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第23話

「ま、ともかく芳村の知らない所で、貞操が守られたって事だな」 「悪さをする虫は、追い払うに限る!」 「追い払う?潰すの間違えじゃね~?」 「確かに~。追い払うなんて生優しいもんじゃなかったぞ」 「良いんだよ! そんなのどっちだって、要は芳村が無事ならそれで!」 「はい.はい。芳村も凄え~奴に好かれちまったな」 「だな」 2人の意見が一致し、俺を揶揄ってるのは解って反撃しても仕方ないから聞こえない振りでやり過ごす。 「それにしても小池に須賀を押し付けるのは考えたな?」 祐一が感心することように俺を見た。 「新しい人探すって小池が言った一言でピンッと来た! 男に少しばかりの興味が出始めた今の須賀なら、あの小池なら落とせると思った。須賀は純粋そうだからな小池のあざとさには気付かないんじゃないかと思ったんだ。今回の事で、小池が俺達の誰かに迫って来ても困るじゃん。なら、須賀を宛てがうのが1隻2丁かなって、いや、須賀も恋人出来て、芳村を諦めてくれれば1隻3丁だ! それとも伊織、相手するか?」 「絶対! 嫌だ‼︎ マジ、無理!」 「そうだよな。俺達の回りを彷徨(うろつ)かれても困るから、早いとこ次のターゲット宛てがう方が俺達の為だしな。取り敢えず、小池とは、もう関わらないようにしようぜ」 「だな」 「了解」 3人の意見は同じだった。 「でも、これで一安心だな。何だか、一気に解決したって感じだな」 「良かったな、龍臣」 こいつらも気に掛けてくれてたんだな。 改めて感謝した。 「色々、ありがと~な。俺1人だと、悶々と色々考えてたかもしんねぇ~。2人の協力に感謝した」 俺が珍しくお礼を言うと、祐一は黙ってビールを飲み伊織は髪を掻いてたが、2人共照れてるのが解った。 俺も照れ臭くなり話題を変えた。 「そう言えば3者面談どうだった?」 「俺は別に……大学行って経営学を学ぶつもりだ。将来は……自分の店を持ちたいからな」 将来の夢を語るのが照れるようだ。 「俺は特に将来したい仕事がまだ決まってないし、取り敢えず大学行って視野を広げて決めようと思ってる」 やはり芳村から聞いた通り2人は大学に行くんだな。 将来の夢が決まってる祐一とやりたい事がまだ決まってない伊織の話を聞いて、大学に行くのを堅苦しく考える必要はないのかも知れないと思った。 伊織みたいに色々な人と出会い色々と経験し、視野を広げるのも悪くないな。 芳村の言う通りかもな。 「龍臣は?どうすんだ?」 「やっぱ家業を継ぐのか?」 3人で進路とか将来の事をじっくりと話した事は今までなかった。 「ん、俺は生まれた時から家業継ぐのは決定事項だったからな。疑うまでも無く高校出たら家業継ぐつもりだった。たぶん親父もそう思ってたと思う」 俺の家の事は特殊だと知ってる2人は神妙に聞いてた 「そうか」 「で?」 「そのつもりで進路の紙にも書いたんだ。でも、芳村が ‘大学行けるなら行った方が良い。家業を継ぐのはその後でも良いじゃないか?これからどんどん厳しい世界になる。知識を持ってて無駄な事はない。視野を広げるのも大事だ’ って言うんだ。親父も芳村の話を聞いて ‘大学行くのは俺の好きにして良い’ って言われた」 「良かったじゃん」 「絶対に、その方が良い」 2人も自分の事の様に喜んでくれた。 「直ぐに結論出さなくて良いから考えて見ろって、芳村に言われてずっと考えてた」 「それで?」 「どうすんだ?」 「……大学…行こうと思ってる。芳村ももう少し頑張れば伊織や祐一と同じ大学行けるって言うし、協力もしてくれるって言うからな。俺……お前達と一緒に大学生活してみたい」 最後は本音が出た。 祐一と伊織は笑顔になり喜んでくれ激励してきた。 「一緒に、大学行こうぜ」 「勉強なら俺達も協力するし頑張ろうぜ」 2人に背中や肩を叩かれたが、喜んでくれてるのが解った。 「祐一はともかく、伊織って何故か成績良いんだよな摩訶不思議だ」 「祐一はともかくって何だよ~。俺はやる時にはやる男だ! 遊びとやるべき事はちゃんと解ってるからな。遊んで成績悪いなんてカッコ悪りぃ~じゃん」 伊織が息巻いて話すと祐一は直ぐに揶揄う。 「遊びってセックスしてるだけじゃん。まあ、見境いない下半身と賢い頭で、ちゃんと使い分けてるってか?」 「何だと~、このヤロ~‼︎ お前なんて、そんなの興味ありませんみたいな顔しながら、陰でこそこそヤッてんじゃん。このむっつりスケベが!」 「誰がこそこそシテるって⁉︎ 誰がむっつりスケベだって⁉︎ お前にはモラルってもんが無いんだよ‼︎ 獣‼︎」 何だか、おかしな話になってきたぞ? まあ、いつもの事だけどな。 「そう熱くなるなって。落ち着けよ」 俺が仲裁に入ると 「龍臣には負けるな」 「こいつこそ本能のまま下半身が獣だからな‼︎ 男も女もだもんな。本当に、見境いが無いのはこいつだな?」 「祐一、良く言った‼︎」 何だよ~、今度はこっちにとばっちりが回ってきた、それも2人でタック組みやがって~。 「ふん! 何とでも言え‼︎ 否定はしない‼︎ 俺のが忘れられないんだから仕方ない‼︎ 」 今度は冷めた目で見られた。 「口だけは達者なんだよなぁ~」 「勝手に言ってろ!」 いつものパターンになり、そう良いながら笑いが起きた。 「でも、マジで一緒に大学行こうぜ」 「大学も楽しくなりそうだな」 「受かればだな」 「「受かるさ‼︎」」 2人に力強く言われ、俺も大学に行く気が益々強くなった。 この高校に来て良かった‼︎ こいつらと出会えて‼︎ そして……芳村にも‼︎ そう心で思いながら、初めての親友と呼ぶべき2人と朝方まで飲み明かした。 祝杯と言う名目だったが、有意義な時間でもあった。

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