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第42話
俺が浴室から出て来ると「明日の準備をして風呂に入るから、先に寝て良い」と言われたが、昨日は芳村がソファに寝たし……。
「今日は俺がソファで寝る」
「怪我人が何を言ってるんだ。良いからベットで寝ろ」
「でもよぉ~」
「良いから、良いから。そうしろ」
「……じゃあ、2人でベットで寝るってのは?」
「……無理だろ。お前、でか過ぎ~~」
そう言って笑う。
俺は残念に思いながらも、絶対に引かない芳村に諦め寝室に向かった。
ベットで横になってると、リビングから物音が聞こえた。
芳村に悪いなぁ~と思いながら目を閉じると、自然に眠気が起きいつの間にか眠ってた。
いつもより早く寝たせいか、夜中に目が覚めた。
変な時間に目が覚めたと思い、芳村の事が気になった
そぉっと寝室のドアを開けリビングに足音を立てないように静かに歩きソファに行くと、芳村は夏用の薄い掛け布団をかけソファに横になってた。
暗闇に目が慣れ、スースー……熟睡してる芳村の寝顔を眺めてた。
良く寝てるな。
可愛い~じゃん。
こんな寝顔を見れるとは……あいつらに殴られたお陰だな。
怪我ぐらい安いもんだ。
もっと近くで寝顔を見ようと屈んだ。
整った綺麗な顔をしてる、どっちかって言うと和風美人って感じだ。
心の奥底まで見るような目でジッと真っ直ぐに見て吸い込まれるような二重の切れ長の目が今は閉じられてる。
その目に……惹かれた。
この目には嘘がつけないと感じさせられ、そして素直な自分で居られる気がした。
笑うと目が垂れる所も良い。
案外、まつ毛長いんだ。
鼻も筋が通って丁度良い高さだ。
唇は薄いが形は良いし、良く笑う。
俺は知らず知らずに顔を近づけ見て居た。
夜中の静けさと暗闇の中で、無意識に吸い込まれるように口づけた。
それは微かに触れる程度の口づけだった。
顔を離しハッとし、今度は心臓がドキドキ…した。
微動だにせず、芳村の様子を伺った。
大丈夫だ、起きない。
俺はそぉっとその場を離れ、また足音を消し静かに寝室に戻った。
ベットに横になり天井を眺め指先で唇に触れた。
「キス…したよな⁉︎」
触れるだけの口づけに半信半疑なのと、自分の無意識の行動にも驚いてた。
まだ、心臓がドキドキ…してる。
あのままあそこに居たら……それ以上を求めて…しまう所だった。
まだ早い‼︎
やっと芳村との距離が縮み始めた所だ。
でも……無意識の行動を取った俺は……いつまでこの気持ちを抑えられるか?微妙だった。
自分では焦ってるつもりは無いが……結構、切羽詰まってるって事か⁉︎
無意識の行動がそう物語ってる。
でも……初めての芳村とのキス。
俺は中坊みたいにドキドキ…が止まらなかった。
悶々と考え寝付けない夜となり、寝たのは朝方になってからだった。
目が覚めた時には、既に昼近くになってた。
「ヤベぇ~~寝過ぎた~」
目覚まし時計の針は11時を回ってた。
ベットから上体を起こし背伸びをし、寝室の中を見回した。
そう言えば、ここに来てじっくり部屋の中を見た事なかったな。
クローゼットとベット.机と椅子それだけの殺風景な部屋だ。
ベットから出て唯一物がある机に向かった。
国語関連の本.大学受験に関する本.心理学.小説など様々置いてあった。
やはり本が好きなんだな。
片隅に写真立てが置かれてた。
手に取ると、ディズニーランドに行った時に撮ったのだろう、彼女とミッキーと芳村が並んで写って居た。
彼女はナチュラルメイクで大人しめなお嬢さんって雰囲気で、どっちかと言うと可愛いらしかった。
そして花柄のワンピースが良く似合ってた。
芳村の彼女…か⁉︎
今までそれとなく彼女の話を振ってもプライベートは答えないと言ってなかなか教えて貰えずイメージが湧かなかったが……これからはこの顔がチラつくんだなと思ったら見ない方が良かった気がした。
気分が滅入り、彼女との写真立てを伏せて寝室を出た
やはり芳村は居なかった。
学校に行くと言ってし、通常通りに勤務するんだろう
リビングのテーブルの上に置き手紙があった。
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| 学校に行って来る。 |
| 帰りは18時か18時30分になると思う |
| 昼食はチャー飯作ったから食べろよ |
| 朝食は食パンでも食べてくれ。 |
| カップラーメンも冷蔵庫の上にある |
| 好きに食べて良いから。 |
| 勉強はする事‼︎ |
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俺の飯の心配をする置き手紙と鍵も一緒に置かれてた
気分転換に外に出ても良いって事か。
冷蔵庫を開けると、チャー飯がラップされて置いてあった。
昼になるしと思いレンジで温めて食べた。
やはり芳村のチャー飯美味い!
今日は卵.ねぎ.ハム.ピーマンも入って色も鮮やかだった。
勉強してなかったら怒るだろうな。
ここまでして貰ってるんだ、やるしかねぇ~な。
昨日の夜に、芳村から伊織達の話もされたしな。
俺は芳村に飴と鞭で手の平に転がれてた。
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