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第28話

余興での部活対抗が終わりアナウンスが流れた。 「午後の部を始めます。競技始まる前に、今までの点数発表します」 白.赤.青と発表され、その度にグランドでは一喜一憂し野太い声が響く。 俺達の点数が出た時には、既に青組と赤組に僅差で負けてた。 少しばかりがっかりムードになるが 「3位だし、まだ逆転できる点数内だ。こっから逆転だ~~~‼︎」 「イケる、イケる‼︎」 「やってやろうぜ‼︎」 団長を始め体育系の奴らが盛り上げ発破を掛けると、その気になり皆んなで逆転を狙いにいく雰囲気に変わり、俄然やる気にもなる。 午後の競技に向けて、各色組による応援合戦が始まり奮起を高め午後に臨む。 「応援合戦ありがとございます。午後の部プログラム10番-2年生の障害物②です」 <午後のプログラム> 10-2年障害物② 11-3年障害物① 12-1年徒競走 13-2年障害物① 14-3年障害物② 15-色別リレー 閉会式 2年障害物②の騎馬戦で白熱した戦いに熱気と活気が出て、グランドは応援も含め大盛り上がりになっていた。 俺達3年生は次の障害物①の借り物競走で待機してたが、待機場所からも声援と野次が飛んでた。 騎馬戦も綱引きと同様に勝ち抜き戦の為に、優勝決定戦では興奮状態でアドレナリン出まくりで、乱闘に備えて先生達も近場で見守る。  多少の小競り合いは見逃してるが、1度火がつくと若さ故にカ~ッとなり易いのは先生達もお見通しだ。 やはり多少の小競り合いはあったが、先生達が止めに入る程では無く闘志剥き出しの騎馬戦は埃を舞い上がらせ野太い声が飛び交う。 やっぱ、騎馬戦は盛り上がるな。 見てるだけで興奮する。 2年の騎馬戦が終わり、今度は3年障害物①の借り物競走だ。 スタートして綱の中を通り数m先に置いてある封筒に入ってるお題に従い、物を借りて来たり人物と一緒に走りゴールする。 お題は何が書いてあるか?解らない。 何が出るか?ワクワク…する。 順番まで座って待機して競技を見てると、赤の鉢巻.眼鏡掛けてる人.音楽教師.椅子.靴…etcだ。 真面目なのから受け狙いのものまで何が書いてあるかは解らない、そして運もある。  伊織達がスタートし、綱を抜け封筒を取り中のお題を見た。 伊織は真っ直ぐ走って行き、本部前で叫び校長先生と手を繋いで走ってた。 校長なんて最悪だな。 俺は何だろうな、出来れば芳村と手を繋いでゴールしたいもんだ。 確率的にも低いがそう願った。 俺の番だ。 「位置に着いて、よ~い。バンッ!」 勢い良くスタートし、綱をぶつかりながらも抜け封筒を手にした。 封筒の中のお題を見てニヤッとし、俺はそのままコーナーで監視してる芳村の元に走って行った。 「芳村~‼︎」 叫ぶと芳村もグランドの中に入り、俺の手を握り一緒に走りそのまま1位でゴールテープを切った。 「やりぃ~」 少し息が荒い芳村とハイタッチした。 芳村は膝に手を置き荒い息を整えてた。 「海堂…はぁはぁ…お題何だった?」 俺はお題の紙を無言で芳村に見せた。 芳村はその紙を見て目をまん丸くし、それから嬉しそうに微笑んだ。 その顔が何とも可愛いらしかった。 「ありがとうな。嬉しい~よ。まだ競技は残ってるから頑張れよ」 そう言って手を伸ばし、俺の頭を数回撫で持ち場のコーナーに戻って行った。 俺は嬉しかったが素知らぬ顔で1位の場所に行くと、やはり1位の場所に居た伊織がニヤニヤ…して待ってた。 「お疲れさん。龍臣のお題何だった?」 伊織にも黙ってお題の紙を見せた。 「そっか~、これなら芳村も喜ぶはずだ。俺なんて、お題 ‘校長先生‘ だぜ。爺さんと走っても何も面白くねぇ~って。ゴール近くの本部に居たから助かった」 「結局、お互い1位だから、障害物も勝負つかなかったな」 「だな」 そして伊織は俺の耳元で「芳村と走れて良かったな」と、こっそり誰にも聞こえないように囁いた。 出来れば…と思ってただけに嬉しかった。 運も味方してくれた。 芳村のほっそりとした手を握って一緒にゴールできた事が良い思い出になった。 「そろそろ祐一の番じゃねぇ?」 「そうだな」 ゴール近くから祐一のスタートを見た。 綱を抜け封筒の中身を確認し、祐一は下級生のオレンジ組の応援団員と手を繋ぎ走って来た。 ガタイの良い応援団員との組合せは何だか笑えた。 祐一も結局1位でゴールした。 3年障害物①はこうやって競技は終わった。 陣地に戻る時に、祐一からも俺のお題を聞かれた。 またもお題の紙を黙って見せた。 「良かったな」 祐一も言葉は少ないが喜んでるのが解る。 俺の借り物のお題は『信頼できる人』だった。 伊織と祐一の顔も浮かんだが、2人の内1人だけ選ぶ事ができない、俺にとっては2人共同じ位に信頼できる親友だ。 それに競技に参加してるから一緒に走るのは無理だった。 これはチャンスとばかりに芳村に一直線で走った。 芳村もこのお題には喜んでくれた。 また1つ芳村に間接的だが俺の気持ちが少し届いた気がした。

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