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第38話
芳村は20分程で風呂から上がり、俺の座ってるソファの隣に座った。
芳村から俺と同じボディーシャンプーの匂いがした。
そりゃそうだよな。
同じボディソープ使ってるんだもんな。
そんな些細な事も嬉しかった。
「ん?どうした?痛むのか?」
黙ってた俺を心配する。
「いや、大丈夫。………芳村……2~3日泊まって良いか?」
こんな機会なかなか無い、もう少し一緒に居たいと思いそう言った。
「何か、あるのか?」
何か理由を考え…理由…咄嗟に思いついたまま話した
「人助けだとしても……こんな口元切れたり腫れた頬で家に帰ると……心配する。中学の時みたいに荒れてた時と違って……落ち着いたと思ってるからな。がっかりさせたくない!」
狡いと思ったが親を持ち出した。
散々悪さして警察の世話になって、家業も家業だけに今更心配なんてしないが。
別にこのまま帰っても母さんは「仕方ないわねぇ~」と一言で終わるし、親父は男なんてそんなもんだと思ってる。
「そうか。親思いなんだな。ちょっと待ってろ」
芳村は寝室に行き数分後にスマホを持って戻って来た
「解った、2~3日なら良いよ。取り敢えず頬の腫れが引けば大丈夫だろうからな。そう言えば海堂、夏期講習は?」
マジ~~‼︎ やった~~‼︎
心の中で大喜びで叫んでた。
「今日で夏期講習終わった所だった。で、伊織と祐一と飯食べた帰りにあ~なった」
「塾の帰りか。じゃあ丁度良い。明日はフリーになったし、塾の帰りなら勉強道具もあるし明日は勉強見てやろう」
マジ~~‼︎ そう来たか~~‼︎
やっと夏期講習終わったつーのに~、また勉強か~。
それでも明日俺の為に予定を空けてくれた芳村に感謝した。
たぶん、彼女と会う予定だったかも知れない。
寝室で話しスマホを持ってきたのが何よりの証拠だ。
彼女より俺を優先した事も嬉しかった。
「……宜しくお願いします」
「国語なら教えてやれる。海堂は典型的な理数系だからな。良し‼︎ 折角やる気になってる海堂の為に、ここに居る間は勉強だな」
笑顔で話す芳村に有り難迷惑とは言えず、俺も苦笑いで誤魔化した。
「ここに2~3日居るのは良いが、親御さんが心配するから連絡だけはしておけよ」
「ああ、芳村が風呂に入ってる間に、2~3日友達の所に泊まるって言った」
「手回しが良いな⁉︎ そう言う所だけは手際が良いんだからな~」
そう言って笑いながら俺の頭をくしゃくしゃに撫で回した。
「まあな」
俺はやられっぱなしで、芳村の手が退けたタイミングで髪を整えた。
「なら、今日は色々あって疲れただろ?もう寝よう」
寝る?ドキドキ……した。
「お前は怪我してるからベットで寝ろ。私はこのソファで寝るから」
何だ~~そう言う事か。
がっかりした。
「でも……悪いし泊めて貰ってる身としては…俺がソファに寝るよ」
「ばかっ。怪我人をソファで寝かすわけにいかないだろ。余計な気を回さないでベットで寝ろ。その方が私も安心する」
「………解った。すまん」
「ゆっくり休め」
俺の頭を撫で笑顔を見せた。
そして俺を支え、初めて入る芳村の寝室に向かいベットに横たわった。
「じゃあな。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
寝室のドアを閉めたのを確認して、枕に顔を埋めた。
芳村の匂いだ。
掛け布団も芳村の匂いがする。
芳村が側に居るような気がする。
気持ちが高揚して寝れないかと思ったが、自分で思ってるより疲れてたらしく、暫くすると俺はぐっすり眠りに就いた。
体が熱く、どうやら微熱を出したようだった。
それは勉強疲れの知恵熱なのか、殴られたり蹴られたりした為の熱なのかは解らない。
朦朧とする中で芳村の姿を見た気がした。
冷えた手が額に触り気持ち良かった。
「熱が出てるな」
遠くからそう聞こえた気がした。
そして額に冷たい物が貼られス~っと熱が吸い取られていくような気持ち良さで、また意識を失うように眠った。
「明日…には……元気に…なってる。大丈夫だ」
そんな声も微かに途切れ途切れに聞こえ、俺の頭を撫でた気がした。
夢を見てたのかも知れない。
芳村の匂いに包まれて眠り側に居るような……俺の願望が見せた……夢かも。
体は熱いし朦朧とする記憶の中で…知ってる気が……優しい声と手だった。
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