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第65話
「やべぇ~、寝過ごした~」
ダッダッダッダッ…廊下をひた走り、HRが始まるギリギリに教室に入った。
「おう! 龍臣、風邪はもう良いのか?」
祐一に心配され
「よっ! 俺達のお陰だよな」
ニタニタ笑う伊織
「サンキュな」
席に着きながら、寮まで薬や冷えピタを持って来た事にお礼を言い、あの様子なら自慰は見られて無さそうだとホッとした。
やはり見られてたらカッコ悪りぃし。
昼休みに来たんだろうし、時間もなく薬やら冷えピタやらを置いて様子見て直ぐに学校に戻ったんだろうな
そう考えを巡らしてると直ぐに、教室のドアが開いた
ガラガラガラ……
「おい! 席に着け!」
ガタガタ…ザワザワ…と席に着く。
教室に入って来たのは芳村ではなく、名ばかりの副担任の戸田だった。
「芳村先生は今日は体調を崩してお休みだ。じゃあ、出席とるぞ」
出席を取り始めた戸田に返事しながら、芳村が休み?風邪が流行ってるのか?と思った。
芳村が休みなら、俺も休めば良かった。
そう単純に思ってた。
出席を取り終わると副担任は2~3言話し、教室を出て行った。
直ぐに、祐一と伊織が俺の席に寄って来た。
「お前、もう大丈夫なのか?」
「ああ、寝たら治った」
「体力だけはあるからな」
祐一は心配し伊織はやはり揶揄うが、2人共心配してる事は解ってる。
「お前達には心配掛けたな。薬やら冷えピタやら色々ありがとーな」
「ああ、保健室から調達したのは俺達だけど、寮に持ってたのは芳村だよ」
「昼休みに行こうと思った時に、芳村とばったり会って頼んだ。俺達が行くより龍臣が喜ぶと思ってな。でも、お前ずっと寝てたって言ってたぞ」
「……寝てた」
「芳村が休みって、お前の風邪が移ったのかなぁ~」
「龍臣の菌じゃあ強力だもんな」
そんな話をしてると直ぐに1時間目の予鈴がなった。
1時間目の授業を受けながら考えてた。
祐一達の話しによれば……寮の俺の部屋に来たのは祐一達じゃなく……芳村⁉︎
‘寝てたって言ってたぞ’ と、芳村が祐一達に話してたって事だよな。
確かに……寝てた。
すげぇ~良い夢を見て…寝てた。
………それにしては……すげぇ~リアルな夢だった。
まさか…な。
そんな事ある訳ない…よな。
起きた時に、ぐっすり寝てたお陰であんなに怠かった体が軽くなってた……腰も……それは芳村とのセックスする夢を見て自慰したせいだ。
本当に……自慰だったのか?
乱れたベット.白濁が飛び散ったシーツ.やけにリアルな夢……頭の中に1つの疑問が浮かんだ。
本当に、夢だったのか?
もし……夢じゃなく、現実だったとしたら……俺は.俺は……とんでもねぇ~事した⁉︎
俺は急に不安になり青ざめた。
芳村の体調が悪くなったのは……俺がセックスして移した⁉︎
そう思う方がしっくりきた。
マジかよ~‼︎
俺は頭を抱え考え込んだ。
1時間目が終わり休み時間に俺の席に集まるのもいつもの事で、祐一と伊織は世間話をしてたが俺は上の空で聞いてた。
それからもずっと上の空で、不安と疑惑に駆られ午前中の授業を何とか過ごした。
昼休みになり食堂に行こうと誘う祐一達に、俺はやはり居ても立っても居られず
「悪い。午後はさぼる! 具合悪くなって早退したって言ってくれ。頼む!」
そう言い放ち、俺は鞄を持って教室を出て行った。
「龍臣!」
俺のいきなりの行動に訳が解らないだろう祐一は声を掛けたが、それを振り切り走り去った。
校舎を出て一旦寮に戻り、私服に着替え財布の中に芳村の部屋の鍵があるのを確認し、こっそり寮を抜け出した。
そしてバス停に行きバスを待ち、その間も自分の考えてる事が……当たってたら……俺は芳村にとんでもない事をした。
それを確認する為と芳村の具合も気になり、芳村の部屋に行く事に決めた。
焦ってる俺とは裏腹にバスはなかなか来ない。
タクシーを呼ぶか迷ってるとやっとバスの姿が見えた
辺鄙(へんぴ)な場所だけに、バスの時間もそう多くはない中では運が良かった方だ。
バスに揺られ駅に着き電車に乗り、その間も気が気じゃなかった。
早く着いてくれ‼︎
俺のせいか⁉︎
俺のせいだろ‼︎
熱を出し意識が無かったとしても……幾ら夢だと思ってたとしても……芳村…ごめん。
謝っても許されないとは思うが……後悔に苛まれてた
そして、うわ言の様に芳村への想いを口にしたのも聞かれてたとそこで気が付いた。
俺の想いを知ったって事…か。
電車に揺られ、この時の俺は自分の行いが既に疑惑から確信に変わってた。
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