53 / 141

第53話

文化祭実行委員が黒板にクラスの出し物を書き出してた。 芳村は隅で椅子に座り、生徒に任せると言うスタンスで遠巻きに見てた。 「この中から多数決で決めよう。じゃあ、喫茶店が良い人?」 数人がパラパラ…手を挙げた。 「次はコーヒーカップ(遊園地)が良い人?」 「なあ、それって電動?手動?」 「もちろん手動。俺達男子校だろ」 「やっぱ~」 「手動って大変じゃん」 「はい.はい! 取り敢えず、出し物決まらないと話しにならねぇ~から。で、コーヒーカップが良い人は?」 やはり手動で大変だと思ったらしく、数人が手を挙げただけだった。 「じゃあ次な。謎解きゲームが良い人?」 これも数人手を挙げた。 「じゃあ、最後はお化け屋敷が良い人?」 半数近く手を挙げた。 もちろん俺も手を挙げた。 去年、お化け屋敷やって楽しかったからだ。 準備してる時も楽しいし本番も面白かった。 「じゃあ、決まりだな。うちのクラスはお化け屋敷で申請する。もし、だめだった場合は喫茶店な」 「よっしゃ~、すんげぇ~怖いお化け屋敷にしようぜ!」 「良いねぇ~」 「面白くなりそうだな」 「でもよぉ~、準備大変じゃねぇ~」 「俺、知合いに美容師居るからマネキン借りてくる」 「俺達去年もお化け屋敷やったから大体解るぜ」 伊織はお祭り騒ぎが好きで、自分から積極的に先導に立つ気らしい。 文句を言う者も居るが、大概の奴は盛り上がって居た 体育祭で団結力が出て、あれ以来面白く賑やかなクラスになった。 俺も顔には出さなかったが、密かに楽しみでワクワク…してた。 ガヤガヤ…ザワザワ…する教室。 それまで黙って見てた芳村が動いた。 「出し物は決まったな。準備期間は2週間もない実質作業できるのは10日位だ。皆んなで協力するように。必要な物は実行委員を中心に学校側に申請する事。さっきマネキンとか言ってたが、個人で持ち込む物に関しては自己責任で頼むぞ。あまり変な物は困るからな10月6日校内・7日一般公開と2日間だからな。受験もあるが文化祭が高校最後の行事だ。協力して楽しもう」 『おう~~‼︎』 高校最後の行事…か。 芳村の言う通り楽しまないとな。 その後は受験にまっしぐらだ。 良し! 楽しむぞ‼︎ そして数日後に実行委員から「俺達のクラスはお化け屋敷に決まった!」と報告があった。 去年、お化け屋敷を出し物にしてた俺達と数人は実行委員に頼まれ必要な物を言い、それを申請し学校で用意できる物は使い、必要な物は文化祭費で買ってきた 大体の物が集まると日にちもないと言う事で、グループに分けて放課後2時間までは作業して良いと言う事で製作に入った。 全員参加と言う強制はせずに、時間がある者や交代で作業した。 お化けに扮する衣装などは身近にある服を代用したりシーツを切ってガムテープで貼ったりし、工夫する事も楽しい。 体育祭で使った薬玉を加工し提灯お化け.鏡.暗闇で蛍光色で塗った光る火の玉.日本人形.血塗れの縫ぐるみ.血文字が書かれた壁.掃除用具入れロッカー.視聴覚室から借りてきたTV画面に砂嵐画像.怖いBGM.百均で揃えたハロウィン用の品を代用すると結構製作も思ったよりは掛からなかった。 百均ではドラキュラマント.血のり.つけ歯.仮面ジェイソン.助清.頭に包丁カチューシャ.傷メイク.立体目玉メイクシール.血のりスプレー.白衣.包帯などを沢山買った。 ハロウィンが近い時期と言う事もあり、品物が豊富な事が幸いした。 ドラキュラは去年に引き続き伊織と後もう1人、仮面ジェイソンも2人.助清も2人.血塗れ白衣と傷メイクを施した人物が2人.包帯を巻いた患者風も2人.白いボロボロの着物(シーツで作った)目玉が飛び出た立体メイクシール付の人物が2人と脅かす役も午前と午後の交代制にする為に人数も増やした。 段ボール箱から飛び出したり.掃除用具ロッカーから飛び出す.死角の壁から.下から台車に寝て出てくると色々案を出し工夫する。 話し合い案を出し合い、品を製作する。 ワイワイ…ガヤガヤ…1週間もすれば大体できた。 持ち寄った品を細工したり、マネキンに傷メイクと血のりを施したり、理科室から人体模型を借りたり日本人形も家から持って来た奴も居た。 後は前日に借りてきたパーテーションと段ボールで壁を作り通り道を作り、教室全体を暗闇にする為に暗幕を施せし飾り付けすれば終わりだ。 結構スムーズに作業は終わった。 お化け屋敷の作業してる時は楽しくテンションも上がってたが、寮に帰るとドッと疲れが出て勉強は止め、芳村が勧めてくれた経営学の本を読むだけにした。 読んでる途中で、そのまま寝てる時もしょっちゅうあった。 でも、高校最後の文化祭を楽しい良い思い出にしたかった。 悔いが残らないように。 文化祭が終わったら…また勉強しようと決めてた。 文化祭が終わるまで……暫しの休息だ。

ともだちにシェアしよう!