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第72話
「今日も、来るのかな?」
私はいつも通りに昼休みに教務室に居た。
週末の事を考えると、ここに居るのもどうかと思ったが……意識してると思われるのも…それに……ここに私が居なかったら、海堂が傷付くと思ったからだ。
普段通り.いつもと変わらず……そう心掛けてた。
朝のHRに教室に行くのも……ドキドキ…したが、海堂を見ないようにする事でいつも通りにHRは終えた。
3時間目に授業があり、普段通りを心掛けて授業してたつもりだった。
でも…海堂の熱い視線を感じ、何度も目が合ってしまう。
耐え切れずに、他の生徒に朗読させてる間に、席を回りながら海堂の頭を軽く小突いた。
「いってぇ~」と言ってたが、無視し教室の中を回った
そんなに見るな! と思いながら……いつもは気付かなかったが……これまでも、あんな熱い視線を送ってたのか?
今日、やけに目が合うのは……私も海堂を見てるって事か?
意識しないようにすればする程、意識してしまう。
何だか、いつも以上に疲れた授業だった。
「はあ~」
さっきから溜息が出る。
来て欲しいような…来て欲しくないような……どんな顔で何を話せば良いのか?……悩む。
「はあ~」
ガラガラガラ……
「おっす! 芳村~、また寝かせて~」
いつもと変わらない態度で、いつものソファに勝手に寝そべった。
「か.海堂」
「ん? 授業始まる5分前には、起こして」
そう言って常備してある大判のブランケットを掛け寝た⁉︎ようだ。
何で⁉︎ いつもと態度が変わらないんだ!
確か……‘好きで好きで好きなんだ‼︎’ とか ‘これからは遠慮しねぇ~、本気でいく’ とか言ってたよな?
海堂が帰ってからも、散々考えたし悩んだ。
さっきまでどんな顔で会ったら……と、悩んでたのがバカみたいだ。
もしかして……海堂も1日冷静になって……何も無かった事にしようと……してるのかも。
それならそれで……私も合わせる…か。
あんなに情熱的に告白され熱い眼差しで、傲慢か?俺様なのか?と思う程に激しい感情だったが、今の海堂からは微塵も感じられない。
……これで良かったんだ。
顔の半分以上をブランケットで隠し寝てる海堂を眺めてたが……私も時間まで本を読んで過ごした。
芳村が朝のHRで1度も俺と目を合わせ無かった事に、少し腹を立てた。
でも……感じようによっては意識してるって事だと思い直した。
3時間目の芳村の授業は、片時も芳村から視線を外さなかった。
芳村の一挙手一投足も見逃すまいと、ずっと見つめた。
俺の熱い視線が届いたのか?
芳村と何度も目が合うが、芳村は直ぐに目を逸らす。
最後には教科書で軽く頭を叩かれたが……間違いなく、俺を意識してる。
「海堂」
何度か呼んでも起きない。
仕方なく椅子から離れ、ソファの側でしゃがみ込んで肩を揺すり起こす。
「お~い、海堂~。時間.時間だぞ~」
いきなり手が出てきて後頭部を押さえられ、唇を奪われた。
チュッ!
そして直ぐに手が離れ唇も離れたが、あまりの早技で無防備だった私は一瞬言葉を失った。
「………か.か.海堂!」
「ん?何?」
白々しいって言うか.太々しいって言うか……惚(とぼ)けてるのか?
キス……したよな?
「……キス…した?」
「うん! した‼︎」
「はあ? ‘した‼︎’ じゃないよ‼︎ お前、何考えてんだ! ここは学校だぞ⁉︎」
「学校じゃなきゃ良いの?だってよぉ~、俺、寮だし学校以外だと出来ねぇ~じゃん」
「バカ‼︎ 学校でも学校以外でもだめだ‼︎」
海堂の頭を叩こうとした手を取られた。
「俺、言ったよな⁉︎ もう遠慮しないって。これからは芳村が俺の事を好きになるまで積極的にアピールするって」
手を振り解き
「……困る」
「芳村……好きだ」
そう言ってソファから立ち上がり教務室を出て行った
海堂が出て行ったドアを見つめ「……困るよ」と、また呟いた。
それからの海堂は昼休みに教務室に居ないと解ると、避難して居た職員室まで現れた。
職員室なら他の教師も居るだろうから、何もできないし言わないと思ったが……。
「芳村先生、進路の事で相談があるので、ちょっと良いですか?」
他の教師に聞こえるように、わざと丁寧な言葉で話し私に断れないようにし進路指導室に2人で行く事になった。
ドアを閉め、私を背後から抱きしめ
「逃げても無駄だよ⁉︎ 教務室に居ないなら探すまでだ! 探しても居ないなら、校内放送かけても良いんだぜ」
「なっ!……そんな事まで」
「逃げる芳村が悪い! だったら、大人しく教務室に居るんだな?」
「……解った……でも、用事もある時も」
「逃げないって約束するなら、昼に居ない場合は放課後に行く」
「…………」
体をクルっと回され海堂の正面に立つ。
海堂は顔を近づけチュッ! とキスした。
触れるだけの唇が離れ、私の目を真っ直ぐに見て
「好きだ」
それだけ言って、進路指導室を出て言った。
それから学校がある日は、毎日、昼休みか放課後に教務室に現れ、ソファに寝たり少し話をしたりするが……必ず、キスと「好きだ」と言って立ち去る。
最初の1週間は私も抗ったりしたが、キス以上はしないと解ると……海堂の好きにさせてた。
それで海堂の気が済むなら……そう思ってた。
海堂が言う遠慮しないとか積極性にアピールするって……これなのか?
海堂の考えてる事が解らない。
それから私の頭の中は、海堂の事を考えてる事が多くなった。
それこそが海堂の思惑.策略だとは思わずに、私はどんどん海堂の策略に嵌ってた。
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