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第32話
体育祭後にグランドを走る俺達を不思議そうに見て帰って行く生徒達。
そして芳村と祐一に見守られ、俺と伊織はグランドを疲れもありダラダラ…走ってた。
「あ~、ダル~~」
「ただでさぇ、疲れてんのに~~酷い仕打ちだぜ」
ブチブチ文句を言ってダラダラ…並んで走る。
「誰がチクったんだ~」
「教科担任だろ?それより良いのか?あんな言い訳してたけど、芳村も薄々解ってんじゃねぇ~の?」
「かもな。でも、しらを切る‼︎ それで押し通す‼︎俺達高校生だぜ。今が性欲旺盛な時期じゃん。性欲処理も必要だって。それは芳村とは関係無い」
「ふ~ん、それって芳村は性欲対象とか関係ないって事?」
「そうだ。性欲とかそんな体だけの浅い次元じゃなくもっと深い精神的な面で、俺は惚れたんだ! そりゃ~願わくばヤリてぇ~けど…。そんな浅い関係で終わりたくねぇ~の。心も体も全てが欲しいんだ‼︎」
「そんなもんなのか?俺には解んねぇ~けど。ちょっと龍臣が羨ましいな。本気になれる相手が見つかった事が……俺には永遠にそんな相手出来ねぇ~と思うからなま、俺には割り切った付き合いの方が楽だし性似合ってる」
コイツも寂しい奴だな。
モテるし相手は次から次へとひっきり無しでくるが、相手はマジでもこいつが本気にならない、相手もある意味可哀想だ。
伊織が本気になる相手は現れるんだろうか?
本気になった伊織を見てみたいが……無理かもな。
ダラダラ…そんな話をしながら走ってると
「成宮先輩~、海堂先輩~。何してんですか~~」
大きな声を掛けて来たのは小池だった。
「見て解るだろ?走ってんの~」
「体力ありますね~。頑張って下さ~い」
そう言って校庭を歩き、少し先で待ってた男と和(にこ)やかに話す。
隣には、須賀が一緒に並んで歩いてた。
俺と伊織は驚き顔を見合わせ、もう一度2人の姿を見た。
小池は須賀を見上げ笑顔で話し掛けてつまづくと、須賀が直ぐに手を出し助け見つめ合う2人。
小池がお礼言ったのか?照れる須賀に小池は腕を触ったりとベタベタとしてるが、須賀も満更じゃなさそうだ。
俺達は走りながら、その1部始終を見て呆れてた。
「なあ、今のって、わざとだよな?」
「当たり前だろ。あんな何でもねぇ~所で転けるか?小池の罠だろう。須賀って純粋っぽいから術中に嵌ったな」
「やっぱ小池ってあざといよな~。あんな大人しそうな顔してやる事がエゲツない。あの事があって、まだ1ヶ月かそこらだろ?もう落としに掛かってんじゃん。須賀も災難だよな」
「小池をけしかけたのは俺達だからな。まあ、須賀には小池のあざとさなんか解んねぇ~って。2人が上手くいけばそれで御の字だ。それとも伊織が小池の相手するか?小池はノリノリだったけどな」
「止めろよ‼︎ 俺はあんな奴無理! その点でも須賀と上手くいってくれる事を祈る」
「時間の問題だな。小池に掛かれば須賀なんて直ぐに騙されるって」
話しがヒートアップするとなぜか?走る速度も上がってきて、俺達はいつの間にか競うように走ってた。
お互い負けず嫌いの2人だった。
それを祐一と芳村がグランドの外で、笑って見てたのは知らなかった。
「あいつらバカだな。疲れてんのに競うって、どう言う事だよー」
俺と一緒に見てた芳村に話すと、龍臣達の姿を見て笑ってた。
「直ぐに熱くなるからな。まあ、それもあって桐生にも残って貰ったんだが、悪かったな」
「別に、俺はいつもあいつらに巻き込まれてるから慣れっこだし、良いよ」
俺と芳村は走ってる2人を見て話す。
そう言えば芳村と2人っきりで話すなんて初めてか?
「桐生が居るから、あの2人も上手くいってる。海堂と成宮は直ぐに熱くなって似た者同士だ。馬が合う時は良いが、そうじゃない時はどうしようもなくなる。そんな時には桐生が2人の仲を取り持ってくれるからな。海堂は良くも悪くも目立つし、成宮は自ら目立つ事が好きだしな。そんな2人の手綱を持つのは桐生しか居ない。あの2人には桐生が必要だ。巻き込まれる事は多いかも知れないが、頼むぞ」
そんな風に思ってくれたのか。
何だかこそばゆい感じだが……嬉しかった。
俺達の事を正しい目で見てる芳村が担任で良かったと思う。
「芳村もあいつらの担任で大変だろ?特に龍臣は教師には煙たがれてるしな」
「いや、面白いぞ。これまでも何度か担任受け持ったが、面白いクラスだ。ただ、海堂がどうとかじゃなく去年は1年生を受け持ったから今年は2年か?と思っただけに、3年の担任だと進路とかな、多少気が重かった。将来を決める時期だからな、こっちも神経は使う」
「そう言えば、龍臣に大学進めたんだって」
「ああ、そうだ。その事もありがとうな。海堂は迷ってたようだが、桐生や成宮が後押ししてくれたみたいだな。大学進学するって言いに来た。海堂も良い友達を持った」
芳村に ‘良い友達を持った’ と言われ照れる。
俺達も良い担任を持ったと、俺は口に出さなかったがそう思った。
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