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第79話
予約したレストランは品良くクリスマス仕様に花が飾ってあり、モダンな雰囲気でとても良かった。
予約した席に案内されテーブルに着いた。
「海堂、ここに来た事あるのか?」
小さく囁く芳村は俺が予約したレストランが意外そうだった。
「いや、1度も来た事ない。食事するのに、どこが良いか色々検索して雰囲気が良さそうだから、ここにしてみた。まあ、雰囲気は上々だな」
「はあ~、やっぱ今時の子だな」
「コース料理予約したけど、パスタとドルチェは選べるから、何にする?」
「ん……生ハムとアボカドのパスタか?サーモンとイカのクリームパスタも良いなぁ~」
「じゃあ、その2種類で取り分けて食べようぜ」
「それ、良いね♪」
やっと笑顔が見れた。
それからコース料理が運ばれ、俺達は食べながら話しをした。
料理の事から始まり、食事が進むと会った時の堅さが無くなり、芳村も楽しもうと言う感じが見てとれた。
2人の共通の話しは、学校の事だったりクラスの事を楽しく笑って話した。
俺も芳村も彼女の話しは一切口に出す事はしなかった
それは暗黙の了解で、お互い今日を楽しもうとしていた。
ドルチェまで食べ、食後のコーヒーを飲んでると
「あ~美味しかった~♪ パスタシェアして正解だった。それで、ここ出たらどうするんだ?」
「ん~、海に行く!」
「この寒いのに?」
「寒いからだよ。それに海に行くのが目的なわけだし」
「そうか、解った。海に行こう。ここからならもう近いしな」
俺達は充分に腹も満たし、コーヒーを飲み終わったタイミングで店を出る事にした。
会計の際に、芳村は払うと言い張るが「俺が誘ったデートなんだから、俺が払う」と言って、さっさと財布から金を出し会計をした。
芳村は ‘デート‘と言われた事で、一瞬固まり金を出すタイミングを失った隙に払った。
芳村に、これがクリスマスデートだと意識させる為にわざと俺は言った。
駐車場の車の中で「ご馳走さま。凄く美味しかった」と、お礼を言う芳村は少し照れてるようだった。
何だか、初デートって感じで良いかも。
芳村も素直で可愛い~し!
「次は?」
「海、行こうぜ」
「本当に?寒いぞ」
「寒いから良いじゃん」
「良く言ってる意味解んないけど…ま、良いか」
海堂が、こんな時期外れの寒い海に行きたいと言ってたが、その時は ‘若いなぁ~’ と思いながら、車を近くの海に向かい発進させた。
江ノ島.湘南と近い事もあり、直ぐに海岸に着いた。
駐車場に車を置き外に出ると、潮の匂いで海に来たと思うと同時に、冷たい風で寒さを感じた。
「あ~海だ~! 少し歩こうぜ」
海を見て喜ぶ海堂は、寒さを感じてる様子はない。
海岸への道を歩いて階段を降り砂浜を歩く。
やはり時期的な事とこの寒さで殆ど人は居なかった。
「さむっ! やっぱ人居ないな」
「こんな時期だからな。本当に、寒い……でも冬の海も綺麗だな。人が居ないからかな?」
「かもな。ごちゃごちゃしてねぇ~しゴミもねぇ~し。で、こんな事も出来るしな‼︎」
俺は寒そうに擦り合わせて息を吹き掛けてる片手を握って繋いだ。
「か.海堂⁉︎ て、手……」
「何?誰も見てねぇ~し、今日はデートなんだぜ。手ぐらい繋ぐだろ?」
「……そうか」
嬉しそうな海堂の顔を見たら……何も言えなくなった
今日ぐらいは……好きにさせよう。
繋がれた手は、そのままにした。
私が拒否しないと解ると、更に嬉しそうな顔になる。
全く、普段は強面な顔の癖に……子供みたいなくしゃっと笑う……可愛い~と思った。
「なあ?海をバックに写メ撮って良いか?」
「……いいよ」
断られると思ったんだろう、私が了承すると、また嬉しそうにくしゃっと破顔した。
海堂はコートのポケットからスマホを取り、海をバックに片手を繋いだまま私の身長に合わせ体を寄せ、器用にスマホを操作し自撮りした。
カチャッ!
撮った写真を見て
「芳村、顔が固い。もう一枚な。今度は、笑えよ」
「笑えって言われても、急に笑えないよ」
「ほら、撮るぞー。笑え~」
カチャッ!
一応は、口角を上げ笑ってみたが……。
「ん~、ま、さっきよりマシだな」
そう言ってスマホをポケットに入れて「あっちに行ってみようぜ」と歩き出す。
手を繋いでるから私も自然と歩き、波の音と砂浜を歩く音がやけに聞こえる。
緊張してる自分が解る……そしてドキドキ…してる。
手を繋ぐ事も自撮りの時に体や顔が近い事も……意識してるのは、私の方だ。
「寒いけど天気がよくって良かった」とか「海が綺麗だな」とか、砂浜の貝を拾ってみたりと何か話したり何かしてないと間がもたない……海堂は余裕があるように見え、私だけが緊張してるのがバレると思った。
「芳村、緊張してんの?」
「ど、どうして?」
「ん、何となく」
芳村が緊張してるのが伝わる。
俺だって、本当は緊張してるしドキドキ…もしてる。
でも、それはお互い意識してるって事だと思った。
芳村の気持ちも俺に傾いてるんじゃないか?
多少強引でも俺が積極的にいかないと、世間や常識に縛られてる芳村からは動く事はできないと思ってる。
今日は、俺の好きなようにさせて貰う。
ご褒美と言う名の初デートだからな。
芳村の気持ちがはっきりとはしてないが……揺れてるのかも知れない……でも、俺の気持ちを知った上で、今日来てくれたって事は多少気持ちは動いてるって事だよな。
今日は、恋人気分で過ごす‼︎
そして、もっと.もっと俺を男として意識させたてやる‼︎
俺を好きにさせてみせる‼︎
芳村が来た時から、俺は今日と言う日に賭けてた‼︎
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