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第75話

生徒達から、次々と合否の報告が私の所に来るが……海堂からの連絡はない。 確か……今日、発表なはず⁉︎ まだネット検索してないのか? そう言えば、成宮や桐生からも連絡はない。 同じ大学を公募推薦で受験した何人かは既に昼休みに職員まで「合格しました」と言いに来たが……ネットでの発表はされてるって事だよな? 等々、昼休みには3人共来なかった。 落ちた⁉︎ 海堂はともかく……成宮と桐生は合格はしてると思うが……受験の時…何かミスしたか? 成宮と桐生に限って……それは無いと思うが…こればっかりは解らない。 午後からの他クラスでの授業の間も、ずっと気になって過ごした。 放課後になり、職員室では生徒達の何人かは、担任に報告しに来る中で、私もずっと待ってた。 もう今日は連絡無いだろうと思ってた頃に、成宮と桐生が揃って職員室に入って来た。 「芳村~、俺達受かった~」 「合格しました」 やっと来たか! 「そうか~、良かったな。お前達なら大丈夫だと思ったが……なかなか報告して来ないからどうしたか?と思ったぞ。ん、良かった.良かった」 ホッと胸を撫で下ろした時だった。 「ん?お前達だけか?海堂は?」 2人は顔を見合わせ言い難そうな顔をして見せた。 何となく察して「そうか」とだけ話した。 「……龍臣……教務室で不貞寝してると思う」 「あいつ……頑張ってたからな」 「そうだな。頑張ってたな……解った。教務室だな」 「ああ、頼む!」 「宜しく」 2人は、海堂の慰め役を私に頼んで職員室を出て行った。 ……ダメだったか⁉︎ 確率としては50%だったが……頑張ってただけに、落ち込んでるんだろうな。 はあ~、何て励ますべきか?考えて職員室を出て、海堂が居る教務室に向かった。 その頃、職員室を出た俺達は帰る為に、生徒玄関に向かう廊下を歩きながら 「お膳立てはしてやったが、後は、龍臣次第だな?」 「だな」 「なあ?芳村と龍臣上手くいくと思う?」 「どうだか?龍臣も結構、強引だしな」 「賭けようぜ?芳村を落とすかどうか?」 「……良いぜ」 「せーので言おうぜ。せーの!」 「「無理‼︎」」 「「…………」」 「賭けになんねぇ~じゃん」 「良く考えてみろよ。龍臣には悪いが……芳村は常識人だし彼女持ちだし、今まで男相手は考えた事もねぇ~だろーし……幾ら、龍臣が強引に頑張っても無理だろ」 「だよな~。俺もそう思うけどよ…ま、龍臣が納得するまで頑張ってみるのも良いじゃん」 「やるだけやって無理なら納得するだろうしな。俺達が言っても聞く奴じゃねぇ~し」 「だな。けど、万が一、芳村が龍臣に落ちたとしたら……それはそれで龍臣の努力と強運だな」 「そうだな。俺達から見れば、本気になれる相手が見つかった龍臣がちょっと羨ましいよな。俺達には、できない事だから少しでも協力したいよな」 「そうだな。1人ぐらい本気の相手と結ばれて欲しいよな。俺と伊織には無い情熱が龍臣にはあるし。無理でも納得するまで頑張れば良いよ」 「だな」 2人がそう言いながら帰ってるとは知らずに、海堂の待つ教務室の前に居た。 「ふう~~。良し!」 落ち込んでるだろう海堂を励ますのに、気合を入れてドアを開けた。 ガラガラガラ…… 教務室のソファでブランケットを頭から被り、横になってる人物が居た。 海堂だろうな。 やはり不貞寝…か。 「海堂?」 「…………」 返事が無いって言う事は、余程落ち込んでると見た。 ソファの側まで行き、屈んでもう1度話し掛けた。 「海堂……落ち込むのは解るが……次の一般入試まで時間がある。まだ諦めるな!……海堂が拘らないなら他の大学も受けてみろ。私も協力はするから」 「…………」 ダメだな、相当落ち込んでる。 余程、桐生達と一緒の大学に行きたかったんだな。 頑張ってただけに、落ち込む気持ちも解る……が、ここで勉強意欲や目標を無くすと、次の一般入試も危ない。 ここまで頑張ったんだ、最後までやらせたい。 「今は落ち込んでも仕方ないが……気持ちを切り替えて、これからを考えよう」 そう言って頭を撫でようとした時に、ガバっ! ブランケットを持ち上げ上体を起こし、私を抱きしめてきた 「芳村! 受かった‼︎ 受かったんだ‼︎」 耳元で大きな声でそう叫び、一瞬何の事か解らずそれから嬉しさが込み上げた。 「本当か⁉︎ 本当に受かったんだな。やったな‼︎」 思わず私も海堂の体を抱きしめてた。 「芳村のお陰だよ。ありがと」 私は体を離し、海堂の頭を撫で 「私のお陰じゃないよ。海堂が頑張った成果だよ」 褒めてやると、嬉しそうな顔をし破顔した。 可愛い~な。 「芳村……そう思うなら……俺に、ご褒美くれよ」 何を言い出すのか?と思ったが……海堂の頑張りを見て居ただけあって、喜ぶなら何か買ってやっても良いと思った。 「ん?……高い物はダメだぞ。あと……他の生徒には話すなよ。で?何が欲しい?」 「物なんかいらねぇ~よ。そんなのは自分でも買える!……俺が欲しいのは、芳村の時間だ‼︎ 1日、俺とデートしてくれよ‼︎ そうだな……あと2週間でクリスマスだ……24日を俺と過ごしてくれ!」 24日?クリスマスイブじゃないか? 恋人同士が過ごす日……まだ、彼女とは約束してないが……彼女はそのつもりだろう……困る‼︎ 「………他の日じゃダメか?」 「他の日じゃダメだ‼︎ クリスマスを一緒に過ごす事に意味がある‼︎」 彼女と約束してようが、俺には関係ない‼︎ 俺は自分の好きにするまでだ‼︎ 「……考えさせて…欲しい」 「考える必要はねぇ~。それ以外の日は、受け付けねぇ~。俺の頑張りを認めてくれるなら、それくらいのご褒美は良いだろ?」 考える時間を与えると断れると思った。 迷ってる今なら……。 「………困る」 俯く芳村の顔を上げさせ、唇を奪った。

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