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第67話
ピロ~ン♪
サイドテーブルに置いてあった芳村のスマホが鳴った音で、俺は起きた。
手に取るとLineがきてた。
“明日は何時に、待ち合わせしますか?”
彼女から…か。
俺は勝手にカチャカチャ…操作し返信した。
“申し訳無い。今週は、急用ができてしまい会えない。ごめん”
暫くすると、またLineが鳴った。
“解りました。あまり無理しないで下さいね。また、連絡待ってます”
それには返信しなかった。
明日は、彼女と会う予定だったのか?
でも…これで週末は2人で居られる。
具合が悪く会えないと返信すれば、きっと看病に来ると思い急用ができたと返信したのは……俺が看病したかったからだ。
俺が移したと言う罪の意識もあるが、彼女に看病させたく無かった。
俺がつきっきりで看病してやる‼︎
まだ芳村はゼェゼェ…荒い息とうわ言らしき言葉を発してたが、何を言ってるか?は解らない。
まだ、辛そうだな。
時間を確認すると19時だった。
「もう、そんな時間なのか」
俺は芳村の状況次第では、泊まって看病しようと思ってきた。
「水分と何か食べさせないと…」
冷蔵庫からスポーツドリンクとゼリーを持ってきてベットに上がり、芳村の頭を抱えスポーツドリンクを飲ませようとするが、上手く飲み込めないのか?口が開かないのか?口元から垂れてしまい慌てて俺の袖で拭く。
「……芳村、ごめん」
芳村をまた寝かせ、俺はスポーツドリンクを口に含み芳村の口を手で開かせ、ゆっくりと少しずつ流し込む
コクッコクッ…上手く流し込めたらしく喉が動いた。
「ゼェゼェ…おいし…ゼェゼェゼェ」
「もう少し飲むか?」
「ほし…い…ゼェゼェ」
俺はまたもや口に含み少しずつ流し込む。
その後も芳村が「……も…いい」と言うまで、同じ行為を何度も繰り返した。
芳村はまたそのまま眠りに就いた。
「喉渇いてたんだな。この熱と汗じゃ水分も欲しくなる…よな」
熱が篭った部屋を換気し、そして寝室を出てゼリーを冷蔵庫に戻し、買って来たパンを嚙りソファで食べた
今日は寝ないで看病するつもりで居た。
祐一達、上手く言ってくれただろうか?
あいつらの事だ、午後の授業も寮の方も上手くやってくれてるはずだ。
何も言わなかったからな、心配してるだろうな。
スマホを持ち切ってた電源を入れようとして…止めた
今日は誰にも邪魔されず、芳村の側に居たい!
祐一達には月曜日にでも詳しく話す事にした。
そしてまた寝室に入り換気してた窓を閉め寝てる芳村のベットの脇に座り、また手を握りしめた。
「芳村.芳村」
名前を呼んでもゼェゼェ…荒い息だけ聞こえる。
早く元気になって、また俺の頭を撫でてくれよ!
笑うと垂れ目になる芳村の顔が浮かび「偉い.偉い」「ったく、海堂は…」そう言いながら、俺の頭を撫でる姿が……。
ごめん!
でも、俺……芳村が好きで好きでたまんねぇ~んだ!
俺の気持ちを知って、どう思っただろうか?
意識がはっきりした時に……拒絶されたら……自分のしでかした事は……拒絶され軽蔑されても仕方ない……でも、俺の本気のこの想いだけは芳村に届いて欲しい。
何度でも謝るから、芳村が納得するまで謝るから……拒絶だけはしないで欲しい。
頼む‼︎
俺はまたギュッと手を握り祈った。
早く良くなって欲しいが、起きた時に拒絶される事を考えると……怖くて仕方なかった。
それは芳村を失うかもと言う恐怖だった。
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