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第21話
体育倉庫を出ると、辺りは既に暗かった。
鞄を置いてある場所まで歩き、やっと一息ついた。
「はあ~、疲れたな」
「確かにな。でも、上手くいったな。面白かった」
伊織は面白かったと言う余裕があるようだ。
「林の奴、これで大人しくなるんじゃねぇ~の。それにしても動画も結構エグかったし写真も枚数あったぜ。あれ見てオナってたのかもな」
小池が居る前で、祐一ははっきりと見たままを話す。
「エグいって、どんなのがあったんだ?」
本人が居る前で、興味深々で聞く伊織の神経も凄い。
「成宮先輩、そんなに興味あります?僕、成宮先輩タイプだから、今日のお礼にセックスしても良いですよ」
凄え~な。
経った今、色々あったばかりだっつーのに、もう次か?
小池の性悪って言うか.本性を見た気がした。
大人しく可愛い見た目に騙された林が、何だか可哀想な気がする。
ま、林も男に狂い脅すような卑怯な奴だからな。
似た者同士か。
流石の伊織も焦り、顔の前で両手を振り
「遠慮しておく! そもそも俺の方はタイプじゃないし付き合ってる相手も居るしな」
俺が感じるように伊織も小池に対して何か感じとってるようだが、付き合ってる相手が居ようが浮気する癖に……上手く使ってるよ。
「そう、残念! 成宮先輩って案外律儀なんだぁ~、意外だね。あっ、そうそう。先輩達、ありがとうございました。これでやっと林とも別れられました。本当に、しつこくって嫌になってたから。あ~良かった~。これで安心して彼氏を作れます」
小池の言葉に、俺は閃いた。
「なあ、2年の須賀って知ってる?」
敏感な祐一は俺が考えてる事が解ったらしくニヤっとした。
「須賀君?知ってますよ。爽やかで成績も良いし、割とカッコいいからモテますよ」
「新しい彼氏欲しいって言ってただろ?須賀はどう?」
俺の提案に、小池は目を丸くし驚いた顔をしたが直ぐに笑った。
「須賀君って、男に興味ないらしく申し込まれても断ってるって、噂で聞いてますよ。だから、無理ですよ。僕的にはアリですけどね」
小池が興味ありなら話しは早い。
「それがそうでもないらしい。まだ男に目覚めては居ないが、全然興味がないって事もないと思うぜ。小池の頑張り次第では、今の須賀なら落とせるかもな。何しろ男相手の恋愛はどうして良いか解らないって感じだから、小池がリードしてやれば大丈夫じゃね~の」
俺が小池を煽ると、その気になってきたようだ。
もう一押し…か。
「小池って、大人しい感じで可愛い~系だから、須賀も男.男って見れないだろうし。絶対にイケルよ」
俺はあの林を落とした位だから、須賀も小池の演技や小悪魔的な所に騙されると思った。
須賀は純情そうだからな。
「そうかな~」
「どうせ彼氏作るつもりなら、良い男の方が良くねえ?須賀なら申し分ないだろーし。付き合ったら、須賀は大切にしてくれるタイプだぞ」
「ん~……じゃあ、頑張っちゃおうかな」
「頑張れ、頑張れ!」
「先輩にそう言われると、何か自信が持てる。頑張ってみる!」
「良し! その意気だ!」
俺と小池の話を黙って聞いてた2人は ‘良くやるぜ’ と呆れていたが知らない振りだ。
「なあ、そろそろ帰らねぇ~と」
祐一の言葉に学校の巡回バスは既に終わって、民間のバスを利用するしかない。
遅くなれば成る程、本数が少なくなるからだ。
「そうだな。小池、鞄は?」
「あっ、教室です」
「祐一、一緒に行ってやれよ。まだ林がそこら辺にウロウロしてっかも知んねぇ~から。帰りは俺達とバスで駅まで行こうぜ」
伊織は小池とは2人っきりになりたくないのか?先手を打ち祐一に振った。
祐一も仕方ないって顔で「行くぞ」と、小池を連れて行った。
「何?お前でも小池はパスか?」
俺がニヤニヤして問うと、頭を掻きむしり嫌な顔をしてた。
「大人しそうな顔でやる事がエグい。大体、教師誑かす位だぜ。あー言うのには関わらない方が身の為だ。小悪魔って言うより色んな意味で怖い!」
「俺もそう思った。正直、タイプが伊織でホッとした位だ。これ以上は、小池には関わらないようにしようぜ」
「そうだな。俺、もし誘われても絶対に手を出さない何だか、林が惨めにも可哀想にも思えた」
「まあな。でも、男に嵌ってとち狂って脅してまで関係保とうとしたのは悪い」
「だな。結構、男を知れば嵌る奴多いからな。お前も気を付けろよ」
「俺は女もイケルし、ここではあくまで性欲処理って弁えてる。ま、男の孔の良さも解るし妊娠しないのが良い」
「そんな事言って、芳村もそんな感じなのか?」
「いや、芳村の事は、先に精神的な面って言うか.気持ちから好きになった。他の奴みたいに気軽に手を出せない」
「本気なんだな」
「ああ」
そんな事を話してると、祐一と小池の姿が見えた。
「お待たせしました」
ぺこりと頭を下げる小池は一見すると大人しく可愛い生徒としか見えないが、本性を知ってる俺達には恐ろしい存在にしか見えない。
「じゃあ、俺は寮だから。伊織、祐一、小池を頼む。小池も暫くは1人で居ない方が良いぞ。あと、須賀の件頑張れよ。お前ならイケルから」
小池を心配してる振りして、須賀の件をもう一度念を入れた。
「はい、頑張ります! ありがとうございます」
可愛くガッツポーズをするが、俺にはどうやったら自分を可愛く見せられるか解ってるようでキモい。
「じゃあな」
俺が寮の道に歩き出すと、背後から
「またな」
「おう」
友の声が聞こえた。
道すがら、作戦通り上手くいった事に興奮と喜びを感じてた。
次いでに、小池を煽って須賀を押し付けた。
小池の手腕に掛かるが、あの小池なら男に免疫のない須賀も落ちるだろう。
林もこっちに証拠があると思ってるし、少なくとも俺達が卒業するまでは大人しくしてるはずだ。
これで芳村の無事は確保された。
悪い虫は、早いうちに消し去らないとな。
あ~疲れた~。
風呂入って早く寝るか?
それとも、この興奮を治める為に誰かと……。
誘われたらだな。
俺から誘う事は誤解を招くと思い誘う事は決してしないが、俺も今日みたいな日はシタくなる時もある。
そう言う時は決して言葉には出さないが雰囲気でわかるのか?相手から誘ってくる時もある。
どうすっかな~。
寮までの数分を、そんな事を考えて歩いてた。
一仕事した充実感ていっぱいだった。
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