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第46話
またまた昼近くに起きた時には、既に芳村は部屋には居なかった。
最後の日ぐらいは、見送りたいと思ってたが……。
リビングのテーブルには、置き手紙と鍵がまたもや置かれてた。
置き手紙を読んで芳村が家まで送ってくれると知り、その上夕飯も一緒に食べられるとは……少しでも長く一緒に居られると思うと嬉しかった。
今日も勉強したか?チェックされるんだろうな。
俺の為にしてる事だし……やるしかねぇ~な。
昨日の残りの芳村特製のカレーを温め食べる。
やはり美味い!
またいつか食べられる日が来るのだろうか?
そう思うと味わいながら食べた。
それから俺は問題集に取組み2時間程過ぎ、休憩をとった。
「あ~疲れた~~。こんなに勉強すんの初めてかもな」
ラグに大の字になって暫しの休憩をとり考えてた。
あ~今日でここともおさらば…か。
芳村と行った商店街楽しかったな~。
あのメンチカツ美味かったな。
考えてたら無性に食いたくなった。
俺は自分の財布とスマホを持ち商店街に出掛けた。
思い出しながら商店街までの道を歩いて行く。
そして目当ての肉屋の前でメンチカツを1つ注文し食べながら商店街を見て歩いた。
芳村と入った衣料品店、他にも雑貨屋を見たりしたな。
ぶらぶら歩くと、小さな鍵屋の店があった。
俺は少し考えて鍵屋に入った。
そして勝手に芳村の部屋の鍵のスペアキーを作った。
それ程待たずに直ぐに出来たスペアキーを手にし、そして握り締めた。
芳村の部屋に初めて入った記念に……犯罪じゃないよな?別に、悪い事をするわけじゃないし……芳村には秘密にして……俺のお守りにしよう。
そのくらいは良いだろ⁉︎
芳村と数日一緒に過ごした何か記念になる物が欲しかった。
スペアキーを財布に入れ、俺は気分良く芳村の部屋に戻る事にした。
商店街に行った事が気分転換にもなったようで、それからの勉強は捗った。
「ただいま~」
勉強してると、帰って来た声が聞こえリビングに入って来た。
勉強してる俺の側に近づき立ったまま俺の頭を撫でた
「おっ! 偉い.偉い。勉強捗ったか?」
テーブルから問題集を手にとりパラパラ…チェックした。
やはりチェックしたな。
やってて良かった。
「ん、良いんじゃないか。帰る準備出来てる?」
「特に用意するもんないし。勉強道具片付けて着替えるだけだ」
「んじゃ、着替えて来いよ。お腹空いたから食事行こう。それから送ってやるから」
「………悪いな」
「良いって」
俺はテーブルに広げてた勉強道具を鞄に仕舞い、着替える為に寝室に向かった。
何だか帰って来て早々に追い立てるように帰る準備させられた気がしたが……腹減ってるって言ってたしな
気のせいか?
元々着て来た服に着替え、部屋着として買って貰った服はどうしようか?迷ったが、寝室を出て浴室の脱衣所の籠に入れた。
また、この服をここで着れる日が来る事を願って、芳村の部屋に置いていく事にした。
芳村の部屋に俺用の服が置いてある事が、いつでもここに来られると密かに思って。
リビングに居る芳村は何やら考え事をしてる雰囲気だった。
そんな芳村に声を掛けた。
「……準備はできたぞ」
俺の声にハッとした顔をし、やはり考え事をしてたらしいが直ぐに笑顔になり
「じゃあ、行くか?あまり遅くなってもご家族の方が心配するといけないから、送る途中で夕飯食べよう」
腹空いてたって言うから直ぐに飯に行くのか?と思ってたが、芳村なりの気遣いだと思い直した。
「芳村の腹が大丈夫なら、俺はどっちでも構わない」
「じゃあ、行こう」
テーブルに置いてあった鍵を持ち、先にリビングを出る芳村の後を追う、そしてリビングを出る時に部屋の中を見回した。
また、ここに戻って来る!
