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第76話

クチュクチュクチュ…ジュルジュルジュル…… 「か…海…んむ…」」 いつもは様子を見てから深いキスをする俺だが、今は無理矢理に咥内に舌を捻じ込み絡めるキスをした俺の肩を叩き強引に体を離し突き放す芳村に俺の気持ちを叫ぶ。 「好きだ‼︎ 芳村の事が好きなんだ‼︎」 「…………」 顔を伏せ表情は解らないが、芳村の気持ちは迷ってると感じた。 「12月24日……待ってる。そうだな、海にでも行く?芳村、車出してよ」 「………困る」 芳村の返事など聞かない‼︎ 「冬に海見に行く奴なんて居ないからな。誰の目も気にせず寒い中、手を繋いで海辺を歩くのも良いな~。うん、そうする‼︎」 「………そんな勝手に……困る」 困る.困るって言う芳村は態度も言い方も迷ってる証拠じゃん。 嫌ならはっきり断るはず……芳村の煮え切らない態度を待ってたら、埒が開かない! 俺は強引に話を進めた。 「どこが良いかな~。横浜?湘南?鎌倉?ん~どこも捨てがたいなぁ~。良し! 湘南から鎌倉辺りにしよう。じゃあ、24日.江ノ島駅に11時な‼︎」 「……困るよ」 顔を伏せてる芳村の頭に1つキスをした。 チュッ! 「芳村は必ず来るよ‼︎ 来るまで待ってる‼︎」 そして俺は芳村の返事も聞かずに、ソファから立ち上がりドアに向かう。 ドアを開け、最後にもう一度言った。 「24日.江ノ島駅に11時! 来るまで待ってる‼︎」 言い放ち、教務室を出て教室までの廊下を歩く。 芳村が迷ってるのが、手に取るように解る。 その態度からも、俺に気持ちが傾いてると思った。 多少強引でも俺から行動を起こさないと、芳村は色々考えて雁字搦めになって動けないと思った。 芳村が俺の気持ちに応えられない原因は何か?男同士.歳下.生徒と教師……色々あるだろうが、それを全て2人で話し合い解消したい。 今度の24日はその事も含めて……彼女と過ごすのか.俺を取るのか……俺にとっても1つの賭けだった。 世間一般では、恋人同士が過ごす日だ……彼女が居る芳村にはハードルが高い日だが……俺はわざとその日を選んだ。 確率的にはまだ俺の方が部が悪い……が、確率的にも50%だった公募推薦が受かった事も俺の自信に繋がった。 確率が低くてもやるだけやる‼︎ 自分が後悔しないように! 大学は決まった‼︎ 残りの高校生活は僅かだ、実質2月からは自由登校で殆ど来る事が無くなる。 少しの焦りもあり、これからは強引に芳村を口説く事に決めた。 芳村は必ず落ちる‼︎ 俺の者になる‼︎ そう言い聞かせる事で叶う気がした。 海堂が教務室を出て行ったドアを見つめた。 「……困るよ……海堂……」 そしてソファに座り頭を抱えた。 海堂が大学合格した事は凄く嬉しい……海堂の頑張りを見てたから……。 どうして、あんな事を言うんだ? なぜ、私を困らせる? どうしたら良い? 大学受かったご褒美が……物じゃなく私の時間が欲しいと言う……海堂は本気なのか? でも……何度か見た海堂と他の生徒…2人で……現場を見たわけじゃないが、何をしてたか?は、相手の雰囲気で何となく解る。 私を好きと言いながら……どう言う事? 解らない……海堂の考えてる事が……。 24日.江ノ島駅に11時と言って、約束もして無いのに勝手に言い放って出て行った。 ……これが責めて24日じゃなければ……いや一生徒とこれ以上親密になるのは……。 ‘来るまで待ってる’ と言ってたな。 海堂とこれ以上は……不毛な気がする。 確かに、男同士でもセックス出来る事は身を持って知ったが……その先に未来は無いし……海堂はまだ若いし元々は女の子を相手にしてたんだ……今は男ばかりだから男を相手にしてるだけで、この閉鎖的な異世界から出たら、女の子は選り取り見取りだろう……そうなった時に捨てられるのは私の方だ……やはり先は無い…な。 そこでハッと気が付いた。 今、私は……海堂との未来を考えてた⁉︎ あの熱烈な求愛と毎日毎日キスだけ……そうかと思えば、今日みたいに強引な行動に出る海堂に……流されてる⁉︎……それとも……惹かれてる⁉︎ 毎日毎日……頭の中は海堂の事でいっぱいで……惹かれてたとしても……今ならまだ間に合う。 卒業と同時に、お互い時間が経てば忘れる……そして思い出になる? 私の初めての男として……この先、男とは考えられないし。 「はあ~」 24日……彼女も一緒に過ごすつもりだろうし私もそのつもりだった……海堂さえ、あんな事を言わなければ……迷う事も無かった。 この時に迷う事自体がおかしいと、自分では気が付かなかった。

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