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第51話
視聴覚室に連れ込んだ姿を見られてたとは知らずに、次の日の3時間目は芳村の授業で国語だった。
定期テスト後の授業とあって、答案用紙が返される。
昨日から数教科答案用紙が返されたが、今までの定期テストの中では、一番良いできだった。
理数系は割と自信もあり、毎回80前後の点数を取ってたが、今回は85~90そこそこまで上がってた。
現代社会も今日の午後に返されるが手応えはある。
問題は国語と英語だ。
一応、全て埋められたが……。
芳村が1人1人呼び、一言.二言声を掛け答案を返す。
答案用紙を見て嬉しそうにする者やがっかりする者と人それぞれの反応をし席に着く。
「海堂」
ガタッ!
教卓に行き答案用紙が返された。
88点‼︎
俺は驚き、芳村を見た。
「良く頑張ったな。その調子で気を抜くなよ」
自分でも信じられない点数で嬉しかった。
夏期講習もあったが、芳村や祐一や伊織のお陰だな。
答案用紙を握り締め席に歩いていくと、祐一が「どうだった?」と聞かれ、俺は何も言わずに手でOを作り応えた。
祐一も嬉しそうだった。
伊織も俺達の事を見てたらしく「良かったな」と言って笑ってた。
席に着き、しみじみ点数を見た。
次々と呼び答案用紙を返す芳村の声を聞き、嬉しさがまた湧き起こる。
俺、頑張ったかいがあった。
勉強って…やればやるだけ結果に繋がるんだな。
芳村の言う通りだった。
俺は初めて真剣に勉強し報われた点数に勉強する面白さを知った。
全員に答案用紙が返された所で、芳村が解説とケアレスミスが起きそうな所を説明し始めた。
芳村に答案用紙渡された時に褒められたのは確かに嬉しかったが……それは他の奴らと一緒だ。
いつも俺の頭を撫でる手が無かった事が……寂しく感じた。
そして英語は78点だった。
これまで78点も取った事が無かった。
これで全ての答案用紙が返ってきた。
明日から堂々と、昼休みに芳村の居る教務室に行ける!
俺はその通りに実行した。
「芳村~」
「……久し振りだな」
毎日教室では顔を合わせてるが、ここに来るのは本当に久し振りだった。
「俺、ここのソファ恋しかった」
「ただ昼寝したいだけだろ?」
プッと笑う。
「なあ芳村~、俺な、今回全教科良かったぞ」
「ああ、聞いてる。苦手な英語も78点だったんだろ?川合先生が褒めてたぞ」
「だろ.だろ?出来れば80は取りたかったけど…それでも今までで一番の点数だ。それに英語以外は全部80点以上だったぜ」
「そうか。良く頑張ったな。偉い.偉い」
芳村の机の前で意気揚々と話すと、座ってた芳村も立ち上がり手を伸ばし俺の頭を撫でた。
この手が欲しかった‼︎
やっと頑張ってやったんだ!と実感した。
直ぐに撫でる手は離れたが、俺は凄く嬉しかった。
「これで評定は大体決まるが、公募推薦で落ちた場合の事も考えて一般入試に向けても気を抜かず勉強しろよ」
「落ちる話しはするなよ~。滅入る」
「ま、最悪の場合の事を考えるのも教師の務めだ。寝るなら5分前には起こすからな」
「へ~い」
俺は久し振りのソファに横になった。
うわぁ、この感触…久し振り~。
やっとここに戻ってきた気がした。
俺はそのまま寝てたようだ。
もう来ないのか?と思ってた海堂が今までと変わらない態度で入って来た。
私もそれに釣られ、いつも通りの対応をしてた。
今回テストが全教科良かったと誇らしげに話す海堂が何だか可愛く感じ、ついつい頭を撫でてた。
そうすると凄く嬉しそうな顔を見せた。
またそれが大型犬を思い出し、可愛いと思った自分にハッとし直ぐに手を離した。
今回、国語だけじゃなく他の教科担任からも「良く頑張った」と、良い評価を聞いてた。
全教科の点数を上げる事は大変だったと思う。
本当に良く頑張った。
ソファで寝てる海堂を眺めそう思ってた。
そして……海堂を意識してる自分が居る事に気が付いた。
ソファに寝てる海堂が居る事が……日常になりつつあったんだと思わせた。
寂しかった……のか?
複雑な気持ちでまた海堂を眺めた。
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