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第80話
「あそこに座ろうぜ」
暫く海岸を手を繋ぎ歩き、海堂に導かれ階段近くの砂浜に座った。
並んで広い海を眺めてた。
「静かだな」
「殆ど、人が居ないからな」
「芳村、寒くない?」
「ん?歩いてた時は寒さも感じなくなったけど、やっぱジっとしてると寒いな」
私がそう話すと、海堂は繋いだ手を離し立ち上がり、体育座りしてた私の背後から足を投げたし、抱きしめるように自分のコートに私を包み込む。
「か.海堂!」
恋人同士がするような体勢に驚きワタワタ…そしてドキドキ…した。
「こうしてれば寒くないだろ?」
背後から抱きしめ、肩に顎を乗せ耳元で囁く。
ドキドキ……止まらない。
かと言って振り解く事も出来ず、ただジっとして居た
肩に乗せた顎で顔が近いし、回された腕.背後から抱きしめられ密着された背中や腰.私の体全てが敏感になってた。
そんな私の事など気にもせず、呑気に話す。
「あったけぇ~な。ずっとこうして居たい」
「…………」
返事は出来なかった……けど、海堂の温もりは感じてた。
「芳村……好きだ‼︎」
今日、会ってから初めて好きだと言われた。
「……………」
返事が出来ずに俯く私の顔を強引に上げさせ、唇を奪われた。
チュッ!
軽いキスを黙って受け止めた私を見て、海堂は舌を捻じ込んできた。
「んん…か…んん」
何も言わせないと、海堂の舌が私の咥内を蠢き絡めとる。
クチュクチュクチュ…チュパチュパチュパ…ジュルジュルジュル…クチュクチュクチュ……
だめだ‼︎
このままだと流されてしまう!
海堂の回された腕を叩くと、最後にチュッとキスし唇は離れた。
「ごめん! 我慢出来なかった」
「…………」
俯き何も言えず砂浜を見つめた。
海堂は、また力を込めて私を抱きしめた。
「ごめん! 今日、来てくれた事が嬉しかった。俺を選んでくれたんだよな?」
「………違う。約束したから……海堂の大学受験頑張ったご褒美…だ」
自分の気持ちが解らない私はこう言うしかなかった。
「……それでも良い‼︎ 俺には大切な日になった。こうして芳村と1日一緒に過ごせる事が何よりの褒美だ」
「…………」
海堂は何も言わない私をどう思ってるんだろう。
海堂がコートのポケットを弄り、スマホを出した。
「このまま写メ撮って良い?」
この体勢で?こんなに密着して?と思ったが、黙ってうなづいた。
海堂は自撮りで画面を向ける。
「芳村、顔上げて」
顔を上げ画面を見ると、強張った顔が写し出された。
「芳村、顔固いって。良し!」
そう言って首元に回ってた手で首筋を擽(くすぐ)られた。
「海堂~くすぐったいって~」
笑ってると顔を近づけカチャッカチャッ…数枚撮られた。
写メを確認して「芳村は笑ってる時と凛と立ってる時が1番良いよ」と囁く。
俯く私は私らしくないって事…か。
自分がそうさせてるって解って、海堂も辛いのかも知れない……いつも通りって訳にはいかないけど……なるべくそう努めよう。
「生意気~」
そう言って海堂の頭を軽く叩く。
「それでこそ俺の好きな芳村だ‼︎」
「……ばか」
そう言うのが精一杯だ。
海堂の情熱と強引さに流れないように必死だった。
「さてと、マジで寒くなったから車に戻ろう」
「そうだな」
海堂は先に立ち上がり私の手を引き上げ、そのまま手を繋いで来た道を歩く。
「次は?」
「ん~、そうだなぁ。寒いし、水族館が近くにあるから、そこに行こう」
「水族館?……海堂の口から水族館って」
クスクスクス……
「俺が水族館って言ったら変?」
「変って言うか…クスクスクス……そこはやはり高校生らしいデートって感じだなって思うと……笑える」
クスクスクス……
「だって、寒いじゃん。ゲーセンとかボーリングとかでも良いけど……芳村嫌だろ?それに折角のデートだし、ベタな方が良いかな?って」
「デートにゲーセンは無いだろ?そんなデートしたら嫌われるぞ」
「だから水族館なんだって! やっと芳村も今日がデートって思うようになった?」
「まあ……ご褒美だしな」
「んじゃ…遠慮なく恋人気分で過ごす‼︎」
「初デートって事を忘れるな!」
「……線引きが難しい~」
「良~く、その頭で考えろよ⁉︎」
「解った。取り敢えず俺のデートプランで行く!」
「どんなデートプランなんだか~」
「忘れられない日にしてやるって」
「はい.はい」
海辺に降り立った時とは別に、帰り道はいつも通りの雰囲気になった。
私が開き直った事が雰囲気を良くした。
私次第か……それなら今日を名一杯楽しもう‼︎
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