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第8話

「明日からGWに入るからって、羽目外さないようにな。あと、寮生で申請してない者は速やかに帰省するように。それと帰省した際には、良くご両親と進路の話しをするようにな。以上。じゃあ、元気で、GW明けに会おう」 年に一度GW中に、機械のメンテナンスや清掃業者が入る為に、基本的に寮には居られない。 夏休みや冬休みはスポーツ推薦で入学した生徒や部活が強い所は、お盆休みや正月休み以外は部活する為に学校側に申請出せば居られるシステムだった。 帰りのショートホームルームが終わり、明日からGWで芳村とも1週間程会えなくなる。 我慢するしかねぇ~な。 芳村が教室から出て行くと、直ぐに俺の席に伊織と祐一が集まって来た。 「明日からGWだなぁ~」 「お前、寮出なきゃなんねぇ~んだろ?実家に帰るのか?」 「ああ、実家に帰る」 別に、実家の両親と仲が悪い訳じゃない。  どっちかつーと極道やってるだけあって、細い事は言わねぇ~し信頼もしてる。 「あっ、それと諸々の件、もう少し待てよ。色々情報集めてる最中だ」 祐一に頼んでた体育教師の林と2年の須賀の身辺情報だ。 「悪いな。まあ、GWに入るし解り次第で良いが頼む」 「了解!」 祐一の情報収集は凄い。 こいつは俺達以外には一線を引いて人付き合いをしてるが……セックスフレンドが何人か居るのは知ってるそいつらから情報を得てるようだ。 こいつに任せるのが1番信用出来る。 「それで芳村と1週間会えなくって大丈夫か?たっちゃん、寂しい~~ってか?」 俺を揶揄う伊織は楽しそうだ。 「仕方ねぇ~だろ。今はまだ個人的には会える程の間柄じゃねぇ~し。こう言うのは、少しずつ回りを固めて攻めていくしかねぇ~~」 「ま、頑張れ~~。寂しかったら、俺が遊んでやるぞ」 くっくっくっ…… 「はあ⁉︎ 冗談だろ。お前の尻に突っ込めるかっ‼︎」 「バカヤロー! 俺は突っ込むの専門‼︎ 俺が突っ込んでやろうか?案外、体験してみると、そっちの方が向いてんじゃねーの」 「誰に向かって言ってんだ‼︎ このヤロー!」 冗談から取っ組み合いの喧嘩になりそうな所で、祐一が呆れて止めに入った。 「まあ.まあ‼︎ 下らない事で揉めるのは、止めろって!」 伊織と2人で、互いの襟を掴んでた手を離す。 「どうしても突っ込まれたいなら、俺が2人纏めて突っ込んでやるから」 くっくっくっくっ…… 「「てめ~~だけは、絶対にやだ‼︎」」 お互い口を揃えて言い、顔を見合わせて笑ってしまった。 くっくっくっくっ…… はははは…… やはり、こいつら面白れ~~‼︎ 「お~い、成宮! 呼んでるぞ」 教室の入口で、伊織を待ってる奴が手を振って居た。 「さてと、俺は帰るかな。じゃあな」 「おう、またな」 「お疲れさん」 鞄を持って入口で待ってる奴に声を掛けて2人で帰って行った。 「全く、良くやるぜ、伊織の奴! どうせ、どっかでセックスでもして帰るんだろ」 祐一の話す事はご最もだ。 誰にも本気にならない伊織だが、何故か?付き合う相手は事欠かない。 それでも浮気はしょっちゅうしてるし、相手も了承済みだと言うから凄え~~。 「伊織だしな」 祐一と顔を見合わせプッと吹き出した。 寡黙と言われるこいつだが、俺達の前だと結構感情を表し笑ったりする。 「でもよぉ~、伊織って、付き合う癖に誰にも本気にならねぇ~じゃねぇ~か。それだったら相手に希望持たせないように、誰とも付き合わないで遊んでた方が良くねぇ?」 俺は面倒だし、男とは遊びだとはっきり解るようにしてる。 相手も、そのつもりで俺を誘う。 お互い遊びだ、その方が気楽だと思うが。 「まあな、伊織って、何やかんや言っても優しいからな。誤解する奴は居る。付き合ってるうちに、本気になってくれるかもって淡い希望持つ奴もな。本人はそのつもりはないらしいが、変な優しさは罪作りだと思うけどな。結局は、気が向かない誘いを断るのに都合良かったり寂しいんじゃねぇ~の。まあ、モテるからな。俺的には、龍臣みたいに遊びって解る態度の方が相手にも変な希望持たせないからそっちの方が良いと思うけどな」 本当に、こいつは人の事を良く見てる。 観察能力は抜群だな。 「だよな」 「話し変わるけど、今日帰るのか?」 「いや、明日帰るつもりだ。バタバタするの嫌だしな」 「そうか。じゃあ、今度はGW明けだな」 「おう」 祐一も鞄を持ち教室を出て行った。 さてと、俺もGW前に芳村の顔でも見ておくかな。 暫く会えないと思うと会いたくなる。 俺はいつも芳村が居る教務室に向かった。 ガラガラガラ…… 「お~い、芳村居るか~」 「海堂! 何度言ったら解る?芳村先生だろ⁉︎ あとな~、ノックしろ.ノック!」 「へ~い」 「返事は ‘はい’ だ‼︎ ったく! 何度言っても解らん奴だな~」 顔は怒った風だが呆れてるのか?諦めてるのか?目が笑ってる。 「で、何の用だ?」 俺はいつもの定位置のソファに勝手に座らず、芳村の机の前に立った。 「ん、どうした?家には、これから帰るのか?」 「いや、バタバタしたくねぇ~から。明日、帰る」 「そうか」 何か話題ないか? 顔が見たいだけで、ここに来たからなぁ~。 何も考えて無かった。 「海堂、進路の件良くご両親と相談しろよ」 俺の家が特殊な所為もあり、芳村が気に掛けてくれてるのが解った。 まあ、担任だからっつーのもあると思うが、それでも気に掛けてくれる気持ちが嬉しかった。

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