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第47話
「皆んな、元気で登校したな。黒くなってる者も居るが、流石に勉強はしただろうな?2週間後の定期テストで最終評定が決まる。指定校推薦.公募推薦を視野に入れて勉強しろよ。色々言いたくないが、自分の将来の為にな。夏休みボケしてる暇はないからな」
夏休み明けのHRから芳村に喝を入れられた。
俺も今年の夏休みは遊びは行かずに、前半は夏期講習と後半は家で問題集や定期テストに向けての勉強をしてた。
芳村と約束したからな。
でも……1日だけ。
夏休みが終わる2日前に、キャバ嬢のヤレるお姉さんの所に連絡し部屋に行った。
午前中に1人そして夕方に1人と、1日で2人相手した。
勉強だけで終わる夏休みが虚しく感じた事と、学校始まったら女とはセックスできないと思い、ヤリに行ったわけだ。
お姉さん方は俺が夏休みで帰省してるのにも関わらずお誘いが無かった事に「寂しかったわ」と言って直ぐにサセテくれた。
目的はセックスだと解ってるお姉さん達は甘い雰囲気など期待せず、始まってしまえば「あんあん……すごっ…ぁあ」「おおき…奥まで…ぁあ」「やっぱり龍臣君の…ぁあ…すごい…ぁん」大喜びで喘ぎまくってた
俺も久し振りの女の体の柔らかさにがっついた。
遊んだのは、それくらいなもんだ。
今日、芳村と会って少しばかり後ろめたく思った。
今日から…また勉強するか。
朝のHRが終わると教室を出て行く前に、一瞬、芳村と目が合い俺は嬉しかったが……そのまま教室を出て行った。
夏休み明けの授業はやはり怠く周りもそんな感じだった。
食堂で伊織達と昼食を取り、俺はその足で芳村が居る教務室に向かった。
教務室で会うのも久し振りだ。
夏休みの後半から2週間は会ってねぇ~からな。
ウキウキ…した気分で、教務室のドアを開けた。
「芳村~」
「また、来たのか~」
「久し振りに、ここのソファで寝ようかなってな」
「……海堂。今日は良いが、暫く…テスト終わるまでは来ない方が良い」
「何で?」
「私もテスト問題作らないといけないからな。その期間に出入りしてると誤解されかねない」
「何それ?テスト問題を教えて貰ってるて事?」
「教える事はないが、変な誤解されるのは避けた方が良い」
芳村の言ってる事は充分に解ってる……が、また暫く芳村と2人きりになる事ができないと気持ち的には割り切れ無かった。
たぶん俺が渋い顔をしてたんだろうな。
「そんな顔するな。テスト終わったら、また来ても良いから。それまではテスト勉強に集中しろよ」
‘また、来ても良い’ と言われ、少し沈んでた心が浮上した。
「解った」
そう言ってソファに横になった。
「午後の授業始まる前には起こすからな」
「ん……」
芳村が本を読む姿を眠った振りして眺めてた。
そしていつの間にか眠ってた。
芳村から起こされ教室に向かった。
午後の授業を受け帰り際に、祐一に「何だか、元気ねぇ~な」と言われ、昼休みに芳村との会話を話した。
「ま、芳村の話す事は筋が通ってる。テスト期間に教務室に入り浸ってたらマズいって」
「良くねぇ~噂流す奴はどこにでも居るからな。用心に越した事はねぇ~よ」
「解っては居るんだ」
祐一と伊織の言ってる事は正論だ。
「それにテスト期間の2週間だけだろ?我慢しろって。変な誤解で、芳村に迷惑掛ける訳にはいかねぇ~じゃん」
「俺も祐一の意見に賛成だな。それによ~、この2週間で頑張って勉強して、芳村に良い点数取って見せれば芳村に褒めて貰えると思って我慢しろって」
しょげてる俺を励ます2人に、少し気分は浮上してきた。
「そうだな。頑張ってテスト点数上げるか」
「そうだ.そうだ」
「俺達も協力する!」
やっぱ持つべきものは友達だな。
2人に感謝した。
でも……芳村に、何だか突き放されたような気がした。
俺の思い過ごしだと思うが……。
海堂が出て行ったドアを見つめてた。
出て行ったか。
「はあ~」
今までは感じた事がない緊張感を感じた。
意識し過ぎだな。
夏休みに、海堂を家に送り届けてからの2週間は考えないようにしてても、つい考えてしまう自分が居た。
そして昨日の夜に、あの事は忘れる事にし今後の事も考えた。
今日の朝もいつも通りにしようと決めて来た……が、朝のHRを終わった後に海堂の姿を見てしまった。
意識しないように気を付けてたが……やはり本人を目の前にすると意識してしまう。
何も無かった.聞かなかった……忘れろ.忘れろと何度も考えた。
そしてやはり昼休みに教務室に海堂は現れた。
教務室を留守にしようとも考えたが……それも不自然かと思い結局は普段通りにした。
「芳村~」と、いつも通りの海堂に対して、意識してる自分が何だかおかしな気がして普段通りに努めた。
その海堂に昨日から考えてた事を話した。
海堂は納得してるような納得してないような微妙な顔をし、何だか耳と尻尾が垂れ下がりしゅんとした大型犬のようだった。
誤解されない為と言うのは本当の事だ……そして少し距離を置くのにも良い機会だとも思った。
ソファで眠る海堂を本を見ながらもチラチラ…見てた自分はやはり意識してるのが解る。
自分だけが意識して海堂は変わらない態度に、あれは夢か幻だったのか?とも思い始めた。
それでもお互いの為に、少しずつ距離を取る事に決めた。
チクッと胸が痛んだが……海堂には絶対に解らないようにしないと。
胸が痛んだのは決して寂しさからじゃない……傷付けてしまうんじゃないか?と考えたからだ。
そう自分に言い聞かせた。
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