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第9話

「ああ」 「何だか、怪しい返事だなぁ~」 頭をフル回転させ良い事を思いついた。 「芳村、その進路の件で……親と喧嘩した場合…」 「喧嘩なんかするな! 良く話し合えば解るはずだ」 俺の将来は、俺が嫌だと言っても既に決まってるのも知らずに、芳村は俺が迷ってると勘違いしてるようだ そこにつけ込む俺は外道だが、他の選択肢は無い。 「そのつもりでは居るが、あっちの態度次第だな。それで揉めた時に、芳村に相談したいんだが……携番教えてくんね?他に相談出来る奴居ねぇ~し」 芳村は顎に手を当て考え込んでる。 「なあ~頼むよ! これで拗れたら家にも居られねぇ~」 必死さが伝わったのか?俺の目をジッと見て溜息混じりに話す。 俺の心の奥を見るようなそんな目に惹かれる。 「……本来は生徒には教えないんだが……お前の場合は……何かあったら相談しろ。教える代わりに誰にも言うなよ! 今回は特別だからな! 私用電話にバンバン生徒から電話入ると、休みの時も休んだ気がしないからな。いいな、他には教えるなよ!」 顔には出さずに、心の中でガッツポーズをとってた。 ヤッタ~~‼︎ 俺だけが知ってるって事か。 嬉しく叫びたい気持ちだったが、飽くまでも平然と返事した。 「ああ、俺も困った時に連絡するようにする。一応、芳村の携番聞いてるだけで安心するから」 「そうか。ま、進路の事でも他に困った事があったら連絡しろ! 事が大きくなる前にな」 「おい.おい。何だか俺が事を大きくしてるように聞こえるが?」 「物の例えだ。だが、GW中は大人しくしてろよ。繁華街とか気を付けろよ。目をつけられ易いんだからな」 確かに、図体はデカいし顔も強面だからな。 「へい.へい」 「こら! 返事は ‘はい’ だって言っただろ。ったく!仕方無い奴だ」 「良いから、早く携番教えて」 俺がポケットからスマホを出すと、芳村の眉がピクッと動いた。 「スマホは学校に持ち込み禁止だぞ!」 校則ではそうだが、皆んな持ってるのは暗黙の了解だ バレないようにしてるが授業中のLINEをこっそりしたり、休憩中や昼休みの時間は皆んなスマホを弄ってる 「今日は家から連絡あるかもって持ってただけ」 適当に誤魔化したが、芳村も誤魔化されてくれた。 「それなら…仕方ない。ほら、言うぞ。080(xxxx)xxxxだ」 カチカチカチ……芳村の携番を登録した。 ♪♪♪♪~…♪♪♪♪~ 芳村の電話が鳴ったが電話に出ない。 「それ、俺の携番だから。登録しといて。あと、LINEも教えてくんね」 俺の携番を登録しながら顔も見ずに返事する。 カチカチカチ… 「緊急用として電話番号は教えたが、LINEは必要無いだろ」 だめか⁉︎ この流れでLINEもゲットしようと目論んでたが…今回は携番ゲットしただけで良しとするか。 「解ったよ。ケチ‼︎」 「誰がケチだって~! 本来は教えない電話番号を教えただけでも有難いと思え‼︎」 「は~~い」 額に手を当て疲れた表情をし 「返事は短く‼︎ 小学生でも解ってるぞ」 「はい‼︎ 了解しました‼︎」 俺が元気良く大袈裟に敬礼すると、芳村はプッ…と笑い出した。 お~~! 元々優し気な雰囲気だが、笑ってる顔は目が垂れ更に優しく感じた。 良いな! 「なあ、芳村はGWはどうすんだ?」 世間話でもする振りで聞いてみた。 「学校にも何日か来ないと行けないし。あとは……プライベートな事は答えませ~ん」 くそぉ~誘導尋問には答えなかったか。 「プライベートって、デ~トとか?」 「まあな」 やはりそうか。 恋人は居ると聞いてたから想定内だが……やはり本人から聞くと堪える。 「へえ~どんな子?どこで知り合った?」 「プライベートは答えないって言っただろ?それに、そんな事聞いてどうするんだ?」 答えないか。 「いや、ただの世間話だ。芳村って秘密主義?それくらい世間話で答えたってよくねぇ~」 「秘密主義でもないが、聞いても面白くないだろ?それにお前と世間話してどうするんだ?用がないなら、もう寮に戻って荷物の整理でもしろ」 「へ~い。んじゃあ~GW明けな」 俺の返事に、仕方無いって顔で笑って 「元気でGW明けに会おう。気を付けて帰れよ」 「へ~い」 教務室を出て扉を閉めた瞬間にガッツポーズした。 やりぃ~芳村の携番ゲット‼︎ 廊下を顔には表さずに、気持ち的にはルンルン気分で歩いた。

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