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第39話

「ふぁ~~うっくぅ~~」 ガツン! 目が覚め起きた時に両手を伸ばし、何かに手が当たった。 「………?」 目覚めたばかりの頭は回っておらず、いつもの自分のベットとは違う気がした。 実家では俺が図体がでかい事もあり、ダブルベットを使ってたが……。 そして天井の高さも……壁紙も……違う。 天井を眺めハッとし上体を起こす。 いきなり動いた拍子に脇腹がピリッと痛んだ。 「痛っ!」 脇腹を抑え部屋の中を見回す。 そうだ、昨日、芳村の部屋に泊まったんだった。 芳村⁉︎ 俺は急いでベットを抜け出し、寝室を出てリビングに向かった。 「おっ! 起きたのか?おはよう」 芳村はソファでTVのニュースを見ながらコーヒーを飲んでた。 芳村が居た‼︎ 「おはよーさん」 「何だ~~その挨拶?」 そう言って笑顔を見せた。 「そうだ、海堂。怪我は大丈夫か?昨夜、様子見に行ったら熱が出てたようだったが」 俺は額に手を当てると、そこには冷えピタが貼られてあった。 あれは…夢じゃなかったんだ。 遠くに聞こえた優しい声と手は芳村だったんだ! 熱が出てた事さえ知らずに朦朧とし……寝てたのか。 何だか勿体ない事した。 「熱が出てたのも知らなかった。ただ、寝てる時に体が熱い気がしたけど……。冷えピタ貼ってくれたんだ?……サンキュ」 「どれ.どれ?」 芳村は立ち上がり、突っ立てる俺の前で首筋を触り熱を確認してた。 「うん! 大丈夫そうだな。冷えピタは念の為そのまま今日は貼っておけ。今日は怪我もしてるし、ゆっくり体を休めろ。その代わり頭は使えよ?」 クスッと笑う。 「やっぱ、勉強すんのか?昨日まで夏期講習で散々頭使ってたし、今日位は良くね?」 「今日は私もフリーになったし勉強見てやれる。夏期講習の件も聞きたいし成果も見たい。明日は悪いが、学校に行かないといけないからな。ゆっくり勉強見てやれるのも、今日位だけだ」 芳村が俺の為に時間を作ってくれたのを知ってるだけに……強くは言えなかった。 「……解った。じゃあ頼むかな?」 俺の態度に笑い 「じゃあ頼むかな?じゃなくお願いします…だろ?」 「……お願いします」 「良し! じゃあお腹空いただろ?昼ご飯にして、その後から勉強だな」 「えっ! 昼?」 「そう、もう12時近くだ。それにしても良く寝てたなぁ~。熱もあったからかも知れないが……寝る子は育つって良く言ったもんだ~」 「何か芳村……親父臭い」 「えっ! 匂う?嘘.嘘?」 自分の腕や服の匂いを嗅ぐ芳村は……天然か? 普段、しっかり者って言うイメージなだけに、何だか素直で可愛い~と思った。 何か学校とは、また違う芳村が見えた。 知らなかった一面を知り嬉しくなり、天然の芳村を笑った。 くっくっくっ…… 「その臭いじゃなく……言ってる事が親父臭いって言ったんだ」 「そうなの?ああ、良かった~~親父臭いなんてショックだもんな」 学校では使う事がない ‘だもんな' って、ダチみたいな親しみが篭ってるような気がした。 可愛い~じゃん。 「芳村はまだまだ若いって~」 「………揶揄われてる気がする。ま、良いや。昼食、何食べたい?」 「肉!」 「チャー飯だな」 決まってんなら聞くなよ~。 芳村の手料理を食べられるなら何でも良いけど。 「良いぜ。芳村が作るのか?」 「私以外に誰か居る?海堂は料理しなさそうだし」 「当たってる。カップラーメンに湯入れるぐらいはできる」 「それは料理って言わないの! 全く仕方ない奴だな~。これからの男は料理の1つや2つできないと」 「俺、料理作るの向いてない気がする。芳村は上手そうだよな~」 「上手いかどうかは解らないけどな。1人暮らしも長いし自然に覚えた。海堂も必要に迫られたらやるようになるって。夕飯は肉にしてやるから昼はチャー飯で我慢しろよ」 「チャー飯で充分だ」 そう話すと芳村は笑顔になりキッチンに向かった。 俺はソファでTVを見て待つ。 チラッチラッ……芳村の料理してる姿を盗み見てた。 トントン…トントン…… 包丁の音がリズム良く聞こえた。 結構、自炊してるようだな。 胡麻油の匂い.食材を炒める音.フライパンを操る音.醤油の香ばしい匂いが部屋を漂う。 良い匂いだ♪ 食欲唆る~♪ 初めて食べる芳村の手料理。 ワクワク……する。  楽しみだ♪ 暫く待ってると「出来たぞ」と言い、皿を2つ手に持ちリビングのテーブルに置いた。 皿にこんもりと盛られ美味そうなチャー飯が俺の目の前に置かれた。 卵とネギ.ウィンナーのシンプルなチャー飯だった。 「美味そう♪」 「ワカメスープもあるからな。ま、昼は冷蔵庫にある物で我慢してくれ。じゃあ冷めないうちに…いただきます」 「いただきま~す」 スプーンで救いとるとパラパラ…としてる。 口に頬張ると醤油とネギの香ばしさと卵の甘さで、味付けは抜群だった。  「美味い♪美味い♪ 胡麻油と醤油の香ばしさが何とも言えず良い♪」 「ありがとう。何だかそんなに喜んで食べてくれると…嬉しいな。夜は肉にするから楽しみにしてろよ」 「やりぃ~~! 楽しみにしてる‼︎」 豪快に食べる俺を見て、芳村はにこにこ笑ってた。 美味過ぎて…あっと言う間に食べ終わった俺に芳村は自分の分を少しだけ分けてくれた。 初めての部屋.初めての手料理……昨日から初めて尽くしだ。 そして学校では見られない芳村の新たな発見で、俺は益々芳村が好きになる一方だった。

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