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第14話
昼休みの時間に、昼寝をする振りして行ってた教務室には、ここ暫く行く事は控えてた。
放課後に図書室に行った時に、芳村は少しだけ図書委員と話し直ぐに図書室を出て行ってしまう。
それくらい忙しいって事なんだろう。
3者面談などで忙しそうにしてる芳村の所に行くのは悪いと思って遠慮してたが……やはり少しでも2人っきりの時間が恋しくなった。
今日は行こうと朝から決めていた。
毎日、朝礼や授業の時に芳村の声を聞き顔も見てるがそれでは皆んなと一緒だ。
どうしても他の奴らより芳村ともっと親しくなり、生徒と言う輪の中から抜きん出たい。
食堂で伊織達と昼食を取り教室に向かう途中で
「悪い! ちょっと行ってくる」
そう言って抜けて教務室に向かった。
「頑張れよ~」と背後から聞こえたが、何か誤解してるようだが無視だ。
たぶん彼奴らニヤニヤしてるだろうなと見ないでも解る。
俺が1人で行動すると直ぐにそう思ってる節がある。
まあ、強ち違うとは言えないが……今日は違う。
教務室に向かう途中で芳村の後ろ姿が見えた。
「よ.芳……」
声を掛けようとして止めた。
芳村は1人じゃなかった。
廊下で立ち話をしてる芳村の前には須賀が居て談笑してた。
少しの間黙って見てたが、須賀が俺に気が付いたようだ。
「芳村~」
俺はのんびり歩きながら声を掛けた。
俺の声に振り向き
「おっ、海堂。どうした?」
2人の側に寄り、須賀をチラッと見て
「芳村~、3者面談の事で話があるんだけど」
如何にも担任と生徒と言う風に装う。
「丁度良い。私も海堂に聞きたいことがあったからな」
今は俺達の担任なんだとこれ見よがしに、須賀には関係ない話をすると居ずらくなったのか?芳村に「じゃあ、先生。失礼します」礼儀正しく挨拶する。
「ん、またな」
そう言って肩をポンと叩くと嬉しそうな顔をして、一礼して去って行った。
俺と芳村は去って行く須賀を見送り、教務室に歩き出した。
ガラガラガラ…
教務室に入ると定位置のソファに座ると、芳村もいつもの椅子に座る。
「そう言えば、海堂がここに来るのは久し振りだな?で、海堂の話って?」
俺がここ何日か来なかった事に気が付いてたのか?
気にしてくれてると思うと嬉しかったが顔には出さない。
「3者面談のスケジュールって、もう出来てるのか?」
「ああ、出来てる。明日には、皆んなに渡すつもりだ」
「まだ間に合うなら、悪いが、俺の所は1番最後にしてくれないか?」
「そうか。私もそれを確認しようと思ってた。一応、親御さんからの要望日はなるべく反映してるつもりだ。海堂がいつまで経っても提出しないから、私の独断で1番最後にした」
俺の家が特殊だと言う事で配慮してくれたんだと解った。
「それで良い。サンキュー」
「それならそうで提出しろ。何度言っても空返事で」
「悪い。親父の都合が良く解らなかったから仕方ねぇ~だろ」
「そうか。なら仕方ないか。でも、他の提出物とか気を付けろよ。それも成績に繋がるからな」
「へ~い。なあ、芳村って林とか酒井と仲が良いのか?」
「何で、そんな事聞くんだ?」
「いや、世間話?」
「まあな、若い先生はそう多くないからな」
「ふ~ん、じゃあ、飲みにとかも行く仲?」
「そうだな。行くとしたら3人で行く時が多いなぁ~」
「へえ~、飲むと芳村ってどうなるの?」
「そんなに飲まないからね。別に変わらないと思うけど?」
「ふ~ん、林は?酒井は?」
一瞬だけ困った顔になったような気がした。
「ん~、酒井先生はお酒が強いからね、そう変わらないと思う。林先生は……前はそうでもなかったけど、体育会系だからかなぁ~。親しくなるとスキンシップが激しくなる…かな⁉︎ 内緒だぞ!」
「ふ~ん。そうなんだ」
ゴロっと、ソファに寝そべった。
「また、昼寝か?」
「ここのソファ寝心地良い~んだよ」
「仕方ない奴だ。5分前になったら起こすからな」
「頼む!」
「それが人に頼む態度か~」
仕方ないなぁ~って言う風に言い笑って話す芳村を盗み見て俺は目を閉じた。
パラパラ…パラパラパラ…紙を捲る音がする。
本を読んでるか?授業の準備でもしてるのかも知れない。
芳村の側は特に話しをしなくとも安らぐ。
さっきの須賀といい.林といい、そろそろ祐一達と話し合うか。
さり気なく世間話で聞いてみたが、芳村が2人で林と飲みに行かない訳が解った。
何度か酒井を含めて飲みに行った時に絡まれてベタベタ…触られたのかも知れないな。
俺は今週末にでも、祐一達と2回目の密談をする事に決めた。
もう少しだけ時間があるはず。
芳村が起こすまで、この2人っきりの時間を堪能しよう。
パラパラパラ…ガサガサ…
本を捲る音を聞きながら静かに流れる時間に眠くなり……そのうち寝てしまった。
その後に、芳村が近付き俺の顔を見て笑顔になり、毛布を掛けてくれた事には気付かずに熟睡してた。
10分程熟睡してたらしい。
「海堂.海堂~、起きろ」
「………」
芳村の声が遠くから聞こえるのは気のせいか?
まだ眠りの中を彷徨ってた。
ギュッ!
「いってぇ~!」
鼻をギュッと摘まれ痛さに飛び起きた。
鼻を押さえ目の前で笑ってる芳村に文句を言う。
「いってぇ~な。もう少し優しく起こせね~の」
「何度起こしても起きないからだよ」
クスクスクス……
笑う顔は目が垂れ、尚更優しく見える。
「鼻が取れたらどうすんだよ~。こんな高い鼻でカッコいいのに」
「ん~確かに。摘み易かったな」
クスクスクス……
「子供じゃね~んだから」
「早く起きて教室行けよ。あと少しで午後の授業だぞサボるなよ」
「あ~~、良く寝た~」
両手を伸ばし背筋も伸び気持ち良い~が、ゆっくりすると本当に怒られるかもしんねぇ~と立ち上がり、教務室を出る事にした。
「じゃ~な」
「早く行け。間に合わなくなるぞ」
「へ~い」
「返事は ‘はい' だ!」
小言を話す芳村の声を聞き教務室を出た。
さてと、午後の授業に出るか。
久し振りの芳村との時間で、心が穏やかになってた。
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