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第27話

午前の部が終了し、昼休憩のアナウンスがグランドに流れた。 「午後の部は1時集合です。10分前には陣地に戻って下さい。食堂にお弁当と飲み物が用意されてますので各クラス数人で取りに行き教室で食べて下さい」 アナウンスが終了するとゾロゾロ…と、教室に戻って行く生徒の中に俺達も居た。 「なあ、教室で食うって言っても椅子ねぇ~じゃん」 「ああ、男ばっかだし、地べたに座って皆んなで食べるんだよ」 「そんで、午後の競技の作戦練ったり士気と団結力を高めるって事らしい」 「体育祭に力入ってんな」 「そりゃそうだろ?ストレス発散してんだよ」 「なるほど」 教室に入ると机は後方に片付けられ、戻って来た生徒達は地べたに座って弁当を待ってると、芳村と一緒に数人の生徒達で弁当とお茶の箱を運んで来た。 「並んで取りに来いよ。弁当1コとお茶とスポーツドリンク1本ずつ渡す。スポーツドリンクは午後の競技の合間に飲むようにな。足りない者は自分で自販機で購入する事」 1列に並び2人の生徒からお茶とスポーツドリンクを貰い、芳村からは弁当を貰った。 芳村は1人1人に声を掛けて弁当を手渡してた。 俺にも「リレー頑張ったな」と短いが声を掛けてくれそれだけで午後からも頑張れると思った。 芳村のそんなさり気ない気遣いを自然と出来る所が俺は好きだ。 「良し。皆んな弁当と飲み物は行き渡ったな?午前中はお疲れさん! クラス別リレーは見事に1位取ったし私も嬉しかった。個人競技も皆んな頑張ってたな。綱引きは惜しかったな~。でも、声が1番うちのクラスが出てたし団結力も1番良かったと私は思った。昼食摂ったら休憩をして午後の競技をまた頑張ろうな。じゃあ、いただきます」 『いただきま~す』 芳村の労いの言葉が終わると野太い声が響く。 芳村も地べたに座り俺達生徒と一緒に昼食を摂った。 若い俺達はガツガツ…黙々と弁当を食べ始めた。 私学だけあって弁当も豪華で美味い! 腹が満腹になると、今度は休憩がてらその場で寝る者や雑談が始まる。 「なあ、まだ点数出てねぇ~けど、たぶん良い線はいってると思う。で、障害物②の騎馬戦と最後の色別リレーで1位取らないと優勝は危うい」 応援団長が皆んなに語り掛ける。 「1年の騎馬戦3位だったしな」 誰かが話すと「俺達は絶対に優勝しようぜ」と誰かが話す、それは大概部活の連中が団長に応えてるようだ 体育祭が部活してる者の1番の見せ場と意地の張り合いの場なのが話しから解る。 今度は騎馬戦の作戦会議が始まり、あ~でもね~こうでもね~と話してるのを俺もゴロ寝して聞いてた。 芳村は近くに居た生徒と談話し笑ってる。 芳村と話せて羨ましいと思いながらも、教室の程良いざわつきと午前の疲れでウトウト…し始めた。 話し声が遠くに聞こえ、俺は意識をなくした。 「おみ…龍臣、起きろ」 隣で寝てたはずの伊織に肩を揺り動かされ目が覚めた 「ふぁ~、俺、寝てた?」 「ああ、俺も寝てたけどな。祐一に起こされた」 祐一は俺達2人を見て笑ってた。 「涎、出てるぞ」 慌てて口元を手で拭くと嘘だと解った。 「出てねぇ~じゃんか~」 「バカが。騙されてやんの~」 揶揄う2人にわざと睨んでやるが、この2人には俺の睨みなどどこ吹く風だ。 「俺達も行こうぜ」 ゾロゾロ…と、空の弁当箱を段ボール箱に片しながら皆んな教室を出て行ってた。 俺達も立ち上がり空の弁当箱を片すと、段ボール箱の前には芳村が立って居た。 1人1人に激励の言葉を言いながらも、空の弁当箱を綺麗に片してた。 俺達も空の弁当箱を渡すと 「海堂.成宮.桐生。解ってるよな?騎馬戦の乱闘は無しだぞ!」 「へ~い」 「俺達は解ってるよ。でもよぉ~龍臣がな~。な、祐一」 「元凶はこいつ!」 俺の所為にしやがって~! ムッとして睨んでも知らん振りだ。 「多少は目を瞑るが乱闘はだめだ。それと午後も楽しめ」 「へ~い」 頑張れとは言わずに ‘楽しめ’ と言う芳村はやはり良いと思いながらも、素っ気ない返事をし教室を出た。 廊下に出てグランドに行く道中で伊織と祐一に抗議したが無視され、他の話しを始める2人に ‘こいつらってこう言う奴だ’ と半分諦め俺も話しに加わった。 午後の部の最初のプログラムは有志の部活対抗リレーだ。 殆どが3年生が中心で引退間近の余興らしい。 点数には関係無く、お笑いとマジとで場を盛り上げ午後の活力となった。 大体が部活の道具を持ったりユニフォームを着て走るが、柔道部はゴツい体にピッチピッチのセイラー服を着て笑わせ、水泳部はスクール水着を着て股間にはカップを入れ走る姿で笑わせ、本人達は嫌がっても毎年恒例の伝統らしく開き直り走ってる姿を野次と揶揄でドッと場は盛り上がる。 俺も腹を抱え笑った。 それでも最終組はやはりマジな戦いだ。 陸上部.サッカー部.野球部.テニス部.バスケ部.バレー部が出場し、部内の中でも足に自信がある者が勢揃いした。 毎年、陸上部とサッカー部と野球部の三つ巴らしくストレッチにもやる気に満ちてた。 さっきまでのお祭りムードとは違う。 部活のプライドと意地が伝わってくる程真剣だ。 「位置に着いて、よ~い。バンッ!」 一斉にスタートすると歓声が湧き起こる。 やはり陸上部.サッカー部.野球部が良いスタートダッシュした。 ダッダッダッ……ダッダッダッ…… 俺も運動神経は良いし足の速さにも自信あるが、やはり部活連中の走りは違うと思った。 バトンパスのちょっとしたミスで野球部が少し遅れ、そのまま陸上部とサッカー部が競うように最終ランナーにバトンパスをし走り去る。 抜かれないように必死に走る陸上部と、何とか隙を見つけて抜こうとするサッカー部で会場は盛り上がり応援にも熱が入る。 最終コーナーを回り直線勝負になった。 ゴールテープを切ったのは僅差で陸上部だった。 ゴールに入った選手に駆け寄り大喜びの陸上部員。 そして2位だったが健闘したサッカー部も悔しさもあるだろうが駆け寄り喜んで居た。 陸上部のプライドと意地が勝ったって事だ。  学生の時にしか味わえない感動と喜び。 あ~青春(アオハル)だなぁ~‼︎

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