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第81話

車で、数十分程で水族館に着いた。 スマホ検索し、思ってたより建物も大きく驚いた。 クリスマスと言う事もあり、家族連れやカップルと結構な混雑だった。 館内に入って、大水槽の中にはイワシの群れが泳ぎ、その前で記念撮影をしてる人も居た。 館内は程良い気温で薄暗く、水槽は逆に明るく魚の泳ぐ姿が良く見えた。 また大きな水槽には様々な魚が泳ぎ、丁度、俺達が行った時に館内スタッフがダイバーとして水中カメラを持ち間近で魚を撮ったり、色々な角度から撮った写真が専用のモニター画面で写しだされ解説も行われてた 薄暗い事を良い事に俺は芳村の手を握り、その画面を2人で眺めてた。 そして俺は目当てのイルカショーを見る為に、イルカスタジアムに向かった。 やはり人気があり、席は殆ど埋まってた。 「もっと早く来れば良かった」 「立ち見だって充分だよ」 「でも、遠くねぇ~か?」 「大丈夫.大丈夫。ほら始まったよ」 イルカショーが始まると「わぁ~」「可愛い~」と観客席から歓声が聞こえ、スタッフの指示に従い賢く華麗なパフォーマンスに皆んな大喜びだ。 芳村も「可愛い~♪」「凄~い♪」と楽しそうだ。 気持ち良さそうに泳ぎジャンプするイルカ達。 20分程のショーのクライマックスは、それまで個々でショーパフォーマンスをしてたイルカ達が3頭で大ジャンプをし、前に居た客席には水飛沫(みずしぶき)で、また歓声が沸き上がる。 「やっぱり3頭でジャンプすると迫力あるな。夏は水飛沫も気持ち良いけど、今の時期はパスだな」 そう言って笑ってた。 それから深海魚コーナーや貝など色々見て回り、もう1つの目当ての場所に着いた。 「うわぁ~凄いなぁ~」 「だろ?俺も、今日はこれを芳村と一緒に見たかった」 「幻想的って言うか、心が安らぐな」 「ゆっくり見て回ろう」 半ドーム型の空間には大小13の水槽と中央に球型水槽が設置され、世界で一番大きなクラゲや他にも14種類のクラゲが展示されてた。 クラゲを美しく展示する為に考案された球型水槽の中で、緩やかに舞うクラゲは照明演出で青味がかり、一段と幻想的だった。 写真も自由に撮れると言う事で、あっちこっちでクラゲの水槽の前や横で撮影してた。 俺達も球型水槽で撮り、他のクラゲ展示でも写メを撮った。 一通りクラゲ展示を見て回り、もう一度球型水槽に戻り、少し離れた所から揺れるクラゲを2人で見た。 芳村はかなりクラゲが気に入ったらしい。  暫くすると一瞬暗くなり、3Dプロジェクトマッピングが用いられ、まるで潜水船の中に居るように感じられる演出が施された。 それは10分間程のクラゲの生態や飼育について、映像を通して紹介された。 ちょっとした演出だが、芳村も「凄いな」と感心してた。 俺はクラゲの展示は検索して知ってたが、3Dプロジェクトマッピングの演出は知らなかったから、粋な演出に楽しめた。 「あまりクラゲを見る機会がなかったから……こんな風に展示されると、あまりの美しさと幻想的な世界で、ちょっと感動するな。何だか、日常のざわつきや喧騒が嘘のように、ここだけ別世界みたいだ。凄く癒されて何時間でも見てられる」 「また、いつでも見に来れる」 また2人で見ようと遠回しに言い、繋いでた手に力が篭る。 「……そうだな」 黙り込むと思ってた芳村もクラゲに癒されたのか?素直に返事が返ってきた。 曖昧な返事だったが……それでも嬉しかった。 それから10分程芳村は優雅に揺れるクラゲをボーっと見てた。 そしてクリオネの水槽や淡水魚や熱帯魚の水槽にも行き、様々な種類の金魚やメダカ.色鮮やかなグッピーなどクラゲとは別に、また癒される。 結構な時間を水族館で過ごした。 水族館を出た時には、辺りは暗くなってた。 「凄い良かった。癒された~♪」 「喜んでくれたなら良かった」 車の駐車場まで歩いて居ると 「もう帰る?」 「はあ~⁉︎ 何、言ってんの?これからが恋人達の時間じゃねぇ~。クリスマスはこれからだ‼︎」 「……恋人ねぇ~……ま、良いや。で、次は?」 「ったく‼︎ 雰囲気が台無しじゃん。本当は、鎌倉にでも行こうと思ってたけど……もう、大体の所は終わってるだろうし……」 「鎌倉のどこに行こうと思ったんだ?」 「ん……鎌倉大仏とか鶴岡八幡宮や銭洗弁財天とか?……芳村、好きそうかなって」 「そうか……ありがと。水族館凄く良かったし、私は満足だよ」 私が好きそうな所に行こうと考えたプランだったようだ。 海堂の私への優しさを感じた。 「本当か⁉︎ 良かった~♪………じゃあ、また海に行かねぇ?このまま歩いて行けるし、どう?」 「うん! 良いよ」 海堂は嬉しそうに笑い、水族館を出る時に離した手をまた繋いで歩き出した。

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