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第55話
交代する時間になり、俺達は校内文化祭を見て回ろうと、行列ができる教室の廊下の端で伊織を待ってた。
俺はジェイソンのマスクを被ってただけだし祐一は受付で、伊織だけがドラキュラに扮してメイクもつけ歯と凝っていた、そのせいで着替えやメイク落とすのに時間が掛かってた。
「おっせぇ~な」
「仕方ねぇ~よ。あいつ去年に引き続き2回目のドラキュラだからって、今年はドラキュラを追求するとか言って、すげぇ~凝ってたからな」
「本当、バカだよなぁ~。それに目立ちたがり屋だしな」
「言えてる.言えてる」
俺と祐一とで居ない伊織の陰口を言ってると
「誰が目立ちたがり屋なんだ?誰の話?」
「いや、田上の事! な、祐一」
「そう.そう。田上、包帯巻いてゾンビメイクで目立ってたって話だ」
「ふ~ん。田上もやるなぁ~、俺も明日はもっと派手にメイクするかなぁ~」
ここでも負けず嫌いの性格が発揮されてる。
下らない事まで……相当な負けず嫌いだな。
「じゃあ、行くか?」
「ああ、どっから行く?」
「そうだなぁ~」
歩き始めると、背後から声を掛けられた。
「伊織~、終わった?これから一緒に回れる?」
「良いぜ。どっから行く?俺、腹減ったかも」
「んじゃ、模擬店行く?」
「行く.行く。じゃあな、祐一.龍臣」
待ってた俺達の事を置き去りにし、肩に手を掛け2人で歩いて行った。
俺と祐一は変わり身の早さに、呆気にとられて何も言えずに見送った。
「なあ~、俺達、伊織の事を待ってて、ここに居たんだよなぁ~」
「だよなぁ~。あいつはそう言う奴だって。友情より性欲を優先する奴だ。気にしないで、行こうぜ」
それって普通は友情より恋愛をとるとか言うんじゃねぇ~のか?
でも、祐一が言ってる友情より性欲ってのは、伊織にピッタリの例えだ。
「そうだな。なあ、あれって今付き合ってる奴?」
「ああ、夏休み前に別れて、また直ぐに違う奴と付き合ったらしい」
「はあ~良くやるよ。今年に入って何人目?」
「3人目⁉︎ 付き合った人はな。それ以外のは、数えてらんねぇ~。龍臣も人の事言えた義理じゃねぇ~だろーが」
「………どこから行く?俺も腹減った」
「俺達も模擬店行こうぜ。何クラスかやってるから、伊織達と鉢合わせになんねぇだろーし」
歩きながら模擬店を探した。
伊織の奴、3カ月周期じゃん。
付き合っても保たないな、だったら付き合わなきゃ良いじゃん。
どうせ浮気するんだし、付き合う意味ねーじゃん。
下半身の緩い性欲バカだな。
ん、夏休み前に別れた?
「なぁ.なぁ。夏休み前に別れた理由って、伊織の浮気?」
「まあ、それもあるんじゃね~の。でも、付き合う前に、お互い浮気は了承済みって言ってたけどな。チラッと伊織が俺に話したのは ‘誰とセックスしても構わないが、あいつとだけは穴兄弟になりたくねぇ~’ って言ってな。そんで直ぐに別れたぜ」
「へぇ~そうか」
祐一は話しながら、俺の様子を伺ってた。
こいつ、いや伊織も気が付いてるのか?
この様子だと……バレてるっぽいな。
伊織が夏休み前に別れた奴と、俺はヤッタからだ。
確か、7月だったか?
相談があると言われ、屋上に呼びだされ
「伊織の浮気を止めて欲しい‼︎ 僕だけで良いのに、何で浮気するんだろう⁉︎」
「伊織が誰にも本気にならないの承知で付き合ってるんだろ?付き合う条件に、浮気も了承済みって聞いてるぜ」
「だって、了承しなきゃ付き合って貰えないと思って」
「だったら、別れたら?」
「……海堂と浮気したら……伊織…妬きもち焼いてくれるかな?」
「無駄.無駄。止めとけ!」
去年もそんな事思って俺とセックスした奴が居たが、直ぐに別れてたのを知ってる俺は無駄な事は止めろと話したが。
そいつは跪き俺のベルトを外し、下着から取り出しフェラを始めた。
俺は伊織が誰にも本気にならないのを知ってるから、別にこいつとヤッても構わない。
据え膳は美味しく頂く主義だ!
フェラでデカくなった俺のモノは完全にその気になりそのままそいつを背後から犯した。
「伊織より良いだろ?」
「ぁあ…うん…いい…ぁん…すごい」
そう言ってたな。
そうか、バレたのか。
妬きもち焼かせたいって言ってたからな、伊織に何となく俺との事を匂わせたんだろう。
ま、伊織から文句言って来ないって事は、別にどうでも良かったんだろうな。
それこそ本気じゃない証拠だろ。
バカな事をする奴だと思ったが、俺は据え膳は頂く方だからな。
「ま、伊織はあ~言う奴だから良いけどな。他の奴は気を付けた方が良いぜ。刺されても知らねぇ~ぞ」
核心は突いて来ないがバレバレだった。
「………俺、腹空いた」
「ここ入るか?カレーで良いよな?」
「おう!」
誤魔化されてくれた祐一に感謝した。
そんな事位で俺達の友情は変わらない‼︎自信はある。
模擬店を出て一回りし、ゲームでキックボーリングで8本以上倒しスポーツドリンクをゲットしたり遊園地のコーヒーカップやジェットコースターは手動で汗かき大変そうだったが、乗ってる俺達は大笑いだった。
美術部の絵を見たり写真部の写真を見たりした。
写真部の写真の中には体育祭の時の写真も数枚あり、色別リレーで優勝した時にゴールで集まり人差し指を掲げ輪になってる写真があった。
「良い写真だよな」
「ああ、青春って感じだな」
楽しかった体育祭を思い出した。
それから体育館での有志のバンドを見たりダンスを見たりした。
「祐一、俺、ちょっと用事思い出した」
「良いぜ。俺ここで見てるから行って来いよ。ここに居なかったら、そこら辺ふらふらしてるからな」
「悪いな。直ぐに戻ると思う」
俺は体育館から校舎の中を歩いてた。
ガラガラ…
国語教務室の中には、芳村がソファで横になってた。
俺は午前中にクラスのお化け屋敷で怖がってた芳村がどうしたか?気になってここに来た。
あれから結構時間経ってるし、他も見回りしたりして疲れたんだろうな。
ソファに横になってる芳村は俺が側に寄って来ても気がつかない程スースー…眠ってた。
起こすのも可哀想だと思いその場を離れようと思ったが……音を立てないように跪き顔を近づけ芳村の無防備な唇に触れるだけのキスをした。
まるで、眠り姫だな。
じゃあ、俺はキスで目覚めさせる王子様か⁉︎
そんなキャラじゃねぇ~な。
芳村の無防備な可愛い~寝顔を見て、そんな事を思った自分に自嘲めき口元を緩めた。
「ゆっくり休め」
小さく呟き、俺はその場を離れ教務室を静かに出た。
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