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第26話

校庭には白.赤.青.オレンジ.紫.黄色.緑.ピンクと、色鮮やかな鉢巻きを巻いた全生徒が集まり体育祭の開会式が始まった。 開会宣言に始まり.優勝トロフィー返還.準備体操.校長の話.体育祭委員会からの注意事項.etcでやっと式が終わった。 陣地に戻り応援合戦が始まると、野太い声で応援に熱が入る。 主な競技は各学年徒競走.各学年障害物①.②.色別綱引き.応援合戦.クラブ対抗リレー①.②(余興).各学年クラスリレー.色別リレーだ。 各学年障害物①は5人6脚.棒渡し.借り物などで毎年色々と趣向を凝らした障害物競走・各学年障害物②は騎馬戦と決まってた。 今年の俺達の代の障害物①は借り物競走だった。 <午前中のプログラム> 1-2年徒競走 2-1年障害物① 3-3年徒競走 4-色別綱引き(団体) 5-1年障害物② 6-各学年クラスリレー 午前の無事は終了する運びだ。 運動部に入ってる者は、自分の見せ場とばかりに躍起になり速さを誇示する。 そして応援にも熱が入る。 競技が始まり順調にプログラムは進み、俺達3年の徒競走だ。 待機場所では準備運動する者や喋ってる者.黙って前の競技を見てる者と思い思いに待ってた。 前の組の伊織が振り返り 「龍臣、勝負しようぜ! どっちが1位取れるか?」 挑発的に話す伊織の組を見て、そして俺が走る組を確認する。 伊織の組にも部活の奴が何人か居るが1番強敵なのはサッカー部の奴だ、俺の組も陸上部が1人居る。 お互い2位は転ばない限り大丈夫だが、頑張れば1位取れるか.微妙な所か? 俺も挑戦的に笑い 「良いぜ。何か賭けるか?」 「そうだな~。月曜日の学食は?」 「良いねぇ~。決まり‼︎」 俺も伊織も相当な負けず嫌いだ! 面白くなった。 ニヤッと笑い、これで俄然やる気が出た。 合図のピストルと共に、どんどん前に居た生徒が減りゴールして行く。 前の組の伊織達の番になった。 「位置について。よ~い、バンッ‼︎」 ピストルの音で伊織はスタートダッシュに成功しサッカー部の奴と勢い良く競う様に走って行った。 途中までは見られたが、伊織がゴールする前には俺もスタートするから結果は解らない。 俺の番だ! 「位置について。よ~い、バンッ‼︎」 スタートダッシュは陸上部の奴に少しだけ遅れたが、それ程には差がない! よっしゃ~~こっからだ‼︎ ダッダッダッ…ダッダッダ…… 何とか横に並んで走ってるが、僅かに陸上部の奴の方が速い。 くっそぉ~‼︎ あと少し…それが縮まらない! カーブを曲がり直線勝負だ‼︎ ダッダッダッダ…… ゴールテープを切ったのは、ほぼ同時だと思った。 やったか⁉︎ 体育祭委員の1位の旗を持った奴が俺の方に走って来た。 よっしゃ~~‼︎ 心の中で喜んでると、俺を素通りし陸上部の奴と一緒に1位の列に行き、そして俺は2位の旗を持った奴に連れられ2位の列に並んだ。 全力疾走で息が乱れ肩で息をし並ぶと、目の前には伊織が苦笑いして座ってた。 「お疲れ~。惜しかったな」 「はぁはぁ…お前も2位?はぁはぁはぁ」 「ああ、あと1歩足りなかった」 「そうか。はぁはぁ…なら、賭けは障害物に持ち越しか?」 「それ良いな。障害物は運もあるし面白いかもな」 ニヤッと笑い、俺達は密かに2人だけの勝負を楽しんでた。 後で、祐一に話すと「ばっかじゃねぇ~」と言われたが別に構わない。 祐一は冷めてるって言うのか良く言えば冷静だ。 俺と伊織と違って負けず嫌いでもないし熱くなるタイプじゃないが、いざとなれば協力は惜しまない強い味方にもなる。 そう言う面では、俺と伊織は似たようなタイプで気が合うが、やり合うのも俺達で間に入って仲を取り持ったり仲裁する役目がいつも祐一だ。 こう辛辣な事を言いながらも、いつもバカな事をする俺達の纏め役だな。 その祐一は1位だった。 組のメンバーに恵まれたに違いないと、俺と伊織は優越感に浸る祐一に噛み付いたが、相手にはされない。 次の障害物は絶対に1位取ってやる~‼︎ 伊織と2人で更に熱くなった。 色別綱引きは縦割りシスターで、1~3年までの団体競技だ。 前以て3年の各応援団長がクジで対戦相手を決め、そこから勝ち上がり優勝を決める方式だ(総当たりだと時間の関系上無理だと言う事で毎年恒例だ) 点数も1回戦負け→5点.2回戦負け→10点.準優勝→15点.優勝→20点と点数が大きく変わるから、各組マジになる。 俺達5組の紫組の出番はもう少し先で、その間に応援団長と体育祭委員がチームに作戦と喝を入れていた。 そして俺達の番になり対戦相手はピンク組だ。 綱に手を掛け、まだ合図が鳴るまで引っぱらない。 