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第70話
芳村に ‘どうしようって言うんだ‘と言われ、俺は咄嗟に芳村の後頭部を押さえ、唇を奪う。
「んぐっ…かい…」
口を開いた瞬間を見逃さず、直ぐに舌を入れた。
レロレロレロ…クチュクチュクチュ…ジュルジュルジュル……
「ん…かい…んん」
俺の肩を叩き離れようとする体を片手で引き寄せ、更に深い口づけを仕掛けた。
クチュクチュクチュ…ジュルジュルジュル…チュパチュパチュパ…レロレロ……
舌を絡め吸い上げ咥内を思う存分貪る。
やっと唇を離した時には、芳村は肩で息をしてた。
俺はそのまま芳村を抱きしめた。
「俺の本気は、こんなもんじゃないからな‼︎ セックスは……芳村の同意無しではしない!……が、俺の本気を解って貰うまでキスする‼︎ 逃げても無駄だからな」
「はぁはぁ…海堂……」
「芳村は絶対に俺を好きになる‼︎ 俺が好きにさせて見せる‼︎」
「……凄い…自信だな」
「自信は無いさ。色々ハンデはあるからな。でも、そう思わないと芳村は逃げるだろ?芳村は常識人だからな。俺が頑張んねぇ~と、芳村の考えを変えられないだろ?だから、俺は言葉でも行動でも好きだとアピールするだけだ‼︎」
「……それでも好きにならなかったら?」
「好きになるさ。この俺がこんだけ好きなんだから」
‘それでも好きにならなかったら?‘ と芳村は言ったがそれは裏を返せば好きになる可能性はあるって事だろ?それか…今は気になってるって段階か?俺を意識してくれるだけでも、また1歩前進したと思った。
「……諦めないって事か?」
諦めて欲しく無いって言い方だった。
俺の願望がそう思わせたのかも知れないが…。
「諦めない‼︎ 俺の全てを知って、それでも好きになって欲しい‼︎」
「……お前の気持ちは解った……今は、何も考えられない……」
俺の気持ちをぶつけただけだ。
今直ぐに芳村の気持ちが俺に向くとも考えては居ない……断られたり拒絶されないだけ良いと思ってる……芳村の優しさなんだと思う。
「解った。俺が芳村を好きだって気持ちは嘘じゃない……本気だ‼︎ 今は何も考えられないって言うなら、時間掛けても良いから考えてくれ! 教師だとか男同士だとか年上だとか、そんな事で俺の気持ちを拒絶しないでくれ! 俺自身を見てくれよ‼︎」
「……解った……今日はもう帰ってくれ」
「でも……まだ本調子じゃ…」
「もう、だいぶ楽になった。少し1人で色々考えたい……それに寮の事もあるし」
本当は1人にはさせたく無かった……けど……俺がここに居ると、芳村もゆっくり出来ないと思い直した。
「……解った、帰る。……けど…何かあったら電話掛けてくれ‼︎ 飛んで来るから」
「……ありがと……気を付けて帰れよ」
それでも俺の事を心配してくれる芳村。
俺は後ろ髪を引かれる思いだったが、その場に芳村を残し玄関に向かい部屋を出た。
バタンッ!
玄関ドアの閉まった音で、海堂が出て行ったのが解り「はあ~~」と息を吐いた。
海堂の真剣な気持ちと顔に……緊張してた。
本気……か。
海堂の真剣な気持ちは痛い程伝わった…私も真剣に答えるべきだと解ってた……けど…何て答えれば良いか……。
今まで、あんなにストレートに告白された事は無かった。
これまで付き合ってきた人は全て女の子で……男子校の教師になって、その世界は割と身近に感じたが私自身は否定も拒絶もしてない……男子校にありがちな事だと他人事だと思ってるだけだった。
中学の時には2人程、何となく仲良くなった子と付き合ったりした……おままごとみたいな付き合いだった
高校では告白されて、可愛い~とか好きになれそうだと思って付き合った……彼女とは2年近く付き合ったし私の初めての相手でもあった。
そして大学では同級生とバイト先の子とサークルの後輩と付き合った。
告白された事もあったし、何となく私の事を好きだと言う雰囲気が解り気も合うしと思い、男から言った方が良いのだろうと、私から告白して付き合ったりもした。
今までの歴代の彼女達は雰囲気とか流れで付き合う感じだった。
現に、今の彼女も友達に付き合ってみろよと周りから言われて、何となく付き合うようになった。
格段にモテるわけでも無かったが……彼女は常に居た
……私は海堂みたいに、真剣な気持ちで付き合った事があるのだろうか?
付き合ってる時は相手の事を考えては居たし、優しくもしてたし大切にしてたとは思うけど……海堂みたいな情熱はあっただろうか?
……いつもその場の雰囲気に流されて自分の意思では………今まで気にもしてなかった。
それだけに……海堂のあの情熱が怖い‼︎
囚われてしまう前に……逃げ出したくなる。
どうしたら……良い?
海堂が居なくなった静かな部屋で1人で考えてた。
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