80 / 141

第80話

「あそこに座ろうぜ」 暫く海岸を手を繋ぎ歩き、海堂に導かれ階段近くの砂浜に座った。 並んで広い海を眺めてた。 「静かだな」 「殆ど、人が居ないからな」 「芳村、寒くない?」 「ん?歩いてた時は寒さも感じなくなったけど、やっぱジっとしてると寒いな」 私がそう話すと、海堂は繋いだ手を離し立ち上がり、体育座りしてた私の背後から足を投げたし、抱きしめるように自分のコートに私を包み込む。 「か.海堂!」 恋人同士がするような体勢に驚きワタワタ…そしてドキドキ…した。 「こうしてれば寒くないだろ?」 背後から抱きしめ、肩に顎を乗せ耳元で囁く。 ドキドキ……止まらない。 かと言って振り解く事も出来ず、ただジっとして居た 肩に乗せた顎で顔が近いし、回された腕.背後から抱きしめられ密着された背中や腰.私の体全てが敏感になってた。 そんな私の事など気にもせず、呑気に話す。 「あったけぇ~な。ずっとこうして居たい」 「…………」 返事は出来なかった……けど、海堂の温もりは感じてた。 「芳村……好きだ‼︎」 今日、会ってから初めて好きだと言われた。 「……………」 返事が出来ずに俯く私の顔を強引に上げさせ、唇を奪われた。 チュッ! 軽いキスを黙って受け止めた私を見て、海堂は舌を捻じ込んできた。 「んん…か…んん」 何も言わせないと、海堂の舌が私の咥内を蠢き絡めとる。 クチュクチュクチュ…チュパチュパチュパ…ジュルジュルジュル…クチュクチュクチュ…… だめだ‼︎ このままだと流されてしまう! 海堂の回された腕を叩くと、最後にチュッとキスし唇は離れた。 「ごめん! 我慢出来なかった」 「…………」 俯き何も言えず砂浜を見つめた。 海堂は、また力を込めて私を抱きしめた。 「ごめん! 今日、来てくれた事が嬉しかった。俺を選んでくれたんだよな?」 「………違う。約束したから……海堂の大学受験頑張ったご褒美…だ」 自分の気持ちが解らない私はこう言うしかなかった。 「……それでも良い‼︎ 俺には大切な日になった。こうして芳村と1日一緒に過ごせる事が何よりの褒美だ」 「…………」 海堂は何も言わない私をどう思ってるんだろう。 海堂がコートのポケットを弄り、スマホを出した。 「このまま写メ撮って良い?」 この体勢で?こんなに密着して?と思ったが、黙ってうなづいた。 海堂は自撮りで画面を向ける。 「芳村、顔上げて」 顔を上げ画面を見ると、強張った顔が写し出された。 「芳村、顔固いって。良し!」 そう言って首元に回ってた手で首筋を擽(くすぐ)られた。 「海堂~くすぐったいって~」 笑ってると顔を近づけカチャッカチャッ…数枚撮られた。 写メを確認して「芳村は笑ってる時と凛と立ってる時が1番良いよ」と囁く。 俯く私は私らしくないって事…か。 自分がそうさせてるって解って、海堂も辛いのかも知れない……いつも通りって訳にはいかないけど……なるべくそう努めよう。 「生意気~」 そう言って海堂の頭を軽く叩く。 「それでこそ俺の好きな芳村だ‼︎」 「……ばか」 そう言うのが精一杯だ。 海堂の情熱と強引さに流れないように必死だった。 「さてと、マジで寒くなったから車に戻ろう」 「そうだな」 海堂は先に立ち上がり私の手を引き上げ、そのまま手を繋いで来た道を歩く。 「次は?」 「ん~、そうだなぁ。寒いし、水族館が近くにあるから、そこに行こう」 「水族館?……海堂の口から水族館って」 クスクスクス…… 「俺が水族館って言ったら変?」 「変って言うか…クスクスクス……そこはやはり高校生らしいデートって感じだなって思うと……笑える」 クスクスクス…… 「だって、寒いじゃん。ゲーセンとかボーリングとかでも良いけど……芳村嫌だろ?それに折角のデートだし、ベタな方が良いかな?って」 「デートにゲーセンは無いだろ?そんなデートしたら嫌われるぞ」 「だから水族館なんだって! やっと芳村も今日がデートって思うようになった?」 「まあ……ご褒美だしな」 「んじゃ…遠慮なく恋人気分で過ごす‼︎」 「初デートって事を忘れるな!」 「……線引きが難しい~」 「良~く、その頭で考えろよ⁉︎」 「解った。取り敢えず俺のデートプランで行く!」 「どんなデートプランなんだか~」 「忘れられない日にしてやるって」 「はい.はい」 海辺に降り立った時とは別に、帰り道はいつも通りの雰囲気になった。 私が開き直った事が雰囲気を良くした。 私次第か……それなら今日を名一杯楽しもう‼︎

ともだちにシェアしよう!