団長が気合を入れると、それに応えるように野太い声が響く。 「気合入れて行くぞー。死ぬ気で引けー」 『おーーーー‼︎」 スターターがピストルを掲げ  「よ~い。バンッ!」 ピストルの合図と同時に力の限り引っ張る。 殆ど体は後方に傾き足を踏ん張り引っ張る! 始めは殆ど力の差も無く綱はあまり動かず停滞状態が続いてたが、少しずつであるが綱が引いてくる感触があった。 『わっしょい.わっしょい!』 皆んなで協力し声も合わせる。 ガタイの良い奴は後方に陣取り、俺もその中の1人で周りには柔道部の高田と杉野が居てむさ苦しい。 こいつらはここが1番活躍出来ると思って力が入ってる。 そのお陰(?)なのか?紫組は勝ち、場所替えし今度は圧勝だった。 2回戦もどうにか勝ち上がり、優勝決定戦はオレンジ組と当たり、1勝1敗の五分だった。 「最後だ‼︎ 力振り絞れー‼︎」 団長の気合が掛かると、応えるように雄叫びが上がった。 『おーーーー‼︎』 手も腰も痛いが皆んなも敵も一緒だ。 押せ.押せで頑張ったが、最後には力尽き結局負けてしまった。 『ピー‼︎』 笛の音で、皆んな力尽きその場で蹲った。 準優勝だ! 頑張った方だ。 肩や首を回し陣地に戻りぐったりした。 10分程の休憩が入り体を休めた。 周りでは「惜しかったな」「準優勝でも充分頑張った」とか労ったり悔しがる声が聞こえた。 俺は学校から支給されたスポーツドリンクのペットボトルをゴクゴク…飲み ’楽しい~‘ と心踊ってた。 1年徒競走.2年障害物②と進む間は、休憩タイムがてら応援に回る。 2年障害物②の騎馬戦は、これも各チームカラー戦で勝ち抜き方式で応援にも力が入る。 応援だけじゃなく野次も飛び騎馬戦は盛り上がる。 最後の各学年別リレーは各クラスから足の速い者が、クラスの代表としてリレーの選手に6人選ばれる。 1年のリレーが終わり.2年のリレーが終わり.3年の番になり、俺達のクラスからは運動部で速い奴4人と俺と伊織が選ばれて居た。 グランド1周で結構キツいが、抜きつ抜かれつで結構面白く盛り上がる。 伊織からバトンを貰って、俺が最後に陸上部の奴に渡す事になってた。 グランドを準備運動がてら1周回りながら、隣の伊織と話してた。 「絶対に、1位で龍臣に渡す!」 「OK! 待ってるぞ」 伊織のやる気が解り、俺もやる気が漲る。 『位置について、よ~い。バンッ!」 クラス代表の8人がスタートを切った。 どのクラスもやはり運動部が中心で、足が速い奴らが揃ってる。 俺達の紫組も3位辺りで良い位置につけてた。 バトンに戸惑ったり上手くいかなかったりで、ばらつきが出てきた。 伊織にバトンが回ってきた時点で2位だったが、1位との差は1mも無い位で伊織なら抜けるかも知れないと期待した。 少しずつだが、コーナーを上手く回り距離は確実に縮まってきてた。 そして僅かだったが、2位で俺にバトンが渡る。 「龍臣~~、頼む‼︎」 伊織の声が背後から聞こえ。 俺も必死で走るが、相手も陸上部かサッカー部なのか?……速い‼︎ くっそぉ~‼︎ 最後のコーナー回る時も、ほぼ一緒で直線勝負だ‼︎ 最後のアンカーが手を振って「頑張れ~」と、声を出す。 僅差の競り合いで、応援も盛り上がってた。 バトン渡す時に一瞬だが、俺が早かった。 最後のアンカーの陸上部が凄いダッシュで走り去り、1位を僅かにキープしてた。 肩で息をしながら膝に手を置く姿勢で見守り ‘行け~.行け~~!’ と心の中で叫んでた。 俺の所に伊織が寄って来て、俺の肩を叩き労いの言葉と悔しさを話す。 「頑張ったな。あと少しで抜けたのに~済まん」 「はぁはぁ…いや、俺もギリギリだった」 そして2人で最後のアンカーに声援を送った。 最後の最後まで僅差だったが、どうにか1位キープした状態で直線に入り、お互い必死で走ってる。 競うようにゴールし、お互い両手を上げてアピールしてた……勝ったか? 1位の旗が……紫の鉢巻きのアンカーに渡された。 俺と伊織は咄嗟に抱き合い喜び、他の奴らも大喜びだ そして俺達の陣地からは応援してたクラスの奴らが雄叫びを上げもの凄い歓声が沸き起こった。 最終アンカーが俺達の所に1位の旗を持ち意気揚々と走ってきた。 アンカーの奴の肩や背中を叩き、皆んなでハイタッチしたり抱き合ったりと喜びを表した。 グランドの外で応援してた紫組も大盛り上がりで喜んでた。 競技を重ねる事に、クラスが一丸となっていくのが解る。 ‘青春(アオハル)してんな~’ 気恥ずかしいが、何だか湧き立つような浮かれてるような何とも言えない気分だが……すげぇ~気分は良い‼︎

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