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第7話
祐一の情報によると、図書室以外で国語準備教務室に入り浸ってると聞き、俺は早速昼休みに行って見る事にした。
ガラガラガラ……
「よう! 芳村~」
「海堂⁉︎ ノック位しろ!」
「へ~い」
「返事は ‘はい’ だろ! ったく!」
教務室に入ると、芳村の他に1人生徒が居た。
見た事ねぇ~な。
俺が来た事で慌てて
「あっ、それじゃ俺はこれで。ありがとうございました」
「須賀、解らない事を教えるのは構わないが、教科担当の先生に聞いた方が良いぞ。その方が印象も良いしな」
「解ってるんですけど……芳村先生の方が解り易いから」
「嬉しい事を言ってくれるな」
そう言ってそいつの頭を撫でると、そいつも嬉しそうな顔を見せた。
「じゃあ、お邪魔しました」
爽やかに俺の横を通り過ぎて入口でお辞儀をし出て行った。
随分、お行儀が良い奴だ。
「誰?」
「ああ、須賀って言って去年担任だったんだ。今は2年生だな。私が新校舎でも教務室に居るのを知ってたからな、旧校舎でも居るんじゃないか?って。解らない所を教えて欲しいって、ここに来てたって訳だ。で、海堂もどこか解らない所でも?」
「いや……ちょっと寝かせてくれ」
芳村の使ってる机と椅子の他に、本棚とソファとその前にテ-ブルのある部屋を見て咄嗟に言った。
「寝に、来たのか?」
俺は勝手にソファに横になり、クッションとソファの背に掛けてあった毛布を掛け寝そべった。
「おい! 勝手に……ったく! 仕方無いなぁ~」
「昼休み終わる前に起こしてくれ」
「解った.解った。所で、何で寝不足なんだ?理由によっては出てって貰うからな」
「昨日の夜に、芳村に勧められた推理小説読んでたら止まんなくなった」
「………仕方ない。5分前には起こすからな!」
「へ~い」
芳村は椅子に座りカチャカチャ…パソコンを打ち仕事をしてた。
毛布から微かに芳村の匂いがする。
「なあ、芳村。芳村もここで寝たりしてんの?」
「何で?」
「毛布もクッションもあるから」
「内緒な! 空き時間が長い時とか、たまにな」
「ふ~ん」
やっぱり芳村の匂いだ。
本当に昨日は、芳村の勧める推理小説が面白くなり寝不足だった。
始めは、芳村との話すきっかけにと思って借りた本だったが、感想を聞かれたらヤバイと読んでるうちに面白くなった。
寝不足もあり、直ぐに俺は芳村の匂いに包まれて深い眠りに就いた。
「おい! 海堂! 海堂って。起きろ!」
体を揺らされ、俺を呼ぶ声で起きた。
「ふぁ~~! よく寝た~~」
あのまま寝たのか?芳村の匂いって落ち着く。
俺の側に居た芳村は怪訝な顔をして
「よく寝た~~じゃないよ。後5分で昼休みも終わりだ早く教室に行けよ」
「へ~い」
ソファから起き上がり、背伸びをし返事を返した。
「真っ直ぐ教室に行く事‼︎ 寝たんだから午後の授業は捗るな?」
教務室を出る前に「嫌味か~~」と言って笑い、部屋を後にし伊織と祐一が待つ(?)教室に向かった。
それからの俺の行動は月曜日.金曜日の放課後は図書室に行き、水曜日か.木曜日の昼休みには教務室に行くのが日課になった。
芳村との距離を少しでも縮めようと、俺は行動に移した。
芳村とは関係なく、偶に昼休みに誘われた時には屋上や空き教室などでセックスし、寮でも誘われた奴とセックスしてた。
この時の俺は心では芳村を欲してたが、性欲旺盛の若い体を持て余し誘われたらヤルって感じだった。
芳村に対しては、体より心を欲してた。
体だけの関係なんて直ぐに終わる。
俺は芳村とは、そんな危うい関係では終わりたくない
芳村の心が欲しい‼︎
何度か昼休みに教務室で過ごしてる内に芳村も諦めたらしく、俺はいつも通り勝手にソファで毛布に包まり昼寝をしてると、コンコン…と小さな音がした。
「入れ」
ガラガラガラ……
「芳村先生。また、解らない所があるんですけど…」
「須賀? 良いけど、どこ?」
スタスタスタ……
芳村が座ってる側に立ち、教科書を机に置き2人で覗き見て話してる。
「oxoxxoxxoox…… oxoxoxxo……」
「oxoxoxox……oxoxoxox」
須賀?
前に、ここで会った去年担任だった生徒か。
須賀の質問に、芳村は解り易く丁寧に解説して教えてた。
芳村が机に向かい座ってる横で立ち、上から芳村を見てる須賀の姿が毛布の隙間から見えた。
熱心に教える芳村……そして須賀は芳村をジッと上から見て……手が動き、芳村の髪を触ろうとしてた。
「ゴホッゴホッ」
咳き込む俺に気付き、須賀は芳村の髪を触ろうとした自分にハッとし素早く手を下ろした。
「先生、誰か居るんですか?」
毛布を頭から被ってるから、誰かは解らないようだ。
「ああ、ちょっと具合が悪い生徒を休ませてる。気にしなくって良い」
そう言って、また解説を始めた。
暫くすると「ありがとうございます。やはり先生の教え方が1番解り易いです」と爽やかに話す。
「まあ良いけど、この間も言ったけど教科担任に聞いた方が良いよ。私は構わないが……私に聞きに来てる事を知ったら、教科担任も良く思わないからね」
「すみません。解っては居るんですけど」
シュンとする須賀に対して、椅子から立ち上がり頭を撫で「まあ、頻繁じゃなければ。須賀も頑張ってるしね」と笑顔を見せた。
須賀も笑顔になり「ありがとうございます」と言って嬉しそうに部屋から出て行った。
俺は寝た振りをし考えてた。
あの須賀って奴、芳村の事が好きなのか?
いや、まだそこまでは……って感じか?自覚が無いのか?
憧れ?それとも気になる?
爽やかなスポーツマンタイプでモテそうだが……芳村に対して無意識に髪を触ろうとしたりしてたが、少しの躊躇もあったように見えた。
まだ、そこまで男に対して一歩踏み込めないって感じか?
それとも芳村を恋愛対象として見てる自分に気が付いて無いのか?
潜在意識の中で、男子校に染まってしまうのに嫌悪感を持ってるのかも知れないな。
だから、一瞬の躊躇いと思い止まったのか?
男子校だからって、皆んなが皆んな同性を好きになる訳じゃないし遊びの者も居るし、逆に嫌悪感を持ってる者も居る。
須賀がどうなのか?まだ解らない。
少し祐一に探って貰うか。
俺は芳村が起こすまで、寝た振りで考え事をして過ごした。
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