50 / 141

第50話

その日の4時間目は授業も無く、いつもの教務室で採点をして居た。 2組が終わり、今度はうちのクラスの採点を始めた。 順番に採点していき、ここまでまずまずの点数にホッと胸を撫で下ろしてた。 成宮は92点、桐生は96点と、いつも80点以上は取ってる2人だけに安心はしてた。 でも頑張ったな。 他の生徒も夏休みには夏期講習やら塾に行ってた成果が点数に表れてた。 次は……海堂か。 名前を見て赤ペンを持つ手を止めた。 はぁ~大丈夫か?  心配だな。 勉強を頑張ってた海堂を目の当たりにしてた分、思い入れがあり心配だった。 これで点数悪かったら……。 折角、勉強やる気になって頑張ってるのに、モチベーションが下がってしまうんじゃないか? それが心配だが、点数をつけない事にはどうにもならないと赤ペンを持つ手に力が入った。 良し、良し、良し……ケアレスミス、良し、良し……惜しい…良し…… ○をつけながら、こっちがドキドキ…してしまう。 88点‼︎ 良く頑張った! 苦手な国語で88点は、海堂にしては点数は良い方だ。 前回は確か…64点だったか?68点だったかな? 20点も上がってる‼︎ 良し、良し‼︎ 海堂の答案に点数をつけ終わった頃に昼休みに入った 今日はここに来るんだろうか? もし来たら褒めてやろう。 そう思いながら昼休みにも拘らずに残り数人分の採点を始めた。  うちのクラスの全員分が終わり、平均点も82点と中々良かった。 そろそろ来るか?と待ってたが来る気配がない。 昼食を終えて教室に居るだろう海堂を早く褒めてやりたいと教務室を出た。 私も嬉しかったからだ。 階段を上がってると、目の前を成宮と桐生が通り過ぎた姿が見えた。 成宮達は私には気が付かなかった。 海堂は一緒じゃないのか? どこに居るのか聞こうとした時に、成宮と桐生の話し声が微かに聞こえた。 「ったく、よくやるよな~」 「テスト終わったばっかなのにな」 「5時間目に間に合うか?賭けようぜ」 「間に合うわけねぇ~じゃん」 「え~、俺もそう思ってんだよ~、賭けになんねぇ~じゃん」 はははは……何の事か解らないが、楽しそうに笑い歩いて行く。 成宮達と一緒じゃないなら、どこかで寝てるのか? まだ食堂か? 2人とは反対方向に歩き出した。 数十m先に一際背の高い生徒が見えた。 あっ! 海堂。 海堂は視聴覚室のドアに手を掛けて入って行った、その後を追うように1人の生徒も入ってドアが閉まった 視聴覚室? 昼休みの誰も居ない視聴覚室に2人で入って……。 もうそれだけで何を意味するか解った。 伊達に男子校の教師を数年勤務してるわけじゃない! 男ばかりの学校生活で男子校ならではの風習は私でも知ってる。 歩き出した足を止め、視聴覚室のドアを開けようか迷い……止めた。 頭の中にある考えを目にした時の事を考えると……ショックが大きい気がした。 今、2人で視聴覚室に入って行っただけでも軽くショックはある。 その場から立ち去り階段を駆け下りた。 そして足早に、さっきまで居た教務室に戻った。 椅子にガタッと座り机に肘を置き手を組み顎を乗せ、いつも海堂が昼寝してるソファを見つめ考えてた。 さっきのは……。 自分が見た事は……考えてる通りなんだろう。 でも……あの時…キスし……私を「好きだ」と言った海堂が……やはり…あれは夢だったのか? それとも一過性のもので学校が始まって…好きだと思ったのは勘違いと……心変わり…した? いや、そもそも好きの意味は教師として?だったのか?……それならキスは?  海堂の行動にショックを受け傷付いてる自分には、まだ気づかずに居た。 はははは…… 今日の朝には忘れろ.忘れろ、何も無かったと言い聞かせてたのに……これで良いんだ! 海堂はまだ若いし自由な人間だ。 好きなように生き好きなように行動する。 他の人には出来ない、それが海堂の魅力だ。 海堂の不可解な行動に惑わされ悩んでた自分が何だか愚かでバカらしく感じ、思わず笑ってしまった。 今度こそ……忘れよう。 そして海堂の答案用紙を手にし、案外綺麗な字を書く海堂の点数を見つめた。 「良く、頑張ったな。偉い.偉い」 そう言って頭を撫でてやると、必ず嬉しそうな顔をする海堂を思い浮かべてた。 見たかったな。

ともだちにシェアしよう!