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第25話
7月に入って、学校行事の体育祭があった。
男ばかりでむさ苦しいが、これが割と盛り上がるらしい。
俺は2年の夏休み明けからの編入で、去年の7月の体育祭は参加してなかった。
だから、伊織の話を聞くと楽しみでもあった。
1.2.3年と縦割りシスターで組分けされ鉢巻きの色も違う。
クラスTシャツも作り団結力と盛り上げて行こうと言う気迫が伝わる。
閉鎖的で男子校だからか?行事ごとは、熱くなるのはお決まりのようだ。
俺達のクラTは背中から肩に掛けて登り龍と炎の和柄でプリントし、芳村組とロゴで何とも言えないセンスで目立っていた。
たぶん、俺が居ると言う事で、それを逆手に取りギャグにしてるようだ……笑えるのか?
俺がクラTを着て席に座ってると、回りが好奇と納得の目で見て居た。
俺が不機嫌なのを察して、話し掛けて来る奴は居ない
様子を伺ってるのが解る。
ったく、誰だよ~、こんなクラTにしたのは⁉︎
「おう! 龍臣~~似合いすぎ~」
登校して直ぐに俺の席に寄って来て、不機嫌な俺の事など構わないお気楽な伊織は笑いを堪え話す。
殆ど笑ってんじゃん‼︎
「……ったく!」
俺がムクれてると
「ただでさぇ、強面なんだからよ~。そんな顔すると尚更似合う~~」
くっくっくっ…はははは……
等々、堪え切れず声に出し笑った。
「笑い事じゃねぇ~よ! 今日1日、これ着てなきゃなんねぇ~だからよ。マジ、恥ずかしい~」
俺と伊織が話してると、祐一も登校して俺達の所に寄って来て、俺の格好を見て間髪入れずに直ぐに話す。
「龍臣の為のクラTだな」
おめぇ~は真顔かよ~!
「誰も頼んでねぇ~し。誰だよ、こんなセンスねぇ~クラT作ったのは?」
伊織と祐一は俺から目を逸らした。
ん?まさか……こいつら…か⁉︎
「お前ら~‼︎」
「いや、俺はこんなの面白そうじゃんって言っただけな、祐一」
「そう.そう。1つの意見としてな。まさか採用されるとは……な、伊織」
「シャレか?これで笑いが取れるならまだ良い~が、怖がるかもしんねぇ~だろーが」
「それも作戦のうちだ。戦う前に戦意喪失させんだよー」
「伊織……バカか?」
「まあ、もう出来上がって着てるんだし。クラスもこれのお陰で盛り上がってるしな。今までに無かったクラTだぜ。折角だし楽しもうぜ!」
「そうだ! そうだ!」
「……今更、何言ったって変わんねぇ~しな。一丁やるか!」
「そうこなくっちゃー」
俺の機嫌が治った事で様子を見てたクラスの奴らもホッとし、いつもの朝の教室の雰囲気に戻った。
特に今日はお祭りムードで浮かれザワザワ…してる所に芳村が入って来た。
「お~い。席に着けよ~」
ガタガタ…バタバタ…と、席に着くとクラスを見回した。
芳村も担任だからクラT着てる~。
似合わねぇ~。
あまりのギャップに思わず笑いそうになる。
「良し! 皆んな居るな。先日の全体練習の時に、注意された事は解ってるな?待機場所やら放送の指示に従う事、後は怪我しないように。……それにしても海堂クラT似合うな~」
芳村の俺いじりにクラス中が、ドッと笑いが起こった
「おっ! 高田と杉野も良く似合ってる。このクラT着こなすの大変なのにな」
芳村が今度は柔道部の高田と杉野をいじり、またまたゲラゲラゲラ…と笑いが起こる。
俺は強面で奴らはガタイの良さで、いじりやがって~
でも、そのお陰でクラスの中でもいじって良いと言う雰囲気になり、何となくクラスの輪に入れた気がする
「そのクラTの所為で、教頭先生にチクチク言われたぞ。OO組はだめだって言っただろう。お前達に任した私が間違ってた。 でも、出来上がってきたんだから、これでいくぞ!」
『おーーー!』
芳村は教頭に小言を言われても我感せずだ。
芳村もクラスを盛り上げようとし、皆んなも乗っかって盛り上がりつつあった。
「優勝するぞ‼︎」
『おーーー‼︎」
意気揚々と雄叫びを上げ、椅子を持ち教室を出ていくクラスメイト達だった。
俺は芳村の些細な気遣いと、一緒に行事を楽しもうと盛り上げようとした行動に ‘やはり良いな‘ と、芳村の朝礼を聞きながら思って居た。
ゾロゾロ…と出て行くクラスメイトに混じり、俺達3人も出ようとした時に、芳村から声が掛った。
「海堂、成宮、桐生。熱くなるのは構わないが暴力はダメだぞ! 先日の騎馬戦の乱闘騒ぎの事は解ってるよな?」
「へ~い」
「反省してま~す」
「解ってるって」
3人3様の返事を聞すると
「頼むぞ!」
芳村はそう言いながら小さく「……大丈夫だろうな」と呟いてた。
俺達はそのまま教室を出て、他の教室からも出てきた生徒でごっちゃになってる廊下を歩く。
「結局、あの後しっかりグランド10周の罰あったじゃん」
伊織が言ってるのは、先日に行ったプログラムに沿った全体練習での事だ。
待機場所の確認と競技の確認やら道具の確認をしながらの全体練習で、それぞれの競技で1部だけし短縮での確認作業をしてた。
騎馬戦の項目で、俺達のクラスと隣のクラスでデモンストレーションをする事になり、練習と解ってもやはり騎馬戦は燃える。
練習とはいえ皆んなやる気満々だった。
俺も馬の上に乗り鉢巻きを取って居た。
隣のクラスの運動部の奴と揉み合いになってる最中にたまたま俺の顔に相手の手がクリーンヒットしたのが事の発端だった。
それは騎馬戦では良くあるが、俺も熱くなってた所為もあり、やり返しまた揉み合いになってた所を背後から隣のクラスの奴に援護射撃され、俺は3対1でやり合ってた。
「汚ねぇ~ぞ!」
近くに居た伊織に俺の声が聞こえたらしく、伊織も直ぐに駆けつけ加勢し祐一も駆けつけ俺の援護した。
鉢巻きの取り合いじゃなくなり顔や頭に手が飛ぶと、更に熱くなりどんどん援護する奴が双方から寄って来ると、もうハッチャカメッチャカで収集が困難になった。
流石に、中止の放送が掛かり先生達も止めに入った。
で、こっぴどく叱られ主犯格の俺達3人と隣のクラスの運動部の3人は、グランド10周の罰を食らった。
始めは無言で走ってたが1周.2周と6人で走ってるうちに仲間意識が生まれたのか?「悪かった」「俺達もやり過ぎた」と、お互い謝ると今度は打ち解けた。
お互い本番は正々堂々と勝負しようと、約束する程の仲になった。
そんな中、密かに俺と伊織が暗黙の了解で走る勝負をしてると、運動部の奴らも走るのは負けたくないらしく、どんどんスピードを上げ勝負事になり最後には祐一以外は笑ってた。
祐一だけ俺達5人の勝負事には参加せず1人マイペースで走ってたからだ。
俺はこれも良い思い出になったと思った。
先日の事を思い出し「でも、面白かったな」と、俺が話すと伊織も祐一も同意するように笑ってた。
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