楽しかったな。
「海堂~~」
「今、行く」
芳村に呼ばれ後ろ髪引かれる思いでリビングを後にした。
芳村の車の助手席た座り運転する芳村と話しをしながら、俺の家まで暫しのドライブだ。
いつもより口数が少ない気がするのは気のせいか?
今日、学校で何かあったのだろうか?
いつもの芳村のようで芳村じゃない気がした。
1時間程車を走らせファミレスに入った。
芳村と食事しながら話すが、どこか上の空な気がする
「芳村?何か学校であった?」
「えっ! 何で?」
「いや、何か上の空って言うか考え事してるような……悩みか?悩みがあるなら俺に相談しろよ」
クスクスクス……
「海堂に相談って…どっちが歳上で教師か解らないなぁ~」
「悩み事に、歳上も教師もないって」
「海堂に諭されるとはな」
そう言って笑う芳村はいつもの芳村に戻った気がした
それからは芳村はいつもと変わらずに居た。
結局、何だったのか?解らなかったが…歳下で頼りないかも知れないが悩みがあるなら相談して欲しかった
まだまだ芳村にとって頼りないって事……だろうな。
頼り甲斐のある男になってやる!
そう心に決め飯を食べた。
「ん~~お腹いっぱい~だ~。遅くなるといけないから出ようか?」
「ああ」
少しでも長く居たいが、今日も仕事の芳村は疲れて居るんだろうと素直に従った。
それからまた1時間程車を走らせ俺の家の前に着いた
「芳村、世話になった。ありがと」
「構わないよ。顔の方は目立たなくなったけど、脇腹はまだあざが酷いから湿布貼れよ。夏休みだからって遊び歩かずに勉強しろよ。夏休み中にいかに頑張るか?だからな。この間も話したけど、今度の定期テストで評定決まるから1点でも2点でも伸ばすようにしっかり勉強しろよ」
「解ってるって」
「本当~か?ま、良い。じゃあまた夏休み明けに学校で」
「ああ、芳村も気を付けて帰れよ。サンキュな」
俺は名残惜しいが車から下りた。
運転席で手を振り、そして車を発車させ走り去る芳村の車を見送った。
行っちまったな。
寂しいような…この3日間が夢だったんじゃないか?とすら思う。
車の姿は既に無かった。
久し振りの自分の家に入り部屋に行こうとした時に、母さんと遭遇した。
「あら、帰ったの?電話1本で、どこほっつき歩いてたのか?全くね~。ご飯は?」
「食べて来た」
母さんの小言で、家に帰って来た気がした。
俺と母さんのやりとりを尊がおどおど…しながら廊下から見ていた。
俺が母さんに叱られてると思ったのかも知れない。
「お、お帰りなさい」
「ただいま」
尊の前を通り過ぎる時に声を掛けられ、尊の頭を撫でてやった。
尊は一瞬ビクっとしたが、嬉しそうな顔で笑顔を見せた。
俺は初めて尊のそんな顔を見た気がした。
無視じゃないが、尊には俺から話す事はしなかったから尊も俺にはどこか?おどおど…とし、話し掛けるのも躊躇ってる感じだったが、俺が何も考えずに尊の頭を撫でてやっただけで、こんな嬉しそうにするんだなって思ったら、今までの尊に対しての態度は悪かったなと反省した。
俺も芳村に頭を撫でられると嬉しい、尊もそんな気持ちなんだろうな。
親父達に任せっきりだが……俺の子なんだもんな。
いずれ尊が色々解る年齢になったら、本当の事を話す日が来るだろう。
直ぐには無理でも、少しずつでも尊に対して態度を改めていこう。
尊の頭を無意識に撫でた事も尊に対しての気持ちが変わった事も、この3日間芳村と一緒に居たお陰だな。
俺は芳村と出会った事で、自分が良い意味で変わってきてると思った。
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