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第84話

取り敢えず、ソファに座って落ち着こう。 こうなったらディナーは、ヤケクソで全部食ってやる! 暴食暴飲でもして鬱憤を晴らすつもりで、ディナーの来るのをソファで待ってようと側まで行くと、3人掛けのソファに芳村が横になり寝ていた。 「あっ!……芳村」 居てくれたのか? ソファに横になり寝てる芳村の側に近寄り、しゃがみ込んだ。 芳村からはスースー……寝息が聞こえ、体を丸めて横になってた。 部屋を見回した時には……ソファの背で見えなかったのか! 芳村が帰ってなかった事に落ち込んでた気持ちが浮上し、喜びと嬉しさが込み上げてきた。 車の運転やら歩き回ったからな。 疲れて気持ち良さそうに寝てる芳村を見てそう思ったが…後10分もすれば、ディナーが運ばれてくるはずだ 可哀想だが、芳村を起こす事にした。 肩を揺すり芳村に声を掛けた。 「芳村.芳村…芳村」 昼休みの教務室とは、逆だな。 いつもは俺が起こされてる。 こうやって芳村を起こすのも、何だか嬉しかった。 自然に笑みが出た。 「ん…ん?……あっ…寝てた?」 ゆっくり目を開け俺と目が合い、自分がいつの間にか寝てたと悟ったらしい。 「ああ、浴室から戻ったら気持ち良さそうに寝てた。芳村、やっぱ髪とか潮風でベタベタだ。シャワー浴びてさっぱりして来いよ。次いでに、風呂に入ってゆっくり温まった方が良い。その方が気持ち良く食事出来るぞ」 「……海堂」 確かに、海堂が話すように髪も体もベタベタ…してる気がする。 さっぱりとした海堂を見て、尚更そう感じた。 「あと数分でディナーが運ばれて来るから、俺が対応しておく。その間に、シャワー浴びて来いよ」 ディナー? あっ! そうだった。 レストランに行かずに、部屋をとってまでルームサービスにしたのは男同士だと目立つと言う海堂の気配りだったな。 たぶん……ディナーが運ばれてセッティングするまでの時間も、私が気まずい思いをすると思ってシャワーを勧めてるのか? 海堂がホテルマンとの対応をしてくれると言った時に今日一日の気遣いや優しさでそう思った。 そこまで考えてくれてるのなら……無下にはできない 「……解った。ベタベタするし、シャワー浴びてくる」 私はソファから起き上がり浴室に歩いて行った。 ザァザァザァ…… シャワーで髪や体を洗い、さっきまで海堂が入ってた湯船に浸かる。 足を伸ばしても、まだ余裕がある。 「ふう~……あったまる~」 ベタベタしてた髪も体もさっぱりして気持ち良い~。 私とのディナーの為だけに、部屋をとってくれたのか 別に、拘らずにファミレスでも良かったのに。 これも海堂のデートプランに入ってるって事か⁉︎ 私とのクリスマスデートを楽しみにしてたって言う事か⁉︎ 嬉しいやら困るやらで複雑な気持ちだった。 けど……今日一日凄く楽しかった。 「さてと……そろそろ出るか」 浴室を出てタオルで髪や体を拭き……浴室に舞い戻り部屋に居るだろう海堂を大声で呼ぶ。 「海堂~.海堂~!……海堂!」 海堂は浴室に顔を出し、普段通りに話す。 「何?出た?ディナーの用意は出来てるぞ」 私は焦り、浴室のドアをほんの少しだけ開け、隙間から顔を出し話した。 「か.海堂! 私が着てた服…知らないか?……探してもないんだが…確か…そこに置いてたはずなんだが……」 「ああ、芳村の服ね。潮風でベタベタだったから、俺のと一緒にクリーニング出したから。明日の朝11時頃には出来上がって来るから安心しろ」 えっ! クリーニング? 何で~~⁉︎ 「………下着もか?」 「そう、全部! このバスローブ着れば良いよ」 そう言えば海堂もバスローブを身に付けてた。 シャワーを勧めたのも、この為か⁉︎って事は、泊まり⁉︎ 危険だ! 危険だ! 私は焦り、瞬時に色々妄想してしまった。 「じゃあ、早く着て来いよ。俺、腹空いた~~」 いけしゃあしゃあと言う海堂の狡賢さに……負けた。 もう着替える服がないなら……仕方ない。 浴室から出てバスローブを羽織る。 うわぁ~、ふわふわ~。 着心地の良さに、少し感動した。 軽くドライヤーを掛け、その間も色々考えたが…結局考えが纏まらず…時間稼ぎしても仕方ないと海堂が待ってる部屋に戻った。 海堂がソファに座って待ってる。 文句の1つでも言ってやろうと口を開き掛けた時に、海堂が私の気配に気付いたらしくソファから立ち上がり、蔓延の笑顔を見せた。 悪戯っ子みたいに、くしゃっと笑う。 「芳村、似合う」 その笑顔を見ただけで、何も言えなくなった。 そんな嬉しそうな顔するなよ。 立ち尽くす私の側に寄って来て 「ディナーの用意できる! 行こうぜ」 私の腰に手を宛て、リビングのテープルまでエスコートしてくれるようだ。 顔に似合わず紳士的だ……そう思うと笑みが洩れた。

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