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第6話

俺は早速行動に出た。 祐一が言ってた図書室に放課後に何度か行って見る事にした。 席で本を読んでる者や本棚を物色し選んでる者がチラホラ居たが閑散としてる。 図書委員らしい2人がカウンター内で小さな声で芳村と話してた。 「今日は居た」 何度か通ったが居ない時もあり、落胆して図書室を後にしたりもしてた。 本を選ぶ振りしてカウンターをチラッと見たり、移動しカウンターが良く見える所から観察してた。 何やら楽しそうに笑顔で話す芳村と委員の2人。 良いなぁ~あいつら。 芳村と親しげに話す2人が羨ましい。 図書委員の顧問と知ってれば…… ‘俺も’ って思ったが3年生は委員会活動は無しだった。 適当に本を手に取っては戻しを繰り返し様子を伺ってると、室内を見回した芳村とたまたま目が合った。 俺は直ぐに目を逸らし、素知らぬ顔で適当に本を手に取りパラパラ…目を通す振りをした。 「海堂?図書室に来るなんて珍しい~ね」 芳村が小さな声で話し掛けてきた。 よっしゃ~~‼︎ 芳村から話し掛けてきた事に、心の中で喜んだが顔には出さない。 「まあな。今までは何だか来る機会が無かったが……夜、眠れねぇ~から本でも見ようかと思ってな」 俺が適当に手に取った本を覗き見て 「海堂って、そんな本を読むのか?」 そう言われて自分の持ってた本の題名を見た。 『高血圧の予防策』 ゲッ! ここからならカウンターが良く見えると思った場所は生活本や料理本などのコ-ナ-で、適当に手に取った本がそんな本だった。 直ぐに、元に戻し言い訳した。 「いや、親父が高血圧だからな。ちょっと見ただけだ」 「そうか。親思いなんだな」 誤解されたがそのままにした。 「で、どんな本が好きなんだ?」 う~~、余り本は読まないが……。 「そうだな。推理小説が多いかな?後は…映画なんかになってる原本とか、ミステリーとかかな」 「ふ~ん、結構読んでるじゃないか」 「なあ、芳村のお勧めって何?」 「コラッ! 芳村先生だろ!」 10cm以上違う俺の頭を叩きにくそうに笑いながら叱る。 それから芳村がお勧めの推理小説を2冊程手に取り、カウンターに一緒に行き初めて図書室で本を借りた。 芳村はそのままカウンターの委員と少し話し、奥の司書室に向かった。 俺は図書室を出て、芳村と思いがけずに話しができた事が嬉しく、芳村が勧めてくれた本を片手に廊下を歩いた。 今日から、少しずつこの本を読んで芳村と話すキッカケにしようと心に決めて居た。 それからの俺はちょこちょこと図書室に顔を出し、芳村が月曜日と金曜日に来る事が大体解った。 俺もそれに合わせ顔を出すと、芳村も俺に気が付くと話し掛けてくるようになり、芳村が勧めた本の話しをしたり世間話までする位には親しくなった。 それ以外にも伊織と祐一も情報収集をしてくれて解った事があった。 学校の中で親しくしてる教師は林と酒井らしい。 この学校では、若い教師の部類で良く話す仲と言う事だった。 3人の中でも芳村が1番若く、後は酒井.林の順だ。 芳村と酒井は独身で、林は既婚者だった。 確かに3人で話してる時が多いが、林が芳村に話し掛けてる姿も良く見る。 俺はどうしても林が気になり、祐一に林の事を情報収集して欲しいと頼んだ。 「この学校で若い教師は数人しか居ないんだから、良く話すのは当たり前だろ。それに林は既婚者だぞ。気の回し過ぎだ」と言われたが「何でも無ければ、それに越した事は無い」と一応頼んだ。 それにはちょっとした気掛かりがあったからだ。 芳村と林が話してる場面をたまたま遭遇した。 「芳村先生、今度飲みに行きましょうよ」 「林先生、奥さん確か妊娠なさったんじゃ?そんな時に飲みに行って良いんですか?側に居てあげて下さいよ」 「1日位、大丈夫ですよ。それに、そろそろ安定期に入るはず」 「でも、奥さんに申し訳ないですから、無事に生まれて落ち着いたら、酒井先生も誘って行きましょう」 そんな会話が聞こえ、しつこく誘う林が気になった。 林が男に興味があるとは噂に聞いた事が無いが……やたらと馴れ馴れしく触りしつこい林が気になった。 林は体育教師でサッカー部の顧問をしてる体育会系でこの男子校でも割と人気がある教師だ。 そんな事を頭に浮かべ考えてると祐一が話し出した。 「それと……芳村には…彼女が居るらしい」 「………そうか」 「付き合って1年程らしいが……」 「………そうか」 祐一が言い難そうに話す傍らで、伊織が思ったままを口にする。 「それなら龍臣に勝ち目はねぇ~じゃん。彼女持ちだろ。無理.無理」 年齢的にも、あの容姿なら彼女が居てもおかしくないと思ってたが……実際に聞くと、やはりショックだがその傷をえぐるように話す伊織を睨む。 ギロッ! 「お~~こわ~! でも、本当の事だろ~が。で、彼女持ちって聞いてどうする?」 「……-奪う‼︎」 ‘あちゃ~~’ って顔と ‘やっぱりな’ って顔をした2人。 「ま、頑張れ!」 「やるだけやれば諦めもつくだろうし、協力はしてやる」 励ます2人に救われた気がした。 彼女の事は取り敢えず置いといて……。 今は、学校で芳村に不埒な行いをしようとする者は排除しないとな。 そう考え、改めてまた2人の協力を頼んだ。 そして俺は俺で芳村との距離を少しずつ詰めていく事にした。

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