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第71話
芳村の部屋を出て、寮に着いたのは夕方だった。
俺の想いは全て曝け出したつもりだ。
芳村に思いの丈を話し、俺はある意味すっきりしてた
部屋を出た時には悶々と考えてたが、電車とバスに乗り時間が経つにつれ、前向きに考えるようになった。
これからは、気持ちを隠す必要は無い‼︎
芳村を堂々と口説いていける‼︎
考えようによっては、これから自分がすべき事がはっきりしたと清々しさを感じた。
こっそり寮に入り、騒つく寮の中を何食わぬ顔で歩き部屋に入った。
「よっ! 早かったじゃん」
床に座り、スマホを弄ってた祐一が顔を上げ出迎えてくれた。
「何で、居るんだ?」
祐一が座ってる近くにドサっと座った。
「お前、それはないだろ?早退するって言って訳も何も言わずに出てったら気になるじゃん。どこに行ったか?は、想像つくけどな。芳村の所だろ?」
芳村の体調不良を聞いて心配で飛び出したのは、気がついてるらしい。
「ああ。で、祐一1人?」
「昨日、学校終わって伊織と相談して、お前の部屋に泊まった。アリバイ工作しておこうと思ってな。部屋の明かりが有れば怪しまれないと思って」
芳村の所に行く事だけ考え、そこまで頭が回らなかった。
持つべきものは、出来た友人だな。
「ありがと、助かった。で、伊織は?」
「あいつなら夜中からどっか行ってる。流石に、そろそろ戻って来ると思う」
「伊織らしいな。で、祐一はずっと部屋に居てくれたのか?」
それも怪しいとは思ったが……。
「俺も……夜中は居なかった……が、昼前には龍臣の部屋に戻った。ったく、伊織奴! いつまで遊び歩いてるんだ!」
結局、2人共夜中は居なかったって訳だ。
俺の事を心配してたとは思うが、しっかり自分達も楽しんでんじゃん。
ま、良いか。
俺のベットが使われないだけ、マシか⁉︎
「ま、サンキュな。色々助かった」
「で、芳村の具合どうだった?それで行ったんだろ?やっぱ、お前に移されたのかなぁ~」
「……たぶん、俺のせいだ!」
芳村との事を話そうとした時に、部屋のドアが開いた
「あれ?龍臣、帰ってたの?」
お気楽な伊織は、さっぱりとした顔をしてた。
こっちが大変な事になってんのに……このヤリチンが‼︎
お気楽なもんだぜ、ったく‼︎
ドサっと俺達と同じように床に座り、手にしてた水のペットボトルをゴクゴク…飲んだ。
「龍臣の服、適当に借りたからな」
制服でそのまま寮に来たらしく、2人分の制服がハンガーに掛けぶら下がってた。
「ああ、良いよ。お前、どこほっつき歩いてた?」
「夜中に行って昼頃に戻ろうとして廊下歩いてたら捕まって……で、今戻った所」
2人は相手してたって事か。
よーやるよ!
「伊織は節操が無いからな。直ぐにホイホイやって、下半身がだらしなさ過ぎだっつーの」
「はあ⁉︎ 祐一だって夜中に行ってたじゃん。俺より先に出てった癖に、良く言うよ! 」
「俺は前以てアポ取ってたし~。お前みたいに、その場の行き当りばったりじゃねぇ~から」
「どうせ、セフレだろ?やだねぇ~、モテない男の僻(ひが)み⁉︎」
「勝手に言ってろ!」
伊織の下半身のだらしなさは、今更言っても仕方ないし……俺も人の事は言えない。
言い争う2人だが……色々言ってるが、俺を心配してここに居るって事だよな。
この2人には話しておこうと思った。
「なあ、そろそろ良いか?」
「あっ! 悪い! で、どうだった?」
「看病してたんだろ?芳村、喜んだ?」
心配と興味とが入り混じってる2人に、俺が熱を出し芳村が部屋に様子見に来た時からさっきまで芳村に俺の想いを全て話しぶつけてきた事までを話した。
俺の話を驚き黙って真剣な顔で聞く2人。
「龍臣、ごめん。俺、余計な事したかもな。そんな事になるとは思わず……俺達が様子見に行くより芳村が行けば龍臣も喜ぶと思って……ごめんな」
伊織は軽く頭を下げて謝ってきた。
「それは伊織達のせいじゃない。俺が悪かったんだ。今まで熱出した事無かったし頭も朦朧として夢だと思って……意識が混濁してたとしても……やはりそれに関しては俺が一方的に悪い」
伊織達のせいじゃないと言っても、2人共申し訳無さそうな顔をしてた。
俺の為を思ってした事だし、あの事に関しては誰のせいでもない…俺が悪いのは解ってる。
「で? 芳村は最終的に、お前の気持ちは解ってくれたのか?」
「ああ、最初は ’何も無かったし何も聞いて無い‘ と忘れようとしてるのか?俺の事を考えてそう話したのか?は解らないが、そう言ってた。けど、俺……自分のした事をきちんと謝りたかったし、もう俺の気持ち全部言っちまおうと思った。このまま無し崩しに何も無かった事にしたら……先に進めないと思った」
「……そうか。で?」
「全部、俺の気持ち話した。芳村はどう思ったかは解らないけど……1人で考えたいって…。俺がどれだけ本気か?は、解ってくれたと思う」
「そうだな。今までは龍臣の気持ちも知らずに居た芳村が考えてくれるって話すまでになったって事は、前進してるって事だ」
「祐一の言う通りだ。考えようによっては、前進って事だ。な、龍臣」
励ましてくれる2人に感謝した。
「俺もそう思う。芳村にも ‘これからは遠慮しない。俺の本気を見せる‘ って、宣言して来た。もう前に進むだけだ‼︎ 今回の件が良いキッカケになったと思う。これから芳村を口説いて絶対に、俺の者にする‼︎」
パンッ!
俺の肩を軽く叩いて
「それこそ龍臣だ‼︎」
「お前の気が済むまでやれよ。協力するぜ」
伊織と祐一も、何だか顔が明るくなった。
それからは、どうやって芳村を口説くか?話し合った
真剣に話す時も有れば脱線して笑い話しになったりと2人と居ると気持ちが楽になる。
辺りが暗くなった時間に、2人は家に帰って行った。
俺はシャワー浴びて食堂で寮の飯を食べ、ベットでゴロ寝し、これからの事を…取り敢えず週明けの月曜日に会う芳村との事を考えて居た。
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