室の司書室とかに居るらしいぜ。委員会の顧問らしいからな」
「だから、職員室には居ないのか」
「それも知らなかったのか?」
祐一や伊織みたく俺にはこいつら以外は殆ど用が無ければ話す相手は居ない。
こいつらが居れば他の奴らも話したりするが、俺個人に話し掛ける奴は皆無だ。
「悪かったな。だから、こうやって頼んでるんだろ」
「仕方ねぇ~な。こう言うのは祐一の方が得意だが、俺も少しは探ってみる」
「何だか面白そうだな。ま、情報収集はしてみる」
「探偵みたいだな」
「だな」
楽しそうに笑いグビグビ…ビ-ルを飲む2人の協力は得た。
「それにしても教師とはね~。んで、俺達から情報を得て、その後はどうするんだ?」
「……まだ、先は考えて無いが……生徒としか見てない芳村に俺を意識させるようにはするつもりだ」
取り敢えず、行った事も無い図書室に行ってみるか。
平等に扱う生徒達の中で、一歩抜き出て印象を与え無いと話しにはならない。
「ま、頑張れ!」
「やるだけやれば良い。それでダメなら諦めもつくだろ」
「まあな」
そうは言ったが、初めて俺から惚れた相手だ。
ダメでも諦めがつくか?は、疑問だ。
教師と生徒.男同士.年齢差と色々問題はある。
だが、障害が多ければ多い程……芳村を俺の者にしたい!
必ず、俺の者にする‼︎
俺達は朝方まで飲み……次の日は休みもあって、グダグダ…寝て過ごした。
こう言うのも青春だろう。
俺はこの学校に編入して来て、初めて学生らしい青春を過ごしてた。
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