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第41話

買物を終え部屋に戻り、俺はソファでゆっくりしてたが、芳村は食材を冷蔵庫に仕舞ったり洗濯物を片手けたりと忙しなく動いてた。 「これ乾いたから掛けとくな。帰る時に着て行けよ」 俺が着て来た服をハンガーに掛け吊るしてた。 帰る時……か。 寂しい事言うなよ。 さっきまで浮かれてた気持ちが沈んでくる。 「さてと、お腹は?」 「ん、まだ良い。芳村も休めよ」 「そっか。じゃあ、少しゆっくりしてから夕飯にするか」 ソファに座りTVを2人で見て過ごす。 バライティー番組を見て芳村は良く笑う。 笑い上戸…か。 俺的にはそんな笑う場面では無いと思うが……芳村のツボに嵌ってるらしい。 可愛い~~な。 学校とはまた違ったプライベートはこんなに可愛いらしいとは……知れば知る程惹かれていく。 隣で大笑いする芳村を見て、何だか俺も幸せな気分になるから不思議だ。 好きな人の笑い顔を見るのは、こんなに気分が良いんだな。 隣の芳村を意識しながら、俺はTV画面を見てた。 そのバライティー番組が終わると芳村は立ち上がり「じゃあ、夕飯作るな。海堂は問題集でも解いてろ」と言ってキッチンに消えて行った。 まだ勉強させる気かよ~。 ったく、スパルタだな。 さっきまでは可愛いかったのによぉ~。 仕方なくテーブルの下に置いた問題集を取り出し勉強を始めた。 トントン…リズミカルな包丁の音。 暫くするとジュウジュウ…肉を焼く良い匂いがしてきた。 めっちゃ良い匂い♪ 何か、急に腹が減ってきた~~。 キッチンからの良い匂いに気を取られながも、昼に芳村から説明されたお陰で以前より問題を解くのが楽になった。 やはり教師だけあるな。 夏期講習でも確かに教えて貰ってたが、俺が苦手な所や性格を良く知ってる芳村の方が解り易かった。 問題集を進めてると、芳村から声が掛かった。 「そろそろ出来るけど?テーブルの上片付けて置いて」 広げてた問題集やらノートをテーブルの下に置く。 「手伝おうか?」 「じゃあ、これ持ってて」 芳村から渡された皿には、サラダと玉ねぎ入り生姜焼きが乗ってた。 2人分の皿を持ち生姜と醤油の良い匂いがした。 「美味そう♪」 「ただの生姜焼きだ。あとは味噌汁とご飯もあるから。あっ! 買ってきた唐揚げも温めてあるから」 俺は2往復し、テーブルには夕食が並んだ。 芳村が割箸を持って来て、やっと食事になった。 「いただきます」 「いただきま~~す」 俺は早速生姜焼きから手をつけた。 口に入れると、生姜の味と醤油の香ばしさが広がり肉も柔らかく美味かった。 「ヤバッ! これマジで食欲進む~~。美味すぎ~~」 生姜焼きとご飯を交互に、口にかき込み話す。 「そう言って貰えると作ったかいがある。ほら、慌てるなって。ゆっくり噛んで食べろ。それとサラダも食べろよ」 サラダも味噌汁も美味かった。 芳村は豪快に食べる俺を見て笑ってた。 「この唐揚げも生姜効いてて美味しいぞ。あっ! 生姜…被った~~。ごめん」 豚の生姜焼きと生姜が効いた唐揚げを気付かずに居たと謝る芳村……そんな所も可愛い♪ 「全然~~。美味けりゃ~気にしない。どっちも美味い♪」 「誰かと食べるのって良いな。誰かの為に、その人が美味しそうに食べる姿を見ると作って良かった~~って思うよ」 そう言って笑顔になる芳村。 誰かの為……俺の為って事…だよな⁉︎ そうか、今日は俺の為に作ってくれたんだ。 肉が良いって言う俺のリクエストに応えて…俺の為に! 芳村の言葉が俺の心に嬉しさが染み渡る。 「それなら、いつでも来てやるよ‼︎」 本音だった。 はははは……笑って 「嬉しいが、海堂だけって訳にはいかないからな。今回だけは特別だ。私を頼ってくれた事も嬉しかったしな」 「残念‼︎ こんな美味い飯食べられるなら喜んで来てやるのに! ま、寂しかったら呼べよ。いつでも来て一緒に飯食べてやるから」 今度はクスクスクス……と笑う。 本当に良く笑う。 「何だ~~、その上から目線。ま、本当に寂しくって誰も居なかったら呼んでやるよ」 「芳村も上から目線じゃん」 2人で顔を見合わせ笑った。 やっぱ芳村と居ると落ち着く! 穏やかに夕飯を済ませ、キッチンに皿やら茶碗やらを片付け芳村が洗い物を始めた。 何だか……同棲してる感じだな。 芳村と一緒住んだら、こんな感じなのかもな。 キッチンで洗い物をする芳村の後ろ姿を見てそう思った。 洗い物を済ました芳村から「先に、風呂に入れよ」と言われ浴室に向かった。 シャワー浴びてザッと髪と体を洗い湯船に浸かりゆっくりした。 買物に一緒行ったのは楽しかったな~。 明日は芳村……確か…学校って言ってたな~。 明日は1人か……明後日には帰らないと…だめか。 約束は2~3日って言ってたしな。 考えても仕方ないと湯船を出て浴室を出た。 脱衣所には今日買ったセットアップのTシャツとハーフパンツと下着が置いてあった。 バスタオルで体を拭き、用意された下着と部屋着を来てタオルで髪を拭きながらリビングに向かった。 「出たのか?似合ってんじゃん」 「俺は何を着ても似合うからな。でも、サンキューな」 「手当てするから、そこに座れ」 黙って芳村の前に座ると、口元や頬.脇腹を確認する。 「口元も頬もだいぶ良くなった。脇腹のあざが、ちょっと酷いな」 「腹なんて見えねぇ~から良いよ。その内あざも消える」 「ま、そうだけど。取り敢えず、軟膏と湿布また貼るから」 手当てされるがままになってたが、口元や頬を手当てする時に顔が近くドキドキ…した。 話す芳村の唇に目がいき……顔の近さにキスしたくなった…我慢.我慢! それから芳村に明日から暫く学校に行く事や暇なら勉強する事を言われた。 「夏休み明けのテストで評定が決まる。大事なテストだからな。この夏休みにどれだけ頑張るかで公募推薦とか影響するから。ちゃんと勉強しておけよ」 「解った。なあ、祐一や伊織は余裕?」 「まあな、指定校推薦か公募推薦では決まると思うけど油断はできない。成宮と桐生と一緒の大学に行きたいんだろ?だったら、やるしか無い‼︎ 今、頑張ればあとが楽だぞ。一般入試だともっと厳しいからな」 「解った」 俺の事を真剣に考えてくれてる気持ちと伊織達と一緒に大学生活を送りたいと言う気持ちを改めて思い起こした。 夏期講習終わって、暫く勉強したくねぇ~と思ったが、またやる気が湧き起こった。 本当に、芳村は俺にやる気を起こさせるのが上手い。

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