44 / 141
第44話
「うっめぇ~~。マジ美味い!」
「辛さは大丈夫か?市販のカレールーにカイエンペッパーとコリアンダーのスパイスを少しだけ入れるのが私の隠し味なんだ。ちょっと本格的だろ?」
確かに、匂いも味も本格的だった。
「へぇ~、凝ってんな。スパイシーな匂いも食欲唆るし味も美味い! それにカツカレーにしてくれたんだな」
「カツは買って来たけどな。お前、肉.肉って言うし」
「サンキュ。うめぇ~~!」
「サラダも食べろって」
こんなに芳村が料理が上手いとはな。
本人は1人暮らしが長いからだって言うが、料理もセンスがなきゃ無理だろう。
美味い食事と楽しい会話と賑やかな食卓だった。
そんな食事が済み洗い物を済ました芳村は今日一日俺が勉強した所をチェックし始めた。
芳村の事だからチェックするだろうと思ってた、勉強しておいて良かった。
「うん、割と出来てるじゃないか。でも、ここなxxxxxx ……xxxxxxxxxxxx………」
俺が間違えた数カ所の説明が始まった。
また勉強会か⁉︎
そう思いながらも芳村の個人授業を聞いてた。
長くなるか?と思ったが、間違えた所や間違い易い所を教えて貰い30分程で終わった。
「良く、頑張ったな。この調子で勉強しろよ。誰でもない自分の為だ。やればやるだけ身につくが怠けた分だけ後で後悔する事になる。あの時やっておけばってな。海堂は何をすべきか解る男だと思ってる。ま、自分の為に勉強しろ」
俺の為…か。
そうだな、大学行くのも決めたのは、俺だ!
芳村は自分が側に居ない残りの夏休みも勉強しろと言ってるんだろう。
「解ってる。やれるだけの事はやるから心配するな。でも……今日みたいに解らない所は、学校始まっても聞きに行って良いか?」
昼休みに教務室に出入りする理由が欲しかった。
「構わない。今度は寝に来るんじゃなく、勉強道具持って来いよ」
クスクスクス…そう言って笑う。
そして2人でTVを見てゆっくりし、また俺が先に風呂に入り出て来た所を怪我の手当てをしてくれた。
「もう顔の方は目立たないぐらいまでになったな。良かったな。でも、脇腹はまだあざが酷いな。痛々しいが痛くはないのか?」
軟膏や湿布を貼りながら痛そうな顔をする。
「全然痛くはない。紫色だから痛そうに見るだけで大丈夫だ。その内あざも消えるって」
「そうか。なら少し安心だな。でも家に帰っても湿布は貼った方が良いぞ」
家に帰ってからの事も心配してくれる。
そして芳村は風呂に入りに行った。
先に寝て良いと言われたが、俺は最後の夜だと思うと、また話しをして居たかった。
ソファでTVを見て芳村が出て来るのを待ってた。
「あれ?まだ寝ないのか?」
「まだ22時過ぎた所じゃん」
「ま、良いか。何か飲む?」
「水か冷たいお茶」
「解った」
俺にはお茶のペットボトルを持って来て、自分にはコーヒーを持って来て俺の隣に座った。
「あっ!そうだ。芳村の彼女って大人しそうな可愛い系だな」
「えっ! 何で?」
「机の写真立て見た。付き合ってどのくらい?出会いは?」
以前には、はぐらかされたが写真を見た事から渋々話してくれた。
「彼女と出会ったのは去年の暮れに、友人との食事会の時に彼女も来てたんだ。偶々、隣だった私もあまり騒ぐ方じゃなく彼女も大人しいから2人で話してた。別にタイプでは無かったし、普通に会話してただけだった」
「へえ~、芳村のタイプって?それが何で付き合う事になったんだ?」
「私のタイプか~。どっちかと言うと大人しいって言うより自分の考えをきちんと話す方が良いかな、その方がお互い解り易いからな。綺麗よりは可愛い方が良いとは思ってる。付き合うきっかけは…食事会の時に大皿で料理運ばれるだろ?最初はみんな女の子は取り分けてくれたりするが、そのうち話しに夢中になったり騒いでくるとそんな事もしなくなる。それは別に構わないと思う。そんな時に彼女は使わない皿やコップを片したりテーブル拭いたりしたんだ、あとは片付けに来た店員にも ‘ありがとう‘ ‘ご馳走さま‘ とか言うんだよ。育ちが良いと思った。それで何となく話してたら友達が ‘付き合ってみろよ‘ と、仲を取り持たれたって感じだな」
芳村の話しの中に肝心な ‘好きだ‘ とかの愛の言葉は無かった。
もしかして何となく付き合ってズルズル来たって感じなのか?
「好きなんだろ?」
「ん~好きは好きだけど……」
「何?」
「何だろう。彼女と居ると穏やかに過ごせるんだけど……恋愛って、こんな感じだったのか?って思う時ある。でも、彼女は悲しませたくない」
「ドキドキ…しないのか?恋愛ってドキドキしたり喧嘩して泣いたり一緒に笑ったりするもんじゃねぇ~の。そいつと居ると楽しいとかずっと一緒に居たいって思うんじゃねぇ~」
「………そうかもな。確かにドキドキ…や喧嘩もないが……守ってやりたいとは思う」
「そうか、芳村がそれで納得してるなら」
俺は芳村が彼女を大切にしてるのは解るが、それは……恋愛とは違う気がした。
芳村も薄々は解ってるような気がするが、育ちが良く大人しい彼女を傷つけられないと思ってるんじゃないか。
大人しい彼女に多少の不満はあるんだろう。
俺にはそう思った。
「変な話しになった。歳下の海堂に恋愛相談してるみたいだな」
「いつでも相談のるぞ~」
「………するわけないだろ」
真剣な話しから最後は明るく終わった。
「そろそろ寝た方が良い。私も明日の準備して寝るから」
「解った。じゃあ、おやすみ」
「ゆっくり休め。おやすみ」
寝室のベットでさっきまでの恋愛話しを考えてた。
俺にもチャンスがあるんじゃないか?
勉強も芳村も自分の為に頑張ってみるか。
俺は1番肝心な事を忘れてた。
芳村の恋愛対象は女だと言う事が頭からすっぽり抜けてた。
男子校で感化され俺の頭も麻痺してたのかも。
ともだちにシェアしよう!